猫のモモタ

緒方宗谷

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新興タウンのお友だち

頑張って得たものは誰のもの?

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 モモタは、林の中で遊んでいました。
 何やら空が騒がしくなって、モモタは空を見上げます。
 「カアカア、カアカア」カラスが騒いでいました。
 いったいどこに隠れていたの?と訊きたいほどの多さです。
 カラスたちが叫びました。
 「ほら、そっちに行ったぞ、捕まえろ」
 カラスたちは、1羽のモズを追いかけているようです。
 「おしい」
 「とうせんぼしろ」
 「ああ、逃げられる!シュン追いかけろ」
 そう指示された“シュン”らしきカラスが、モズを追います。
 でもモモタがよく見ると、カラスではありません。その鳥は、寸でのところでモズを逃してしまいました。
 カラスたちは非難ごうごうです。
 「なんだよお前、ハヤブサのくせに、だらしないな」
 「もっと早く飛べるだろ?
  何で逃がしちゃうんだよ」
 カラスたちの文句は、鳴りやみませんでした。
 しばらくたったある日、コゲラを追いかけて遊んでいたモモタの頭の上を、何かが飛びぬけます。
 びっくりしたモモタが、茂みの中に隠れて様子を窺うと、この間見たシュン君という名のハヤブサでした。
 モモタのお友達のオオタカのキキのように、さっそうと飛んでいきます。
 とても、この間カラスに文句を言われていたようなノロマではありません。
 一瞬にしてコゲラを捕まえて、枝の上にとまってご飯にしてしまいました。
 モモタが話しかけます。
 「凄い速さだね。
  この間モズを追いかけていたときだって、シュン君の速さなら捕まえられたんじゃないの?」
 「ああそうさ、僕だったら捕まえられただろうね。
  なんせ僕は、空の王者だからね」
 「空の王者?」モモタは首を傾げます。「オオタカじゃないの?」
 「違うさ。あんなノロマが王者なもんか。王者は、大空最速のハヤブサさ。
  オオタカの方が力は強いだろうけれど、捕まえられなかったら意味ないさ」
 モモタは訊きました。
 「大空最速だったら、この間のモズ捕まえられたんじゃない?」
 「ああ、捕まえられたさ。でも捕まえない」
 「どうして?」
 「だって、スピード出して捕まえたって、どうせみんなに取られるだろうしね」
 「みんなに褒めてもらえるよ?」
 「そりゃ褒めるだろうさ。みんなはどんなに頑張ってもノロマなんだから」
 それなら捕まえてあげればいいのにな、とモモタは思いました。
 シュン君が察して言いました。
 「どうせ食べられないごはんのために、早く飛んだって無意味だよ。
  僕はちゃんとみんなに協力したよ。みんなとおんなじ速さで飛んで。
  それ以上はもったいないからしないのさ」
 「今してたじゃない」
 「今はね。だって捕らえたごはんは、ちゃんと食べられるから」
 そして翼を広げたシュン君は続けて言いました。
 「僕の翼は、そんな安っぽい翼じゃないんだよ」
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