123 / 503
世界の中心、揚羽蝶の話
広がる話は無限大
しおりを挟む
スズメバチを言い負かせたアゲハちゃんを讃える虫たちの宴は、何日も続きました。
大スズメバチを撃退できる虫なんて普通いませんから、アゲハちゃんの噂は山中に広がって、アゲハちゃんを一目見よう、と遠くからも虫たちがやってきます。
今日は、紋白蝶の一行がやって来て、黄色い声援をアゲハちゃんに向けていました。
「きゃー!アゲハちゃーん、こっち向いてー」
「手を振ってくれたわ!きゃ~」
アゲハちゃんは、もはやアイドルの域にまで到達しています。モモタは紋白蝶の蝶吹雪の中をやって来て、アゲハちゃんに言いました。
「すごい人気だね、やっぱりアゲハちゃんはすごいなぁ」
「すごいって言ったら、あの大スズメバチの女王、土の中に巣を作ったらしいわよ」
「アゲハちゃんは綺麗でとても可愛いけど、勇気もあるんだね」
「このお花とても良い香りでしょ?紋白蝶からいただいたの。
羽衣ジャスミンって言うのよ。
モモちゃんにもおすそわけ」
アゲハちゃんは、とろけるような甘い香りのする白くて可憐なお花を、モモタの赤い首輪にさしてくれました。
1匹の紋白蝶がよって来て、アゲハちゃんに訊きました。
「どうしたら、アゲハちゃんのように素敵になれますか?」
「素敵と言ったら玉虫君よね、みんなあの羽の色に憧れちゃうわ」
モモタが聞いていると、初めから最後まで話がずれています。
「これから他のお家のお庭を見学に行くから、モモちゃんも行きましょうよ」
アゲハちゃんがおでこにとまってそう言うので、モモタは行くことにしました。
山の中には点々と別荘が建っていて、それぞれのお庭はみんな個性的です。野菜畑になっていたり、お花畑になっていたり、果実園になっていたりします。
どこへ行ってもアゲハちゃんは大歓迎されました。それを見てモモタが言います。
「山全体がアゲハちゃんのファンみたい」
「山全体ってどのくらい大きいのかしら?」
「こんなに沢山の色々な蝶々が舞っていても、アゲハちゃんが一番かわいいね」
「こんなに飛んでいてぶつからないってすごいわね」
「アゲハちゃんは毎日羽のお手入れもしていて頑張り屋さんだから、誰よりもきれいなんだよね」
「モモちゃんの背中がお花でいっぱいになっちゃったわ。
お花を持ってくるのは大変よ、みんな頑張り屋さんだわ」
何を言っても違う答えが返ってきます。恥ずかしくて照れ隠ししているんだな、とモモタは思いました。
少し小高い坂の上に、黒いお家がありました。
そこには何とたくさんの揚羽蝶が住んでいました。
その中の1匹がアゲハちゃんに気が付いて、大声で叫びます。
「あら!アゲハちゃんが来たよ、みんな、アゲハちゃんが来たよ」
「みんな、ただいまー」
アゲハちゃんの生まれたお庭の様です。
宙も地も辺り一面揚羽蝶だらけ。アゲハちゃんを先頭に、いろんな種類の蝶々の大パレード。
綺麗過ぎて圧巻です。モモタは見惚れて言いました。
「アゲハちゃん、ホントに女王様になっちゃった」
「だから言ったでしょ、みんなそう言ってるって」
アゲハちゃんは、「うふふ」と笑って言いました。
大スズメバチを撃退できる虫なんて普通いませんから、アゲハちゃんの噂は山中に広がって、アゲハちゃんを一目見よう、と遠くからも虫たちがやってきます。
今日は、紋白蝶の一行がやって来て、黄色い声援をアゲハちゃんに向けていました。
「きゃー!アゲハちゃーん、こっち向いてー」
「手を振ってくれたわ!きゃ~」
アゲハちゃんは、もはやアイドルの域にまで到達しています。モモタは紋白蝶の蝶吹雪の中をやって来て、アゲハちゃんに言いました。
「すごい人気だね、やっぱりアゲハちゃんはすごいなぁ」
「すごいって言ったら、あの大スズメバチの女王、土の中に巣を作ったらしいわよ」
「アゲハちゃんは綺麗でとても可愛いけど、勇気もあるんだね」
「このお花とても良い香りでしょ?紋白蝶からいただいたの。
羽衣ジャスミンって言うのよ。
モモちゃんにもおすそわけ」
アゲハちゃんは、とろけるような甘い香りのする白くて可憐なお花を、モモタの赤い首輪にさしてくれました。
1匹の紋白蝶がよって来て、アゲハちゃんに訊きました。
「どうしたら、アゲハちゃんのように素敵になれますか?」
「素敵と言ったら玉虫君よね、みんなあの羽の色に憧れちゃうわ」
モモタが聞いていると、初めから最後まで話がずれています。
「これから他のお家のお庭を見学に行くから、モモちゃんも行きましょうよ」
アゲハちゃんがおでこにとまってそう言うので、モモタは行くことにしました。
山の中には点々と別荘が建っていて、それぞれのお庭はみんな個性的です。野菜畑になっていたり、お花畑になっていたり、果実園になっていたりします。
どこへ行ってもアゲハちゃんは大歓迎されました。それを見てモモタが言います。
「山全体がアゲハちゃんのファンみたい」
「山全体ってどのくらい大きいのかしら?」
「こんなに沢山の色々な蝶々が舞っていても、アゲハちゃんが一番かわいいね」
「こんなに飛んでいてぶつからないってすごいわね」
「アゲハちゃんは毎日羽のお手入れもしていて頑張り屋さんだから、誰よりもきれいなんだよね」
「モモちゃんの背中がお花でいっぱいになっちゃったわ。
お花を持ってくるのは大変よ、みんな頑張り屋さんだわ」
何を言っても違う答えが返ってきます。恥ずかしくて照れ隠ししているんだな、とモモタは思いました。
少し小高い坂の上に、黒いお家がありました。
そこには何とたくさんの揚羽蝶が住んでいました。
その中の1匹がアゲハちゃんに気が付いて、大声で叫びます。
「あら!アゲハちゃんが来たよ、みんな、アゲハちゃんが来たよ」
「みんな、ただいまー」
アゲハちゃんの生まれたお庭の様です。
宙も地も辺り一面揚羽蝶だらけ。アゲハちゃんを先頭に、いろんな種類の蝶々の大パレード。
綺麗過ぎて圧巻です。モモタは見惚れて言いました。
「アゲハちゃん、ホントに女王様になっちゃった」
「だから言ったでしょ、みんなそう言ってるって」
アゲハちゃんは、「うふふ」と笑って言いました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
川の者への土産
関シラズ
児童書・童話
須川の河童・京助はある日の見回り中に、川木拾いの小僧である正蔵と出会う。
正蔵は「川の者への土産」と叫びながら、須川へ何かを流す。
川を汚そうとしていると思った京助は、正蔵を始末することを決めるが……
*
群馬県の中之条町にあった旧六合村(クニムラ)をモチーフに構想した物語です。
山のうんどうかい
こぐまじゅんこ
児童書・童話
いまは、あき。
きょうは、山のうんどうかいです。
それなのに、みあげると、いまにもなきだしそうなそら。
きつねくんは、(そらをわらわせたいなぁ)とおもいました。
「ふたりで、おもしろいはなしをしようよ」
たぬきくんをさそって、ごにょごにょ耳もとではなしています。
やがて、きつねくんとたぬきくんがならんで、おもしろいはなしがはじまりました。
「たぬきくん、てぬきしてかけったら、あきまへんで」
「なにいうてますのや、きつねくん。あんたこそ、おしりを、つねって、はようはしりんさいよ」
「なんじゃそりゃ」
ずっこけてみたものの、そらをみあげると、まだそらはなきそうです。
(おもしろくなかったかなぁ。そらがよろこぶことってなにかなぁ)
ふたりは、かんがえます。
きつねくんが、いいます。
「そうだ、くまのおばちゃんにきいてみよう」
「うん、そうしよう」
きつねくんとたぬきくんは、くまのおばちゃんにあいにいきました。
おばちゃんは、ちょっとかんがえてから、いいました。
「そうだねぇ。そらには、もうしんだじいちゃんやばあちゃんが、たくさんいるから、じいちゃんやばあちゃんのすきな、おはぎをつくって、山のおてらにおそなえしたらどうだい?」
さっそく、きつねくんとたぬきくんは、山のなかまをよんできました。
うさぎさんが、あずきをたいて、りすさんが、さとうをまぜて、あんこをつくります。
さるくんが、もちごめとおこめをまぜてたいて、ちょっとつぶしてまるめていきます。
せっせ せっせ とつくります。
あまくておいしいおはぎが、どっさりできました。
そして、みんなで、おはぎを、おてらにもっていきます。
おてらにおそなえすると、みるみるうちにそらは、はれわたり、まるで、わらっているようです。
まっさおなそらのした、山のみんなは、うんどうかいをはじめました。
たまいれに、つなひき。
みんな、わいわい、がんります。
そして、さいごは、かけっこ。
せんしゅは、きつねくんとたぬきくん、さるくん、りすさんです。
よーい、ドン!
きつねくんとたぬきくんが、とびだしました。
たぬきくんは、てぬきしません。
きつねくんも、おしりをつねって、はしります。
ふたりならんで、せんとうをはしっています。
そして、なんと、ふたりいっしょに、ゴールしました。
みんな、おおよろこび。
とてもたのしい一日でした。
わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~
立花鏡河
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞】奨励賞を受賞しました!
応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます!
「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」
再会は突然だった。
わたし、愛葉一千花は、何の取り柄もない、フツーの中学二年生。
なじめないバスケ部をやめようかと悩みながら、掛けもちで園芸部の活動もしている。
そんなわたしには、とある秘密があって……。
新入生のイケメン、乙黒咲也くん。
わたし、この子を知ってる。
ていうか、因縁の相手なんですけどっ!?
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
わたしはかつて、魔法少女だったんだ。
町をねらう魔物と戦う日々――。
魔物のリーダーで、宿敵だった男の子が、今やイケメンに成長していて……。
「意外とドジですね、愛葉センパイは」
「愛葉センパイは、おれの大切な人だ」
「生まれ変わったおれを見てほしい」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
改心した彼が、わたしを溺愛して、心をまどわせてくる!
光と闇がまじりあうのはキケンです!
わたしたちの恋愛、NGだよね!?
◆◆◆第1回きずな児童書大賞エントリー作品です◆◆◆
表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。
星座の作り方
月島鏡
児童書・童話
「君、自分で星座作ったりしてみない⁉︎」
それは、星が光る夜のお伽話。
天文学者を目指す少年シエルと、星の女神ライラの物語。
ライラと出会い、願いの意味を、大切なものを知り、シエルが自分の道を歩き出すまでのお話。
自分の願いにだけは、絶対に嘘を吐かないで
ドラゴンハンター
ことは
児童書・童話
ドラゴンはこの世界のどこにでもいる。
ただ、世の中にはドラゴンが見える人と見えない人がいるのだ。
小学5年生の戸井圭吾は、ペットショップで小さなドラゴンに出会った。圭吾はドラゴンを家に連れて帰るが、家族や友達にはドラゴンが見えない。
ドラゴンは子どもに寄生し、想像力を吸い取ることで成長する。圭吾の不注意でドラゴンに寄生されてしまった妹の結衣。圭吾はドラゴンと戦い、妹を救えるのか!?
『全四章』
第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾
第二章 ドラゴンハンター02 良知美鈴
第三章 ドラゴンハンター03 後藤祐太
第四章 ドラゴンハンター04 本田敦也
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる