177 / 502
何も見てこなかったハマグリの話
みんなの間にあった物
しおりを挟む
視界いっぱいの水平線。びっくりするくらい壮大な大パノラマです。でもモモタの視界の真ん中に、寂しそうな貝が1つ座っていました。
モモタがそばに行ってあげると、振り向きもせずにハマグリが大きなため息をついて言いました。
「はぁ、君には友達はいるのかい?」
「うん、いるよ。
初めてのお友だちは、人間の祐ちゃん。
他にも蝶々や犬や鳥のお友だちもいるんだよ」
「猫なのに猫以外にもいるなんて、すばらしいな」
「ハマグリさんにだっているでしょ?」
「幼い頃は僕にもいたんだ。
海底にはサザエやアサリのお友達もいたのに、いつからだろう?いつの間にかいなくなっちゃった。大人になってから一度もあっていないなぁ」
モモタには、お友達と会わなくなるなんて、とても信じられません。
「大人になるってそう言うことなの?それだったら、僕大人になりたくなんかないな」
「僕の経験からすると、大人になんかならない方が良いよ。
1匹で生きて行く事は学ばないといけないけれど、子供の時一番大切だったものは、何としてでも守らないといけないよ」
「僕は、祐ちゃんとお友達と思い出かな?」
「その大切なものをいつも心に留め置かないといけないよ。
忘れるって、とても怖いことなんだ。
気がついた時には忘れているんだから。
1日2日じゃないんだよ、何年も忘れているんだ。
気がついた時には、もう最初からなかったんじゃないかって思えるほどなんだから」
「失くなるの?手遅れなんてないよ、だって思い出したら会いに行けば良いんだから」
「生きていればね・・・」
永遠には生きられません。だからこそ、大好きなみんなと一緒に過ごして作った思い出が大切なのです。
(思い出を振り返ると、心がとても温かくなるけど、もし思い出を作らなかったら、心がとても冷えるのかな)とモモタは思いました。
ハマグリが続けます。
「みんなどうしているんだろう?もっとたくさん遊べばよかったなぁ。
もう年だし、みんな生きていないかもしれない。
長いこと生きてきたのに遊んだ思い出がほとんどないんだ」
大人っていつも何しているんだろう? とモモタは思いました。
(僕は、大人はただ体が大きいだけかと思っていたけど、違うのかもしれない。
でも、ハマグリが言う大人はたぶん大人じゃないんだろうな。
だってこんなにも寂しそうなんだもん。
奥さんや子供の思い出も、お友達の思い出も作れないなんておかしいや。
振り返って悲しい思いをしなきゃいけないなんて、大人じゃない証拠だよ)
モモタは、幸せだって思える今の積み重ねがあれば、老い猫になった時に今を振り返って、幸せだなぁ、と思えると思いました。
モモタがそばに行ってあげると、振り向きもせずにハマグリが大きなため息をついて言いました。
「はぁ、君には友達はいるのかい?」
「うん、いるよ。
初めてのお友だちは、人間の祐ちゃん。
他にも蝶々や犬や鳥のお友だちもいるんだよ」
「猫なのに猫以外にもいるなんて、すばらしいな」
「ハマグリさんにだっているでしょ?」
「幼い頃は僕にもいたんだ。
海底にはサザエやアサリのお友達もいたのに、いつからだろう?いつの間にかいなくなっちゃった。大人になってから一度もあっていないなぁ」
モモタには、お友達と会わなくなるなんて、とても信じられません。
「大人になるってそう言うことなの?それだったら、僕大人になりたくなんかないな」
「僕の経験からすると、大人になんかならない方が良いよ。
1匹で生きて行く事は学ばないといけないけれど、子供の時一番大切だったものは、何としてでも守らないといけないよ」
「僕は、祐ちゃんとお友達と思い出かな?」
「その大切なものをいつも心に留め置かないといけないよ。
忘れるって、とても怖いことなんだ。
気がついた時には忘れているんだから。
1日2日じゃないんだよ、何年も忘れているんだ。
気がついた時には、もう最初からなかったんじゃないかって思えるほどなんだから」
「失くなるの?手遅れなんてないよ、だって思い出したら会いに行けば良いんだから」
「生きていればね・・・」
永遠には生きられません。だからこそ、大好きなみんなと一緒に過ごして作った思い出が大切なのです。
(思い出を振り返ると、心がとても温かくなるけど、もし思い出を作らなかったら、心がとても冷えるのかな)とモモタは思いました。
ハマグリが続けます。
「みんなどうしているんだろう?もっとたくさん遊べばよかったなぁ。
もう年だし、みんな生きていないかもしれない。
長いこと生きてきたのに遊んだ思い出がほとんどないんだ」
大人っていつも何しているんだろう? とモモタは思いました。
(僕は、大人はただ体が大きいだけかと思っていたけど、違うのかもしれない。
でも、ハマグリが言う大人はたぶん大人じゃないんだろうな。
だってこんなにも寂しそうなんだもん。
奥さんや子供の思い出も、お友達の思い出も作れないなんておかしいや。
振り返って悲しい思いをしなきゃいけないなんて、大人じゃない証拠だよ)
モモタは、幸せだって思える今の積み重ねがあれば、老い猫になった時に今を振り返って、幸せだなぁ、と思えると思いました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
子猫マムと雲の都
杉 孝子
児童書・童話
マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。
マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ぼくの家族は…内緒だよ!!
まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。
それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。
そんなぼくの話、聞いてくれる?
☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
猫のお菓子屋さん
水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。
毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。
お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。
だから、毎日お菓子が変わります。
今日は、どんなお菓子があるのかな?
猫さんたちの美味しい掌編集。
ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。
顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
白と黒の戦争
つきいあや
児童書・童話
白の国と黒の国は戦っていました。
白の国は白を基調とした建物、白色の城。反対に黒の国は黒を基調とした建物、黒色の城。そこでは白ねこと黒ねこが分断されて暮らしていました。
クロムとシロンが出会うことで、変化が起きていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる