猫のモモタ

緒方宗谷

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もっと山奥のお友だち

心のモヤモヤは、胸を破って誰かを襲う

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 モモタは、川のそばの開けた竹笹林にやってきました。
 どうしたのでしょう。みんな怯えています。
 モモタは、そばの葉っぱの裏にいたカマキリに訊いてみました。
 「しぃっ」とカマキリは言葉を遮りました。とても迷惑そうです。そして小声で言いました。
 「モズがいるんだ。
  あいつはごはんでもないのに、僕たちを捕まえては串刺しにするんだよ」
 「まさかぁ、理由もなくそんなことするお友達なんていないよ」
 すると、枯れ草の下からトカゲが言います。
 「それがいるんだよ。
  あいつ、お腹いっぱい食べたくせにいつも僕たちを捕まえようとするんだよ」
 突然、「ギィギー」とモズの鳴き声が聞こえたかと思うと、黒い影が急降下。草原の中に落ちました。
 モモタが目を向けると、落ちた何かはすぐに飛び立って、川の上に伸びた枝にとまりました。
 モズです。口には大きなバッタをくわえていました。
 してやったり、と言った風の顔でくわえたバッタをしばらく見やった後、おもむろに枝に串刺しにしました。
 それを見たモモタは、川越しに訊きました。
 「どうして食べもしないのにお友達を捕まえるの?
  みんな一生懸命生きてるんだから、そんなひどいことしたら可哀想だよ」
 「ふん、誰がお友達だって?」カワセミは吐くように言いました。「こいつらは僕の敵さ。
  だから僕は、誰彼かまわず串刺しにするんだ。
  みんな言うんだよ。
  僕のごはんの食べ方は汚いって。あんな風に食べるやつなんて中身が知れているよって」
 モモタがチラリとカマキリを見やると、縮こまったカマキリが困った顔をしながら首を横に振ります。
 モモタは言いました。
 「そんなことないよ。
  みんなそんなこと言ってないって言ってるよ」
 「ウソだ。僕は聞いたんだよ。
  ショウジョウバッタがそう言っているところを。
  他にもヒャクトリムシに、『新鮮なご飯じゃないのに食べてお腹壊さないのか』って笑われたんだ」
 モズは、いやな思い出を振り返って、繰り返し繰り返しずっと考えている様子でした。
 「みんな僕のことを残酷だって悪口言うんだ。こんちくしょう」
 モモタは教えてあげました。
 「頭からしっぽまでブルブルブル~ってやったら、やなこと全部捨てられるよ。
  憶えているけど考えないの」
 モズは、訝しげに言いました。
 「そんなことして何になるって言うのさ」
 「一日は長くならないのよ。
  やなお友達のこと考えていて何になるの?
  勿体ないでしょ?」
 「君だっていやなお友達はいるだろう? 
  キツネや犬に追いかけまわされて木の上で怯えている時だってあるんじゃないの?」
 「うん。いやな目に合うことはあるよ。
  でも考えない。もっと高く登れるようになろうって考えるの。そうしたら楽しく思えるよ」
 「でも繰り返し繰り返し頭の中に湧いてくるんだよ。
  そうしたら羽が逆立って、串刺しにしたくなるんだ」
 「僕も嫌なことを思い出して毛が逆立つことはあるよ。
  でも嫌なことは考えない。
  いつも美味しいごはんのことを考えているの」
 モモタはにっこり微笑みます。 
 う~んマッタリ幸せ気分。
 そして続けて言いました。
 「僕はいつか、引きずるくらいの大きなお魚をくわえて持って帰りたいなぁ」
 お話し中のモズのことも忘れたモモタでした。


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