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寂しがりやなウサギの話
表現を間違えると伝わらないよ
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最近、森の中には、ウサギがごはんを探す声が、一日中響いていました。
いつものことでしたが、とてもおかしな光景です。
だって普通はみんな静かにごはんを探しますから。
このウサギのように、うるさくしながらごはんを探していたら、お肉好きっ子がやってきて、たちまちの内に食べられてしまうでしょう。
ですがこのウサギは、そうはなりませんでした。
なぜなら、いつもカウボーイハウスの猟犬たちの縄張りで、ウロウロしていたからです。
突然ウサギが叫びました。
「あいたっ、あいたたた。足をくじいてしまったよ。
これじゃあ、素早く飛び跳ねられない」
うさぎが、カウボーイハウスのほうを見やりますが、なぜかビーグルたちは出てきません。
更にウサギは言いました。
「最近太ってきちゃったよ。
脂がのっていて美味しいだろうな。用心用心」
森の木々には、小鳥のさえずる声が聞こえます。それ以外は、とても静かでした。
誰もウサギを食べに来ません。
うさぎは木の根を枕にして、ゴロリ、として言いました。
「ああ、お腹いっぱいだから、眠くなっちゃった。
今襲われたら食べられちゃうぞ。弱ったな~」
さすがにこんなお誘いは、めったにありません。
我慢できなくなったキツネやイタチが、やってきました。
それでもすぐに襲いません。いつビーグルたちが出てくるか分からないから、恐れているのです。
またウサギが言いました。
「お腹にはハーブが詰まっているから、今の僕いいお味なんだろうな。
足をくじいて、太っちゃって、お腹いっぱいで、おねむだなんて、みんな襲わずにはいられないぞ―――って、なんだよ、キツネかよ。キツネに用ないよ」
大きな独り言を叫んでいる間に襲い掛かったキツネの牙をよけたウサギは、キツネに文句を言って、一目散に逃げていきました。
モモタは、ログハウスの屋根の上からその様子を見ていて、当分遊びに来ないだろうな、と思いました。
ですがウサギは、よせばいいのにまたやって来て、同じことを繰り返します。
そして、同じようにキツネに追いかけられて、目にもとまらぬ勢いで消えていきました。
しばらくそんなことが続いたある日、ウサギの声は、夕方まで続くようになりました。
遊びから帰ってきたモモタの耳にも届いてきたので、たまたまそばにいたキツネに訊きました。
「最近、あのウサギさんと追いかけっこして遊ばないね。どうしたの?」
「ああ、あのうさぎいつも俺をだますんだよ。
足挫いたとか、お腹痛いとか、言うんだけれど、全然ピンピンしてるんだよ。
俺だってプライドがあるぜ、何度も小バカにされてまで、追いかけっこしてやんないさ」
実は、そう思って追うのをやめたのは、このキツネだけではありません。
いつもウサギにからかわれているビーグルたちも、おんなじ理由でウサギを追うのをやめていたのです。
ウサギは、あの手この手でビーグルたちの気を引こうとしますが、ダメでした。
たくさんのお友達が住んでいる森の中で、ウサギは1匹ぽっちになりました。
(困っていたんじゃないの?)
しょうがないな、もー、といった様子で、モモタは、トボトボお家に帰るウサギの背中を見送ります。
今度来たら、遊んであげよう、と思うモモタでした。
いつものことでしたが、とてもおかしな光景です。
だって普通はみんな静かにごはんを探しますから。
このウサギのように、うるさくしながらごはんを探していたら、お肉好きっ子がやってきて、たちまちの内に食べられてしまうでしょう。
ですがこのウサギは、そうはなりませんでした。
なぜなら、いつもカウボーイハウスの猟犬たちの縄張りで、ウロウロしていたからです。
突然ウサギが叫びました。
「あいたっ、あいたたた。足をくじいてしまったよ。
これじゃあ、素早く飛び跳ねられない」
うさぎが、カウボーイハウスのほうを見やりますが、なぜかビーグルたちは出てきません。
更にウサギは言いました。
「最近太ってきちゃったよ。
脂がのっていて美味しいだろうな。用心用心」
森の木々には、小鳥のさえずる声が聞こえます。それ以外は、とても静かでした。
誰もウサギを食べに来ません。
うさぎは木の根を枕にして、ゴロリ、として言いました。
「ああ、お腹いっぱいだから、眠くなっちゃった。
今襲われたら食べられちゃうぞ。弱ったな~」
さすがにこんなお誘いは、めったにありません。
我慢できなくなったキツネやイタチが、やってきました。
それでもすぐに襲いません。いつビーグルたちが出てくるか分からないから、恐れているのです。
またウサギが言いました。
「お腹にはハーブが詰まっているから、今の僕いいお味なんだろうな。
足をくじいて、太っちゃって、お腹いっぱいで、おねむだなんて、みんな襲わずにはいられないぞ―――って、なんだよ、キツネかよ。キツネに用ないよ」
大きな独り言を叫んでいる間に襲い掛かったキツネの牙をよけたウサギは、キツネに文句を言って、一目散に逃げていきました。
モモタは、ログハウスの屋根の上からその様子を見ていて、当分遊びに来ないだろうな、と思いました。
ですがウサギは、よせばいいのにまたやって来て、同じことを繰り返します。
そして、同じようにキツネに追いかけられて、目にもとまらぬ勢いで消えていきました。
しばらくそんなことが続いたある日、ウサギの声は、夕方まで続くようになりました。
遊びから帰ってきたモモタの耳にも届いてきたので、たまたまそばにいたキツネに訊きました。
「最近、あのウサギさんと追いかけっこして遊ばないね。どうしたの?」
「ああ、あのうさぎいつも俺をだますんだよ。
足挫いたとか、お腹痛いとか、言うんだけれど、全然ピンピンしてるんだよ。
俺だってプライドがあるぜ、何度も小バカにされてまで、追いかけっこしてやんないさ」
実は、そう思って追うのをやめたのは、このキツネだけではありません。
いつもウサギにからかわれているビーグルたちも、おんなじ理由でウサギを追うのをやめていたのです。
ウサギは、あの手この手でビーグルたちの気を引こうとしますが、ダメでした。
たくさんのお友達が住んでいる森の中で、ウサギは1匹ぽっちになりました。
(困っていたんじゃないの?)
しょうがないな、もー、といった様子で、モモタは、トボトボお家に帰るウサギの背中を見送ります。
今度来たら、遊んであげよう、と思うモモタでした。
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