猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
274 / 502
寂しがりやなウサギの話

踏み出す一歩は万歩の力

しおりを挟む
 ウサギは、はかない兎生だったなと、今までの毎日を振り返りながら思いました。
 生きていた意味あるのかな。
 毎日独りぼっちで過ごして、誰にもかまってもらえず、誰のことも構ってあげられず。
 やって来るのは、僕を食べようとするやつばかり。
 そんなの本当のお友達じゃない。僕を食べてお終いじゃないか。
 僕は間違っていたのかな?
 ずっと穴の中で1羽過ごしていればよかったのかな?
 冬は木が枯れて草も枯れて、死んだような世界になる。
 とても悲しい世界だけれど、冬眠できるから幸せだった。
 だって寝ていれば悲しくならないもん。
 穴の中は暖かいし、自分の温もりが土に伝わって、その土が生きているみたいな温もりになる。
 だから、1羽ぽっちじゃないって思えるんだもの。
 寝ていれば夢の中。たくさんのお友達と遊んでいた。
 目が覚めれば、1羽だって気がついて、とても悲しくなるけれど、目が覚めるまでは幸せでいられた。
 昔もっと小さかった頃に、出会ったウサギが言っていたっけ。
 「そんな寂しさ勘違いさ。
  だってウサギはいつも1羽で穴の中にいるものだから。
  1羽だって思えても、みんな1羽で穴の中にいる。
  それって実は1羽じゃないってことじゃない?
  だって一緒のことしているんだから」
 ウサギは、その考えに疑問を覚えて、お家を飛び出していました。
 そうして、カウボーイハウスに辿り着いたのです。
 樹海の中には、たくさんのウサギが住んでいるはずですが、ここに引っ越してきたこのウサギのお家の周りには誰も住んでいませんでした。
 なんせ、たくさんの猟犬が住んでいるし、老いたとはいえ日本狼の縄張りもあります。キツネやイタチも住んでいたからです。
 このウサギは、ウサギであるにもかかわらず、ウサギに興味はありません。
 だって、犬のように沢山で遊んでくれないからです。
 このウサギは、犬の日常に憧れていたのでした。
 ウサギは、キツネとイタチから逃げながら叫びました。
 「もういいよ。僕が間違っていたんだ。
  あのキツネの言う通り、食べられてしまえば全てが終わる。
  こんなつらい思いから逃げられるんだ」
 ウサギは、寂しくて寂しくて仕方がなくて、ワザと犬のいる家に行きました。
 どうなっても構わない、と柵の隙間から入って庭の真ん中にぴょこぴょこ、と入って行って居座りました。
 どうせ食べられてしまうのなら、ほんの一瞬だけでも群れ雰囲気を味わいたかったのです。
 突然やって来て、仰向けに寝るうさぎを見て、犬たちは呆気にとられるました。
 何がなんだか分からず、落ち着きなく行ったり来たりしています。
 そこに、カウボーイおじさんがログハウスから出てきて言いました。
 「なんだ、お前寂しいのか?」と抱っこしました。
 ご主人様のカウボーイおじさんが獲物と見ないお友達を、ビーグルたちも獲物とみなしません。
 ウサギは、初めて心から笑いました。
 とても暖かいものが、心からこみ上げてきます。
 それと同じものが、カウボーイおじさんから伝わってきました。
 ビーグルたちから、挨拶代わりに匂いを嗅がれたり、なめたりされて、全身もみくちゃ。
 とても暖かいものが、伝わってきます。
 「ビーグルたちに受け入れてもらえて、突然友達たくさん嬉しーなー」
 ウサギは大喜びで叫びました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

バンズくん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
バンズくんと呼ばれるパンが悲しそうに言いました。 「ぼくは、サンドイッチになれないんだよな〜」 まるいパンだから、三角の形になれないのです。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

白と黒の戦争

つきいあや
児童書・童話
白の国と黒の国は戦っていました。 白の国は白を基調とした建物、白色の城。反対に黒の国は黒を基調とした建物、黒色の城。そこでは白ねこと黒ねこが分断されて暮らしていました。 クロムとシロンが出会うことで、変化が起きていきます。

処理中です...