猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
245 / 502
聞いてくれなきゃ満足できないポメラニアンの話

肉球を見て犬を見ず

しおりを挟む
 モモタがリコちゃんのお家にお泊りするようになってから、気が付かない内にだいぶ時が過ぎました。
 毎日ごろりんこだったモモタは、ある日窓に映る自分の姿を見て気が付きました。
 「あれあれ?なんで僕お庭を駆け回ってるの?」
 モモタは犬の様にリコちゃんとじゃれ合って遊んでいたのです。
 いつの間にか猫であることを忘れていました。
 猫であることを思いだしたモモタが、久しぶりに木に登ろうとすると、リコちゃんが駆け寄ってきて言いました。
 「あの小枝は細くて折れそうだから、やめた方がいいわ」
 「そうかなぁ?大丈夫だと思うよ」
 「わたしの言うこと聞いていれば間違いないわ。
  登るのはよしましょうよ」
 その時は登るのをやめたモモタでしたが、彼女がお散歩に行っている合間に登ってみます。
 「折れないよ、大丈夫だよ」
 そう思いながら慎重に昇りますが、逆に緊張してしまって、ころりと落ちてしまいました。
ちょうど戻ってきたリコちゃんが言いました。
 「だから言ったじゃない、これからはわたしの言うことを聞くのよ」
 それからというもの、リコちゃんはあれやこれやという様になりました。
 リコちゃんが、ソワソワするモモタを見て言いました。
 「ほら、あなた今木に登ろうとしたでしょう?わたしには分かるわ
  あの木なら乗っていいわよ」
 モモタが見ると、小枝が落ちています。
 別の日、またリコちゃんが言いました。
 「あら、あそこのネズミと追いかけっこしたいって思ったでしょう?分かるんだから
  でもダメよ、噛まれたら大変だもの。
  あっちのボールで遊んでらっしゃいな」
 見ると、黄色い小さなカラーボールが落ちています。
 しばらく経った日、リコちゃんがまたまた言いました。
 「どうせ、猫ちゃんごはんが食べたいんでしょう?
  大丈夫よ、わたしには分かるわ、ご主人様に貰っておいたわ」
 初めは何もしなくていいから楽ちんだなぁ、と思っていたモモタでしたが、最近は楽ちん過ぎて疲れてしまいます。
 「もうやだよ、こんな生活、僕猫だもの、犬の言うことなんて聞いてやるもんか」 
 モモタは、ワザと言われた通りのことをしないようにしたのです。
 木に登らない、ネズミは追いかけない、猫ちゃんごはんは食べない。
 リコちゃんにお留守番しているように言われても、反対のことをするのです。
 何もかもリコちゃんの言うことと反対の事をしました。
 だからリコちゃんとご主人様とのお散歩にも、モモタはついて行くようになりました。
 するとどうでしょう。なぜか、いつもリコちゃんと一緒です。寝ても覚めても一緒です。
 モモタは、ハッと気づいて言いました。
 「あれあれ?ぼく、リコちゃんと一緒になっちゃった!」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

バンズくん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
バンズくんと呼ばれるパンが悲しそうに言いました。 「ぼくは、サンドイッチになれないんだよな〜」 まるいパンだから、三角の形になれないのです。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

ムーンスペースの傍から

主道 学
児童書・童話
 大規模な資本によって、超巨大施設『ムーン・ゆれあいスペース』は御宮下市に建立した。ぼくの住む街は月にもっとも近い場所になった。そこで月でたった一人の女性とぼくは恋をする。  これはそんなぼくと彼女の月での恋のお話。

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

処理中です...