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体験主義のカルガモの話
見える世界は目の前一つ
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モモタが、ため池の植え込みで日向ぼっこしよう、とやってくると、何やら穏やかではない空気に包まれています。
モモタがフェンス越しにため池を見やると、数羽のカラスがため池の上を飛び交っていて、水面には大慌てで逃げまどうヒナたちを守ろう、と必死にカラスに向かって「ガーガー」鳴くお母さんカルガモがいるではありませんか。
カラスたちは、交互に低く飛んできては、水を掬うようにヒナをさらおうとしています。
地面からずっと低いところにある水面での出来事でしたから、モモタにはどうすることも出来ません。
幸いなことに、5羽のカルガモ赤ちゃんたちは、1羽も食べられることなく、無事にあしの茂みに逃れることが出来ました。
しばらくして出てきたカルガモ親子は、またいつものように泳ぎ始めます。
それを見ていたモモタは、ふと気がつきました。
カルガモお母さんは、辺りを一生懸命に見て回りながら、子供たちを連れて、唯一地上へと登ることのできる坂道に上がりました。
ヨチヨチヨチヨチ、ヒナたちも陸に上がります。
カルガモお母さんは、ヒナたちを待たずに、ピョコピョコ歩いていきました。
それを見つけた、野良猫が木陰に隠れて待ち構えています。
それに気がついたカルガモお母さんは、坂の上からため池にドボン、と飛び込みます。
それに続けと、カルガモ赤ちゃんたちも飛び降りていきます。
何度かそれを繰り返したカルガモ親子は、隣の公園まで続く植え込みに到着しました。
ですが、さっきのカラスの1羽がまたやって来たので、やっぱりみんなして、ため池の中へ飛び込みます。
カラスが「カハカハ」笑いながら言いました。
「君たち、そんなんでどこ行くつもり?上手に歩けもしないのにさ。
自分たちのこと分かってないでしょ?とても歩くの下手なんだよ。
とても不恰好に歩くんだ。
お母さんを見てごらんよ、大人になってもあんなにヨタヨタ歩いちゃって。
飛んだってそんなに早く飛べるわけじゃないんだし、このため池の茂みのお家に、ずっと隠れていた方がいいんじゃない?」
カルガモたちは、カラスの問いに答えないばかりか、知らんぷり。
カラスは、しばらくしてからまた言いました。
「お母さんも大変だよね。飛べない子供に付きまとわれているなんて」
カラスは、ヒナが転んだり、進めなくなったりするたびに、「カハカハ」大声で笑います。
カラスだけではありません。
猫たちも笑っていました、虫たちも笑っています。
他の鳥たちも笑っていました。
不思議なことにカルガモ親子は、あたかも自分たちしかこのため池にいないかのようにふるまいます。
周りから聞こえるどんな声にも耳を傾けずに、地上に上がったり、びっくりして池に飛び降りたりを、一日中繰り返していました。
モモタがフェンス越しにため池を見やると、数羽のカラスがため池の上を飛び交っていて、水面には大慌てで逃げまどうヒナたちを守ろう、と必死にカラスに向かって「ガーガー」鳴くお母さんカルガモがいるではありませんか。
カラスたちは、交互に低く飛んできては、水を掬うようにヒナをさらおうとしています。
地面からずっと低いところにある水面での出来事でしたから、モモタにはどうすることも出来ません。
幸いなことに、5羽のカルガモ赤ちゃんたちは、1羽も食べられることなく、無事にあしの茂みに逃れることが出来ました。
しばらくして出てきたカルガモ親子は、またいつものように泳ぎ始めます。
それを見ていたモモタは、ふと気がつきました。
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ヨチヨチヨチヨチ、ヒナたちも陸に上がります。
カルガモお母さんは、ヒナたちを待たずに、ピョコピョコ歩いていきました。
それを見つけた、野良猫が木陰に隠れて待ち構えています。
それに気がついたカルガモお母さんは、坂の上からため池にドボン、と飛び込みます。
それに続けと、カルガモ赤ちゃんたちも飛び降りていきます。
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ですが、さっきのカラスの1羽がまたやって来たので、やっぱりみんなして、ため池の中へ飛び込みます。
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「君たち、そんなんでどこ行くつもり?上手に歩けもしないのにさ。
自分たちのこと分かってないでしょ?とても歩くの下手なんだよ。
とても不恰好に歩くんだ。
お母さんを見てごらんよ、大人になってもあんなにヨタヨタ歩いちゃって。
飛んだってそんなに早く飛べるわけじゃないんだし、このため池の茂みのお家に、ずっと隠れていた方がいいんじゃない?」
カルガモたちは、カラスの問いに答えないばかりか、知らんぷり。
カラスは、しばらくしてからまた言いました。
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カラスは、ヒナが転んだり、進めなくなったりするたびに、「カハカハ」大声で笑います。
カラスだけではありません。
猫たちも笑っていました、虫たちも笑っています。
他の鳥たちも笑っていました。
不思議なことにカルガモ親子は、あたかも自分たちしかこのため池にいないかのようにふるまいます。
周りから聞こえるどんな声にも耳を傾けずに、地上に上がったり、びっくりして池に飛び降りたりを、一日中繰り返していました。
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