猫のモモタ

緒方宗谷

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横暴なライオンの話

無理やりな平和は平和じゃないよ

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 モモタが一言言ってからというもの、以前にも増して、ブルッグの雄叫びは大きくなっていました。
 しかもその声は、常にモモタへと向けられているようです。
 モモタがどこにいても、いる方向へと声が突き抜けてきました。
 モモタは我慢できずに、もう一度ブルッグのところに行って抗議します。
 すると、ブルッグはシレッとして言いました。
 「なら黙っていろよ。弱いやつは黙っていればいいんだ
  それが嫌なら、聞こえないところまで離れていろよ。」
 モモタは反論します。
 「強さはいじめのためにあるんじゃないよ。
  いじめからみんなを守るためにあるんだよ」
 すると、思いがけない言葉が帰ってきました。
 「守っているさ。
  俺がこの動物園中に響くように咆哮しているからこそ、みんなオリの中で大人しくしているんだ。
  俺が人間にごはんを運ばせているからこそ、みんな苦労せずにごはんを食べられているんだぞ。
  外を歩いている人間の貧弱なさまを見てみろよ。
  あんなんで子供を守れるのかねぇ。
  親たちはキツネや狼からさえも子供を守られないだろうな。
  もし俺がいなかったら、人間たちは大パニックだぜ。
  食われたり踏みつぶされたりしちゃうからな」
 「そんなことしないよ」
 「俺だったらするぞ。
  水牛もラマもするだろうな。
  髪の毛をむしゃむしゃ食べ毟るだろうよ。
  そうならないのは、どれもこれも俺のおかげさ」
 モモタは辺りを見渡しました。
 確かにブルッグの言う通りかもしれません。
 みんなとてもおとなしくしています。
 もしかしたら、ライオンのブルッグさんが怖くて縮こまっているからかな、と思いました。
 それと同時に、こうも思いました。
 大人しいのは良いことですが、雄叫びに恐れて大人しくさせられているのは良いことじゃないな、と。
 モモタは、以前牧場に行った時のことを思い出しました。
 牧場にいた馬や羊やヤギたちは、楽しそうに飛び跳ねていました。
 そこには自分たちを食べてしまう肉食獣なんていませんでしたから、みんなのびのびとしていました。
 モモタは、山に遊びに行ったことを思い出しました。
 山には熊がいましたが、一日中吠え猛っていることはありません。
 確かに怖い存在でしたが、気持ちがおかしくはなりませんでした。
 ブルッグの言う通り、ここは、確かに友達の輪は保たれているかもしれません。
 ですが、保たれていればいいというわけでもないようです。

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