猫のモモタ

緒方宗谷

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村の片隅にいたお友達

しないって決めたらどうなるのかなぁ?

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 モモタが山に遊びに行こうと歩いていると、道路のわきに生えていた桑の木で、ご飯を食べている芋虫達を見つけました。
 「あれ? どうしたんだろう?」
 みんな兄妹のようですが、1匹だけ桑の木に絡みついたつるの葉っぱをムシャムシャしています。
 モモタは訊きました。
 「ねえねえ、何で君だけ桑の葉を食べないの? みんな桑のを食べてるのに」
 「僕はみんなみたいに美食にふけって、自堕落な人生を送りたくないんだ」
 モモタは他のカイコを見ました。みんな一生懸命で、とても自堕落になんて見えません。
 そこで、モモタは訊いてみることにしました。
 「でも、そんな小さくて細長い色の薄いヒョロヒョロの葉っぱを食べてても大きくなれないよ」
 すると、カイコは言いました。
 「お腹いっぱいになるまで食べるなんてだらしないよ。
  慎ましい生活にこそ、本当の良い生活があるってものなんだ」
 「でも、目の前に美味しいご飯が十分あるのに食べないなんておかしくない?」
 「だからさ、あるから食べないのさ」
 モモタには良く分かりません。
 「せっかくあるのに食べないなんてもったいないよ。
  それに、こんなに沢山の桑の葉が手に入いるところに生まれた事を感謝しなきゃ。
  桑の木が生えていない所に生まれたら食べられないんだよ」
 カイコは笑いました。
 「無いから食べないのは当たり前だよ、あるのに食べないのがすごいんだ」
 モモタは首をかしげます。
 「あるんだから食べればいいのに、何で食べないのがすごいの?」
 「食べたいと思うのと実際食べるのは違う。
  食べてしまうと食べたいって気持ちが無くなるから、つまらない気持ちになるんだ。
  だから食べない方が良いんだよ」
 モモタには、とても貧しい考え方に思えました。とても貧相に見えました。
 「ぜいたくしてダラダラするのは良くないけど、食べなきゃいけない分も我慢してまでなる楽しい気持ちってあるのかなぁ?」
 「あるさ、あの兄妹を見てごらん、あんなに一生懸命食べて太ったら、蛾になった時重くて早く飛べないよ」
 「早く飛ぶ必要あるの?飛びたい速さで飛べばいいじゃない」
 「それだけじゃないよ、高くも飛べないよ」
 「蛾ってもともとそんなに高く飛ばないんじゃない?」
 「出来るのとしないのは違うよ、僕は速く飛べるけれど飛ばないし、高く飛べるけれど飛ばない蛾になるんだ」
 結局モモタには、この我ができるけどしない蛾になったのか、出来ないからしない蛾になったのか分からずじまいでした。


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