猫のモモタ

緒方宗谷

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目には目を歯には歯を! ロシアンブルーの話

言わないあなたが悪いのよ

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 サバトラの弱気猫は、相変わらずどっしり猫にごはんを分けてあげていました。
 分けてあげるといっても、周りからはほとんど全部取られているように見えています。
 モモタは、屋台のお兄さんからもらったまっくろはんぺんをくわえていって、半分分けてあげました。
 モモタは、はんぺんをはむはむ食べる弱気猫に言いました。
 「いい加減、もうあげないって言ったら?」
 「言えないよそんなの、だってとても喜んでくれるんだもん。
  僕たちもうすぐお友達になれる気がするんだ」
 モモタと一緒にいたマイちゃんは、それを聞いて言いました。
 「お友達になれる?本心ではお友達ではないって思っているってことね」
 弱気猫は、否定して言います。
 「お友達だよ、お友達。でも、もっとお友達になれるってこと」
 「それはあなたの希望でしょ? 
  君がそう思ってもどっしり猫がそう思ってくれているとは限らないわ」
 「今日だって、この間日向ぼっこの場所を譲ってくれたお礼だって言って、ネズミの黒いところをくれたんだ。
  苦いけどとても体に良いんだって、僕嬉しかったなぁ」
 痛々しく笑う弱気猫が可哀想になるくらい、つっけんどんにマイちゃんが言います。
 「それ、苦くて美味しくないからくれたのよ、体にいいのはこじ付けだわ。
  それに、あげられる物でいらない物ならなんでもいいのよ。
  あげに来る口実にお礼を利用して、更にごはんをおねだりする理由にするの。
  都合よく利用されているだけね」
 「そんなことないよ、僕がガリガリだから、体に良い苦いのをくれるんだ。
  そうじゃなかったら、わざわざ持って来てくれたりなんかしないよ」
 モモタは、朝どっしり猫を見ていたのですが、それは言いません。
  彼は他の猫たちと一緒に、向こうの空き地で人間から猫ちゃんごはんをもらって、お腹いっぱい食べていました。
 それを話すと、弱気猫が傷つくと思ったからです。
 モモタの気持ちを察したマイちゃんは、そのことは話さずに遠回しに言いました。
 「初めからあなたに意地悪する気で近づいてきている猫もいるのよ。
  少なくともあのどっしり猫は、凍えてなんていないし、お腹を空かせてもいないわ」
 モモタもうなずいて言います。
 「そうだよね、あんなにどっしりしていたら、僕たちより暖かいんじゃないかな。
  それにいつもお腹を空かせているわりに、どっしりしているのも変じゃない?」
 言い終わると、マイちゃんが弱気猫に言いました。
 「いいようにされる君を見て楽しんでいるんじゃないかしら?一度怒ってみたらどう?」
 「怒るのはよくないよ、怒ったら皆に嫌われてしまうじゃない」
 マイちゃんが呆れてしまいました。
 「どうして?どうして怒ったらいけないの?嫌なことをされたら怒るのは当たり前でしょ?」
 弱気猫は、頑なにマイちゃんの意見を否定します。
 モモタは思いました。そんなに頑張ってそう言えるなら、頑張って怒ればいいのに。

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