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弱さを知って強くなれたオオタカのキキ
強さは一つだけじゃない
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空は、渦巻く雨雲におおわれていて、打ち付ける雨粒は、とても重く感じます。唸るようなきしむ音を発てて、影絵のような木々が、弓なりにたなびいていました。
長い時間を経て、モモタは太い車の道に出ました。光は木々に遮られないはずなのに、闇夜のような暗闇です。
風が強すぎて、息も満足に出来ません。足を踏み出すたびに風にさらわれて転びそうになりました。
何時間もかけて、ようやく一人暮らしのお姉ちゃんのお家に辿り着いたモモタですが、ベランダのシャッターが閉まっていて、中の様子を窺う事ができません。
「にゃあにゃあ」鳴き続けて、ようやく中に入れてもらえました。
「どうしたの、猫ちゃん?」
Tシャツごしに感じるふんわりお肌に癒される気分。気が遠くなりそうなほど疲れてもいましたから、安心して夢見心地です。
ですが、こうもしていられません。バスタオルで拭いてくれるお姉ちゃんの胸の中からピョイッ、と飛び降りたモモタは、お部屋を走り回って、ご飯を探します。
サラダチキンを見つけたモモタは、それをくわえて、また山に戻っていこうとします。
お姉ちゃんは、「危ないから、今日は泊まっていきなさい」と、モモタを止めましたが、モモタはその手をすり抜けて、山へと戻っていきました。
山の真ん中あたりで台風が通り過ぎました。雨と風はだんだんと弱まっていきます。
陽がくれて月明かりもない真暗な山道を、モモタは進み続けます。
奥深い山奥につく頃には、昼間とは一転して雲一つない晴れた夜になりました。
熊が寝静まっていることを確認して、モモタは木に登りました。キキは無事です。ですが、そうとう弱っていました。
モモタは、サラダチキンの真空パックを開けて、キキにお肉を食べる様に促します。ですが、食べてくれません。
そこで、自分でお肉を千切る力のないキキのために、モモタが千切って口に運んでやります。なんとか少しずつ食べてくれました。
モモタの看病のおかげで、キキは日に日に元気を取り戻していきます。
モモタはキキに言いました。
「嵐の夜の出来事は、とても長い道のりだったけれど、一歩進むごとに道は一歩縮むんだ。
どんなに遠い道のりも、たどり着けない場所なんてない。
一歩一歩進んで行けば、いつか目的地にたどり着くんだ。
たくさん時間もかかったけれど、行けない場所なんてないんだよ。
キキだってそうだよ。空の王者だからって、一羽で急いで遠くに飛んで行こうとしなくて良いんだ。
僕の一歩のように、ツバサを一回一回羽ばたかせる練習をして、お父さんやお母さんやお友達に手伝ってもらって、ゆっくりと飛び立とうよ。
そうモモタに言われたキキは言いました。
「僕は、誰よりも高い天空を飛ぶオオタカだよ。
どんな鳥だって僕の飛ぶ高さまで飛べやしないよ。
ましてやモモタなんて飛ぶことすらできないじゃない。
だから、僕は誰かに手伝ってもらう必要なんてないんだ」
「あはは、可笑しいの」
モモタは笑いました。
「だってそうでしょう?一日中飛び回っていられるの?ご飯食べるときやお休みするとき、寝るときだって木にある巣に戻って来るでしょう?
それに、飛ぶ高さはキキが決めるんだよ。誰よりも高く飛べるって言うことは、誰とでも同じ高さで飛べるってことさ」
キキは、モモタは逃げたのだと思っていましたが、それは言いませんでした。そう思ったことが弱さだと思われたくなかったからです。
とても小さな声でそっぽを向いてモモタにお礼を言ったキキには、もう一つ思っていたことがありました。
モモタはとても強い猫だなぁ、と思っていたのです。
ですが、自分より強いと勘違いされたくなかったので、それも言いませんでした。
長い時間を経て、モモタは太い車の道に出ました。光は木々に遮られないはずなのに、闇夜のような暗闇です。
風が強すぎて、息も満足に出来ません。足を踏み出すたびに風にさらわれて転びそうになりました。
何時間もかけて、ようやく一人暮らしのお姉ちゃんのお家に辿り着いたモモタですが、ベランダのシャッターが閉まっていて、中の様子を窺う事ができません。
「にゃあにゃあ」鳴き続けて、ようやく中に入れてもらえました。
「どうしたの、猫ちゃん?」
Tシャツごしに感じるふんわりお肌に癒される気分。気が遠くなりそうなほど疲れてもいましたから、安心して夢見心地です。
ですが、こうもしていられません。バスタオルで拭いてくれるお姉ちゃんの胸の中からピョイッ、と飛び降りたモモタは、お部屋を走り回って、ご飯を探します。
サラダチキンを見つけたモモタは、それをくわえて、また山に戻っていこうとします。
お姉ちゃんは、「危ないから、今日は泊まっていきなさい」と、モモタを止めましたが、モモタはその手をすり抜けて、山へと戻っていきました。
山の真ん中あたりで台風が通り過ぎました。雨と風はだんだんと弱まっていきます。
陽がくれて月明かりもない真暗な山道を、モモタは進み続けます。
奥深い山奥につく頃には、昼間とは一転して雲一つない晴れた夜になりました。
熊が寝静まっていることを確認して、モモタは木に登りました。キキは無事です。ですが、そうとう弱っていました。
モモタは、サラダチキンの真空パックを開けて、キキにお肉を食べる様に促します。ですが、食べてくれません。
そこで、自分でお肉を千切る力のないキキのために、モモタが千切って口に運んでやります。なんとか少しずつ食べてくれました。
モモタの看病のおかげで、キキは日に日に元気を取り戻していきます。
モモタはキキに言いました。
「嵐の夜の出来事は、とても長い道のりだったけれど、一歩進むごとに道は一歩縮むんだ。
どんなに遠い道のりも、たどり着けない場所なんてない。
一歩一歩進んで行けば、いつか目的地にたどり着くんだ。
たくさん時間もかかったけれど、行けない場所なんてないんだよ。
キキだってそうだよ。空の王者だからって、一羽で急いで遠くに飛んで行こうとしなくて良いんだ。
僕の一歩のように、ツバサを一回一回羽ばたかせる練習をして、お父さんやお母さんやお友達に手伝ってもらって、ゆっくりと飛び立とうよ。
そうモモタに言われたキキは言いました。
「僕は、誰よりも高い天空を飛ぶオオタカだよ。
どんな鳥だって僕の飛ぶ高さまで飛べやしないよ。
ましてやモモタなんて飛ぶことすらできないじゃない。
だから、僕は誰かに手伝ってもらう必要なんてないんだ」
「あはは、可笑しいの」
モモタは笑いました。
「だってそうでしょう?一日中飛び回っていられるの?ご飯食べるときやお休みするとき、寝るときだって木にある巣に戻って来るでしょう?
それに、飛ぶ高さはキキが決めるんだよ。誰よりも高く飛べるって言うことは、誰とでも同じ高さで飛べるってことさ」
キキは、モモタは逃げたのだと思っていましたが、それは言いませんでした。そう思ったことが弱さだと思われたくなかったからです。
とても小さな声でそっぽを向いてモモタにお礼を言ったキキには、もう一つ思っていたことがありました。
モモタはとても強い猫だなぁ、と思っていたのです。
ですが、自分より強いと勘違いされたくなかったので、それも言いませんでした。
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