308 / 502
コンクリートZOOのお友達
始めるのはいつだって遅いなんてない
しおりを挟む
久しぶりに、モモタはオランウータンのお家に遊びに行きました。
すると、ちょうど創作活動の真っ最中。
なんと白いローブをまとわせてもらって、絵描きさんの帽子をかぶっています。
お庭には、たくさんの画用紙が立てかけてありました。
どれもこれも描き殴った色の線でした。太いの細いの、鋭いの緩やかなの、色々です。
はじめにその絵が遠くに見えた時、モモタには大声ではしゃぐ子供たちの柄に見えましたが、近くに来て見てみると、夏の草原のように見えました。
モモタは、(おじいちゃんは何を描いたんだろう)と考えると、ただの線にも見えました。
しばらくして日が傾き始めた頃、満足したように絵を眺めはじめたオランウータンのもとにモモタは行きました。
すると、オランウータンはモモタを片手で持ち上げて、モモの上に乗せて言いました。
「ああ楽しかった。今日は朝から色を塗っていたんじゃ。そう言えば、昼ごはんもおやつも食うておらん。急に腹が空いてきた」
モモタは心配になって、「体に毒だよ」と言いますが、オランウータンは笑います。
「いつもより元気なくらいじゃ。心地よいぞ。そんな疲れじゃ」
そしてモモタを撫でながら、ため息をついて続けます。
「わしゃ、もっと早く絵の具に出会っていればよかったのう。いや、出合っておったんじゃ。
若い頃、人間が絵の具をくれたことがあった。
手に付けて地面にこすり付けただけじゃったがの」
そう言い終えて遠い目をします。
モモタは訊きました。
「後悔しているの?」
「いんやぁ」
オランウータンは笑います。そして続けました。
「もっと早くこれに出会っていれば、これをやっていればと思えるということは、本当に好きだってことじゃないんじゃろか?
わしゃ死ぬまでにこれに出会えて幸せじゃったと思うよ。
なんせ本当に好きなことに出会えるお友達なんてほとんどおらんからなぁ。
ほとんどのお友達は、出合えていないことにも気がついていないんじゃないじゃろか。
出会えなかったお友達から見るとの、わしが出会うのが遅くて可愛そうじゃなぁって思えるんじゃろうけれど、出合えたその喜びだけで今まで過ごしてきた全部が吹き飛ぶくらいの喜びじゃよ。
もっと早くこれに出会えていれば――そう思えるようになってからというもの、普通に幸せではなかった不幸でもないお友達が、今は不幸のどん底にいるように見えるくらいじゃよ」
そう言い終わって、オランウータンはまたため息をつきました。
すると、ちょうど創作活動の真っ最中。
なんと白いローブをまとわせてもらって、絵描きさんの帽子をかぶっています。
お庭には、たくさんの画用紙が立てかけてありました。
どれもこれも描き殴った色の線でした。太いの細いの、鋭いの緩やかなの、色々です。
はじめにその絵が遠くに見えた時、モモタには大声ではしゃぐ子供たちの柄に見えましたが、近くに来て見てみると、夏の草原のように見えました。
モモタは、(おじいちゃんは何を描いたんだろう)と考えると、ただの線にも見えました。
しばらくして日が傾き始めた頃、満足したように絵を眺めはじめたオランウータンのもとにモモタは行きました。
すると、オランウータンはモモタを片手で持ち上げて、モモの上に乗せて言いました。
「ああ楽しかった。今日は朝から色を塗っていたんじゃ。そう言えば、昼ごはんもおやつも食うておらん。急に腹が空いてきた」
モモタは心配になって、「体に毒だよ」と言いますが、オランウータンは笑います。
「いつもより元気なくらいじゃ。心地よいぞ。そんな疲れじゃ」
そしてモモタを撫でながら、ため息をついて続けます。
「わしゃ、もっと早く絵の具に出会っていればよかったのう。いや、出合っておったんじゃ。
若い頃、人間が絵の具をくれたことがあった。
手に付けて地面にこすり付けただけじゃったがの」
そう言い終えて遠い目をします。
モモタは訊きました。
「後悔しているの?」
「いんやぁ」
オランウータンは笑います。そして続けました。
「もっと早くこれに出会っていれば、これをやっていればと思えるということは、本当に好きだってことじゃないんじゃろか?
わしゃ死ぬまでにこれに出会えて幸せじゃったと思うよ。
なんせ本当に好きなことに出会えるお友達なんてほとんどおらんからなぁ。
ほとんどのお友達は、出合えていないことにも気がついていないんじゃないじゃろか。
出会えなかったお友達から見るとの、わしが出会うのが遅くて可愛そうじゃなぁって思えるんじゃろうけれど、出合えたその喜びだけで今まで過ごしてきた全部が吹き飛ぶくらいの喜びじゃよ。
もっと早くこれに出会えていれば――そう思えるようになってからというもの、普通に幸せではなかった不幸でもないお友達が、今は不幸のどん底にいるように見えるくらいじゃよ」
そう言い終わって、オランウータンはまたため息をつきました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
子猫マムと雲の都
杉 孝子
児童書・童話
マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。
マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
猫のお菓子屋さん
水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。
毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。
お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。
だから、毎日お菓子が変わります。
今日は、どんなお菓子があるのかな?
猫さんたちの美味しい掌編集。
ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。
顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!
灰色のねこっち
ひさよし はじめ
児童書・童話
痩せっぽちでボロボロで使い古された雑巾のような毛色の猫の名前は「ねこっち」
気が弱くて弱虫で、いつも餌に困っていたねこっちはある人と出会う。
そして一匹と一人の共同生活が始まった。
そんなねこっちのノラ時代から飼い猫時代、そして天に召されるまでの驚きとハラハラと涙のお話。
最後まで懸命に生きた、一匹の猫の命の軌跡。
※実話を猫視点から書いた童話風なお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる