猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
121 / 503
世界の中心、揚羽蝶の話

頭の中はごった煮スープ

しおりを挟む
 アゲハちゃんが住むログハウスの軒下に、大スズメバチの若き女王がやってきて、お庭にいる虫たちに言いました。
 「ここはこれからわたしたちのお家にするわ、だからみんな出ていきなさい。
  もし出ていかないなら、みんなわたしたちのご飯にしちゃうんだから」
 誰も何も言えない中で、アゲハちゃんだけが1匹飛んで行って、プリプリ怒って言いました。
 「どういう理由で私達を追い出すっていうのよ。
  説明してみなさいよ」
 「説明するまでもないわ。
  出ていきなさいって言ったら出ていきなさいよ」
 「どこの蝶々もお花の蜜をなめて生活しているのよ。
  だから、お花は蝶々のためにあるの。
  お花のそばには蝶々がいるって相場は決まってるんだから、わたしたちは出ていく必要なんてないわ」
 大スズメバチの女王は鼻で笑います。
 「こんなすてきなお庭にあなたたちが相応しくないなんて、みんな言わないだけで思ってるわよ。
  そういうの察しなさいよ。察せられないなら出ていきなさい」
 「察するのはあなたのほうよ。
  蜜をなめないあなたたちがお花のお庭に住むなんて、可笑しすぎておへそでお茶が沸いちゃうわ。
  お花はわたしたちには必要なんだから、このお庭はわたしたちのものよ」
 「何度言っても分からないのね。
  出ていくべきと言ったら出ていくべきなのに」
 「じゃあなに?ちゃんとした出ていく理由を言ってごらんなさいよ」
 「わたしたちが住みたいから、わたしたちのために出ていくべきなのよ」
 胸を張ってそう言う大スズメバチの女王に、今度はアゲハちゃんが鼻で笑いました。
 「それわたしたちが出ていくべき理由じゃなくて、わたしたちに出て行ってほしい理由でしょ?
  それなら、おんなじ理由でわたしたちは出て行かないわ。
  わたしたちは住み続けたいから、あなた達はここに住むべきじゃないのよ。
  わたしたちがここに住み続けちゃいけない理由は何?無いんでしょう?それが理由よ」
 離れたところで、紋黄蝶たちも「そうだそうだ」とはやし立てます。
 やんややんや、といううるさい声に、キーッ、となった大スズメバチの女王が怒鳴り出します。
 「なんてわがままなことを言うのよ!こないだだって、ダメダメだなんてわけのわからないことをうちの子たちに言って、みんなを困らせたでしょう!?
  子供じゃないんだから、そういうのやめなさいよ!!」
 「わたしが訳の分からないことを言ったんじゃないわ。
  あなたたちにおバカちゃんだったから、訳が分からなかったのよ、あんぽんたん」
 「なによ!すかぽんたんめ」
 「あっかんべー」
 もはや悪口合戦です。とても話し合いの場には見えません。でもアゲハちゃんらしいペースになりました。
 モモタは思いました。 
 「ワザとは針より強し」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

傍若無人な皇太子は、その言動で周りを振り回してきた

歩芽川ゆい
絵本
 頭は良いが、性格が破綻している王子、ブルスカメンテ。  その権力も用いて自分の思い通りにならないことなどこの世にはない、と思っているが、婚約者候補の一人、フェロチータ公爵令嬢アフリットだけは面会に来いと命令しても、病弱を理由に一度も来ない。  とうとうしびれをきらしたブルスカメンテは、フェロチータ公爵家に乗り込んでいった。  架空の国のお話です。  ホラーです。  子供に対しての残酷な描写も出てきます。人も死にます。苦手な方は避けてくださいませ。

鬼の子ツンツンと桃次郎物語

矢野 零時
児童書・童話
鬼ヶ島から逃げ出した鬼の子ツンツンと桃太郎の弟、桃次郎のお話です。流行病を始めいろいろなことが起こりますが、仲良くなった二人は大活躍をしてくれます。

迷宮さんを育てよう! ~ほんわかぷにぷにダンジョン、始まります~

霜月零
児童書・童話
 ありえないぐらい方向音痴のわたしは、道に迷ってしまって……気がついたら、異世界の迷宮に転生(?)しちゃってましたっ。  意思を持った迷宮そのものに生まれ変わってしまったわたしは、迷宮妖精小人のコビットさんや、スライムさん、そしてゴーレムさんに内緒の仲間たちと一緒に迷宮でほのぼの過ごしちゃいますよー! ※他サイト様にも掲載中です

湯本の医者と悪戯河童

関シラズ
児童書・童話
 赤岩村の医者・湯本開斎は雨降る晩に、出立橋の上で河童に襲われるが…… ‪     ‪*‬  群馬県の中之条町にあった旧六合村(クニムラ)をモチーフに構想した物語です。

セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』

マイマイン
児童書・童話
 『引っ込み思案な魔法使い』の少年すぐると、『悪魔らしくない悪魔』の少女リリスの凸凹カップルが贈る、ドタバタファンタジー短編集です。 このシリーズには、終わりという終わりは存在せず、章ごとの順番も存在しません。 随時、新しい話を載せていきますので、楽しみにしていてください。

天国からのマイク

ムービーマスター
児童書・童話
ある日突然、遥か上空から1950年代風のガイコツマイクが降りてきました。 早速、世界各国の有識者達が調査研究するも、天空から現れた謎のマイクは解明されることは無く、分かったことは、マイクから伸び続けるネズミ色の電線の向こうは、地球から最も離れたブラックホール(うしかい座)からでした。 人類は天空からのマイクを探るべく探査用ロケットまで発射しましたが、以前、謎は深まるばかり。 遂には世界の科学者から宗教家たちが自称「天国からのマイク」の謎に挑む始め、それぞれの宗教の神に向けて語りかけますが、全く反応はありませんでした。 そんなある日、日本に現れたマイクに日本人小学生のタカシ君が話しかけたら、天空から世界に向けてメッセージが語られ・・・。 世界の人々はタカシ君によって、連日奇跡を見せつけられ既存の宗教を捨て去り、各地で暴動が巻き起こり、遂には・・・。 世界中を巻き込んだ壮大なスペクタルとアクション、そして嘗て無い寓話的救世主物語が怒濤(どとう)の展開を繰り広げます。

ラズとリドの大冒険

大森かおり
児童書・童話
 幼い頃から両親のいない、主人公ラズ。ラズは、ムンダという名の村で、ゆいいつの肉親である、羊飼い兼村長でもあるヨールおじいちゃんと、二人仲よく暮らしていた。   ラズはずっと前から、退屈でなにもない、ムンダ村から飛び出して、まだ見ぬ世界へと、冒険がしたいと思っていた。しかし、ラズに羊飼いとして後継者になってほしいヨールおじいちゃんから、猛反対をされることになる。  困り果てたラズは、どうしたらヨールおじいちゃんを説得できるのかと考えた。なかなか答えの見つからないラズだったが、そんな時、突然、ムンダ村の海岸に、一隻の、あやしくて、とても不思議な形をした船がやってきた。  その船を見たラズは、一気に好奇心がわき、船内に入ってみることにした。すると、なんとそこには、これまで会ったこともないような、奇想天外、変わった男の子がいて、ラズの人生は、ここから歯車がまわり始める——。

訳あり新聞部の部長が"陽"気すぎる

純鈍
児童書・童話
中学1年生の小森詩歩は夜の小学校(プール)で失踪した弟を探していた。弟の友人は彼が怪異に連れ去られたと言っているのだが、両親は信じてくれない。そのため自分で探すことにするのだが、頼れるのは変わった新聞部の部長、甲斐枝 宗だけだった。彼はいつも大きな顔の何かを憑れていて……。訳あり新聞部の残念なイケメン部長が笑えるくらい陽気すぎて怪異が散る。

処理中です...