猫のモモタ

緒方宗谷

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自分勝手な三毛猫の話

やれれば文句ないんでしょ?

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 陽が沈んだ町。深い紺色の空気に甘い粒灯り。きら星はまだ見えないけれど、広がる安らぎ。
 灰色の断崖絶壁に囲まれたここは、土のオアシス。
 そんな中で茶トラ猫、お友達の猫たちみんなで追いかけます。
 美味しいごはんを追いかけます。風斬る音が聞こえます。
 しなやかな足。流れる模様。白。黒。ブチ。ミケ。そして茶トラ。
 3匹のごはんが超高速。迫る爪を避けて素早く直角。あわやの肉迫。結構余裕。
 白、黒、ブチの面子つぶれていきり立つ。
 白、ブチ、クラッシュ黒飛び越える。
 茶トラが目指すは左のごはん。白猫と一緒に挟み撃ち。
 真ん中ごはんは黒ブチが狙う。右のごはんは1匹じめ。
 左に逃げる右のごはん。真ん中ごはんと交差する。
 黒猫、ぶち猫、ぶれずに走る。でもミケぶれて狙うは真中ごはん。
 あとちょっとで捕まえられそうだったのに。
 ぶれる視線。捉える動線。すでに勢い止まらない。
 ミケの爪にすくわれた真ん中ごはんを見失って、黒、ブチ頭をごっつんこ。
 それをしり目にミケは止まらず、元右のごはんに爪伸ばす。
 街頭の灯り反射して、颯爽と走るミケの爪ぴかり。避けきれずにごはん転倒。迫る鼻頭。
 茶トラの声が木霊した。
 「ミケちゃん。ほらそっちに行くよ。捕まえて」
 左のごはんはごはんの中で、すばしっこさは一番ごはん。
 白の頭を飛び越えて、上手く逃げられたと思ったのも束の間。茶トラの爪に追いつかれた。
 転げながらも走る左のごはんが、ミケの前を通過する。
 見失ったごはんを探す白い塊。その上を飛ぶ茶トラ猫。
 「はい」と言って、茶トラの呼びかけに答えたミケは、そのまま元右のごはんを追いかけていく。
 茶トラはミケが繰り出すはずだと思っていたのに。猫パンチを繰り出すはずだと思っていたのに。
 せっかくのチャンスが棒に振られて肩透かし。
 でも持ち前のしなやかさ。伸ばした爪を引っ掻けて、左のごはんを肉球ですくう。
 美味しそうなぽってり感触。止まって見える超感覚。
 久々の勝利に深い感慨。美味を歓楽。漏れる感想。
 でもちょっと待って。茶トラは思う。ミケを見る。
 結局ミケは、右のごはんを捕まえていた。
 ミケを悪く言う猫、誰もいない。

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