374 / 502
モモタとママと虹の架け橋
第十九話 言葉に気持ちを込めるって、とっても大切
しおりを挟む
随分と押し問答が続いたあと、ふと千夏ちゃんは気がつきました。
「あ、もしかしたらあの鳥かしら」
以前テレビで見た駅前のヒョロッとした鳥。千夏ちゃんは、ひじを曲げてわきを締め、上げた手のひらの甲を上に向けて指先を外に伸ばし、指をバラバラに動かしながら、その鳥のまねをして、「ぎゃぎゃぎゃっ」と鳴きました。
「そうそうそう、その鳥だ~!」
万歳したオオタカに千夏ちゃんビックリ、反対側の隅っこに飛びのいて、「食べないでぇ~」と泣き叫びます。
逃げた千夏ちゃんをチュウ太が「チューチュー」追いかけまわして、それをやめさせるためにモモタが「にゃあにゃあ」追いかけまわし、よけいに大騒ぎ。
モモタは、なんとかチュウ太を捕まえて、窓まで駆けていって、外にほっぽり出しました。そして振り返り、千夏ちゃんが落ち着くのを待ちます。そして、しばらくしてようやく落ち着いた千夏ちゃんを、窓の外に招くように見つめ上げました。
恐る恐るモモタに近づく千夏ちゃんが言いました。
「その鳥がいるの?」
するとモモタが「んにゃーん」と鳴いて、少し開いた窓から外にすり抜けました。
お姉さんは、急いで灰色のちびパーカーとインディコ・デニムに着替え、外に出てモモタを探します。モモタは少し離れたところから、千夏ちゃんを見つめていました。
千夏ちゃんが駆けてついてくるのを確認しながら、モモタは小走りで青い屋根のアパートに向かいます。
ミゾゴイが閉じ込められているアパートに辿り着くと、モモタは、千夏ちゃんにすがりよりました。
千夏ちゃんは、モモタを抱き上げて言いました。
「このアパートのどこかにとまっているのかしら?」
アパートの周りを一周まわって庭木も見るけれど、ミゾゴイなんてどこにもいません。千夏ちゃんは、ぞろぞろついてくるみんなを引き連れて、もう一周まわります。ですがやっぱりどこにも見当たりません。
「お家の中だよ」モモタが千夏ちゃんの胸の中から飛び降りて、ベランダの窓に呼び寄せます。
千夏ちゃんもやってきて、少し離れたところから窓を見やりますが、カーテンが閉まっていて中が見えません。
部屋の明かりはついているので、誰かがいるはずです。中の人に気がつかれて、変に思われるといけないのでしょう。千夏ちゃんは、あまりそばには寄ってはくれません。
チュウ太が言いました。
「何で部屋に乱入しないんだよ。人間の力なら、窓ガラスなんて簡単にパリンと破れるだろう?」
すると、キキが言いました。
「人間は野生じゃないから、そんなことしないよ。それに人間は王者じゃないから、僕みたいには出来ないさ」
ちょっと自慢気です。
だいぶ悩んだ様子の千夏ちゃんが、行ったり来たりしながら、窓を見ています。
「モモにゃん、ここ人のお家だから、わたしここでは遊べないの、ごめんね」
そう言って、千夏ちゃんは帰ろうとします。
モモタたちは、必死に鳴いてひきとめますが、千夏ちゃんは、申し訳なさそうにバイバイと手を振って歩いていってしましました。
「そうだ」とモモタは窓に向かって、大きな声で叫ぶように言いました。すると、中のミゾゴイが、「助けてー! たーすーけーてー!」と、大声をだしました。
「ぐげぇー! ぐげーぐげーぐげーぐげー」という鳴き声が聞こえた千夏ちゃんは、アパートの方を振り返って、鳴き声のする窓へと駆け寄ります。
そして、「いるんだ、やっぱり・・・」と呟きました。
中は見えないけれど、ミゾゴイは間違いなく中にいるようです。
微かに中の人の声も聞こえました。鳥かごを叩くような音と共に、「黙れよ、おい、静かにしろよ」と言う男の人の声です。
「そう言えば、あの鳥保護鳥じゃなかったけ?」と独り言を言いながら、お尻のポケットからスマホを取り出した千夏ちゃんは、村役場の電話番号を調べてかけてみます。
しばらくすると、お巡りさんと役所の人と保健所の人がやって来ました。
やって来た人たちは、部屋の住人に対して何やら難しいことを言っています。何を言っているか分からなかったモモタは、キキたちに訊いてみますが、誰も分かりません。
ミゾゴイは、絶滅危惧種Ⅱ類に該当する、と言っています。いったい何のことでしょう。
役所の人が、住人の男の人に言いました。
「とても数が少ないので、希少野生動物に該当し、生育保護区が指定されているんですよ。その区域内では捕獲は禁止。違反すると5年以下の懲役、または500万以下の罰金ですよ」
アゲハちゃんが言いました。
「なんか、守ってあげないと死んじゃうくらいか弱い鳥みたいね」
住人の男の人は言い訳していますが、やってきて人たちには通じません。
役所の人は続けて言いました。
「平成二五年に、国内小動物絶滅危惧種Ⅰ、Ⅱ類の捕獲、譲渡は禁止になったんですよ」
しばらく静かに聞いていたお巡りさんが、ずいっと一歩前に歩み出て言いました。
「ちょっと、署で話を聞きましょうか」
事件はそれでおーしまい。住人の男の人は御用となりました。
「あ、もしかしたらあの鳥かしら」
以前テレビで見た駅前のヒョロッとした鳥。千夏ちゃんは、ひじを曲げてわきを締め、上げた手のひらの甲を上に向けて指先を外に伸ばし、指をバラバラに動かしながら、その鳥のまねをして、「ぎゃぎゃぎゃっ」と鳴きました。
「そうそうそう、その鳥だ~!」
万歳したオオタカに千夏ちゃんビックリ、反対側の隅っこに飛びのいて、「食べないでぇ~」と泣き叫びます。
逃げた千夏ちゃんをチュウ太が「チューチュー」追いかけまわして、それをやめさせるためにモモタが「にゃあにゃあ」追いかけまわし、よけいに大騒ぎ。
モモタは、なんとかチュウ太を捕まえて、窓まで駆けていって、外にほっぽり出しました。そして振り返り、千夏ちゃんが落ち着くのを待ちます。そして、しばらくしてようやく落ち着いた千夏ちゃんを、窓の外に招くように見つめ上げました。
恐る恐るモモタに近づく千夏ちゃんが言いました。
「その鳥がいるの?」
するとモモタが「んにゃーん」と鳴いて、少し開いた窓から外にすり抜けました。
お姉さんは、急いで灰色のちびパーカーとインディコ・デニムに着替え、外に出てモモタを探します。モモタは少し離れたところから、千夏ちゃんを見つめていました。
千夏ちゃんが駆けてついてくるのを確認しながら、モモタは小走りで青い屋根のアパートに向かいます。
ミゾゴイが閉じ込められているアパートに辿り着くと、モモタは、千夏ちゃんにすがりよりました。
千夏ちゃんは、モモタを抱き上げて言いました。
「このアパートのどこかにとまっているのかしら?」
アパートの周りを一周まわって庭木も見るけれど、ミゾゴイなんてどこにもいません。千夏ちゃんは、ぞろぞろついてくるみんなを引き連れて、もう一周まわります。ですがやっぱりどこにも見当たりません。
「お家の中だよ」モモタが千夏ちゃんの胸の中から飛び降りて、ベランダの窓に呼び寄せます。
千夏ちゃんもやってきて、少し離れたところから窓を見やりますが、カーテンが閉まっていて中が見えません。
部屋の明かりはついているので、誰かがいるはずです。中の人に気がつかれて、変に思われるといけないのでしょう。千夏ちゃんは、あまりそばには寄ってはくれません。
チュウ太が言いました。
「何で部屋に乱入しないんだよ。人間の力なら、窓ガラスなんて簡単にパリンと破れるだろう?」
すると、キキが言いました。
「人間は野生じゃないから、そんなことしないよ。それに人間は王者じゃないから、僕みたいには出来ないさ」
ちょっと自慢気です。
だいぶ悩んだ様子の千夏ちゃんが、行ったり来たりしながら、窓を見ています。
「モモにゃん、ここ人のお家だから、わたしここでは遊べないの、ごめんね」
そう言って、千夏ちゃんは帰ろうとします。
モモタたちは、必死に鳴いてひきとめますが、千夏ちゃんは、申し訳なさそうにバイバイと手を振って歩いていってしましました。
「そうだ」とモモタは窓に向かって、大きな声で叫ぶように言いました。すると、中のミゾゴイが、「助けてー! たーすーけーてー!」と、大声をだしました。
「ぐげぇー! ぐげーぐげーぐげーぐげー」という鳴き声が聞こえた千夏ちゃんは、アパートの方を振り返って、鳴き声のする窓へと駆け寄ります。
そして、「いるんだ、やっぱり・・・」と呟きました。
中は見えないけれど、ミゾゴイは間違いなく中にいるようです。
微かに中の人の声も聞こえました。鳥かごを叩くような音と共に、「黙れよ、おい、静かにしろよ」と言う男の人の声です。
「そう言えば、あの鳥保護鳥じゃなかったけ?」と独り言を言いながら、お尻のポケットからスマホを取り出した千夏ちゃんは、村役場の電話番号を調べてかけてみます。
しばらくすると、お巡りさんと役所の人と保健所の人がやって来ました。
やって来た人たちは、部屋の住人に対して何やら難しいことを言っています。何を言っているか分からなかったモモタは、キキたちに訊いてみますが、誰も分かりません。
ミゾゴイは、絶滅危惧種Ⅱ類に該当する、と言っています。いったい何のことでしょう。
役所の人が、住人の男の人に言いました。
「とても数が少ないので、希少野生動物に該当し、生育保護区が指定されているんですよ。その区域内では捕獲は禁止。違反すると5年以下の懲役、または500万以下の罰金ですよ」
アゲハちゃんが言いました。
「なんか、守ってあげないと死んじゃうくらいか弱い鳥みたいね」
住人の男の人は言い訳していますが、やってきて人たちには通じません。
役所の人は続けて言いました。
「平成二五年に、国内小動物絶滅危惧種Ⅰ、Ⅱ類の捕獲、譲渡は禁止になったんですよ」
しばらく静かに聞いていたお巡りさんが、ずいっと一歩前に歩み出て言いました。
「ちょっと、署で話を聞きましょうか」
事件はそれでおーしまい。住人の男の人は御用となりました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
子猫マムと雲の都
杉 孝子
児童書・童話
マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。
マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
猫のお菓子屋さん
水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。
毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。
お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。
だから、毎日お菓子が変わります。
今日は、どんなお菓子があるのかな?
猫さんたちの美味しい掌編集。
ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。
顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
白と黒の戦争
つきいあや
児童書・童話
白の国と黒の国は戦っていました。
白の国は白を基調とした建物、白色の城。反対に黒の国は黒を基調とした建物、黒色の城。そこでは白ねこと黒ねこが分断されて暮らしていました。
クロムとシロンが出会うことで、変化が起きていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる