猫のモモタ

緒方宗谷

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コンクリートZOOのお友達

始めるのはいつだって遅いなんてない

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 久しぶりに、モモタはオランウータンのお家に遊びに行きました。
 すると、ちょうど創作活動の真っ最中。
 なんと白いローブをまとわせてもらって、絵描きさんの帽子をかぶっています。
 お庭には、たくさんの画用紙が立てかけてありました。
 どれもこれも描き殴った色の線でした。太いの細いの、鋭いの緩やかなの、色々です。
 はじめにその絵が遠くに見えた時、モモタには大声ではしゃぐ子供たちの柄に見えましたが、近くに来て見てみると、夏の草原のように見えました。
 モモタは、(おじいちゃんは何を描いたんだろう)と考えると、ただの線にも見えました。
 しばらくして日が傾き始めた頃、満足したように絵を眺めはじめたオランウータンのもとにモモタは行きました。
 すると、オランウータンはモモタを片手で持ち上げて、モモの上に乗せて言いました。
 「ああ楽しかった。今日は朝から色を塗っていたんじゃ。そう言えば、昼ごはんもおやつも食うておらん。急に腹が空いてきた」
 モモタは心配になって、「体に毒だよ」と言いますが、オランウータンは笑います。
 「いつもより元気なくらいじゃ。心地よいぞ。そんな疲れじゃ」
 そしてモモタを撫でながら、ため息をついて続けます。
 「わしゃ、もっと早く絵の具に出会っていればよかったのう。いや、出合っておったんじゃ。
  若い頃、人間が絵の具をくれたことがあった。
  手に付けて地面にこすり付けただけじゃったがの」
 そう言い終えて遠い目をします。
 モモタは訊きました。
 「後悔しているの?」
 「いんやぁ」
 オランウータンは笑います。そして続けました。
 「もっと早くこれに出会っていれば、これをやっていればと思えるということは、本当に好きだってことじゃないんじゃろか?
  わしゃ死ぬまでにこれに出会えて幸せじゃったと思うよ。
  なんせ本当に好きなことに出会えるお友達なんてほとんどおらんからなぁ。
  ほとんどのお友達は、出合えていないことにも気がついていないんじゃないじゃろか。
  出会えなかったお友達から見るとの、わしが出会うのが遅くて可愛そうじゃなぁって思えるんじゃろうけれど、出合えたその喜びだけで今まで過ごしてきた全部が吹き飛ぶくらいの喜びじゃよ。
  もっと早くこれに出会えていれば――そう思えるようになってからというもの、普通に幸せではなかった不幸でもないお友達が、今は不幸のどん底にいるように見えるくらいじゃよ」
 そう言い終わって、オランウータンはまたため息をつきました。






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