猫のモモタ

緒方宗谷

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横暴なライオンの話

見下すことで満たされる

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 とても大きな口を開けて、ブルッグが吠え猛っています。
 喉ちんこの奥の奥まで見える口の中は、モモタを嚙まずに丸飲みにできそうなほどの大きさです。
 牙はモモタを串刺しに出来るほどの長さでした。
 モモタは、こんなにまじまじとお口の中を観察するのは、初めてです。
 初めの内は怖がっていたモモタでしたが、慣れてしまえば、どうということはありません。
 冷静にオリの外に座って、生きた洞窟のようなお口の中を、ドキドキしながら見ていました。
 叫びに叫んで満足した留守ブルッグは、モモタに言いました。
 「なんだ、俺様のことをじっと見つめたりなんかして。
  俺の顔になんかついているか?」
 「ブルッグさんはとても強そうだけど、象さんやサイさんもとても強そうだよ?
  みんな静かにしてるけど、とても平和そうだよ。
  ブルックさんさんも静かにしたら?」
 「アイツらは図体ばかりで臆病なのさ。
  俺まであんなになったら、やっぱりこの動物園はダメになるぜ」
 「そんなことないよ。
  怖さで静かにさせるなんてよくないよ。
  他の小さなお友達だって沢山いるけど、誰もブルッグさんみたいに吠えてないよ」
 「恐怖を植え付けないと分からないやつだっているんだ。
  像やサイが勘違いして暴れ出したらどうするんだ?
  そうならないように、一番強い俺様がビシッと言ってやらないといけないのさ」
 モモタは不思議に思いました。
 人間の話では、ここライオンはこのお家で生まれたらしいのです。
 ということは、このオリの中から出たことはないはずです。
 モモタは訊きました。 
 「でも、像さんやサイさんと闘ったことないでしょ?」
 「がはがはがは。戦わなくたって分かるさ。
  もし信じられないって言うんなら、サイなり象なり連れてこいよ。
 「連れてこられないよ。
  みんな自分のお家から出られないんだから」
 「それはあいつらが軟弱だからさ」
 「じゃあ、自分が行って話を聞いてあげたら? 
  象さんやサイさんたちは、ブルックさんとは違うやり方を知っているかもしれないよ」
 「なんで俺様がそんなことしなきゃいけないんだ。
  弱いあいつらが来るのが筋ってもんだろう」
 (自分からだって行けないのになぁ)とモモタは思いました。

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