猫のモモタ

緒方宗谷

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いつでもどこでも平常心のタヌキの話

言葉の裏腹

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 グッピーちゃんは1匹ぽっち。とても優雅なのに寂しそう。
 久しぶりに閉め忘れた窓があったので、モモタとタヌキはグッピーちゃんのところに遊びに行きました。
 モモタとタヌキに気が付いた熱帯魚は、言いました。
 「また来てくれたのね、うれしー。
  私、タヌキさんが来てくれるの、いつも楽しみに待っているのよ」
 四角い水槽の中を泳ぎ回ってはしゃいでいます。
 タヌキは出し惜しみをせずに、何も知らない熱帯魚に、いろいろ教えてあげました。
 「私、ずっとお家の中だから、何も知らないの。
  このお部屋が世界の全てだって思っていたけれど、その外にはとても素敵な世界が広がっているのね」
 羨ましがる熱帯魚に、タヌキが言います。
 「そうですよ、世界はとても綺麗で素敵なんです。
  でも君はもっと綺麗ですよ。君は金魚や錦コイ寄りも美しいから」
 「金魚や錦コイってなーに?」
 「君と同じお魚のことですよ。
  外には川や池があって、そこに住んでいるのです」
 「見たことないわ」
 「そんなに遠くないから、見に行っておいで」
 「ムリよ。だってわたし、水のないところでは息が出来ないわ。
  だから水槽の中からでられないもの」
 「そうか、そうでしたね。
  でしたら僕の口の中に入ると良いですよ、唾があるから息出来ますよ」
 「やったぁ!楽しみ♪楽しみ♪ピクニック―♪」
 グッピーちゃんはとても喜んで水面近くまでやって来て、ピョンピョン飛び跳ねました。
 モモタはおやつを持って行こう、とキッチンのカラーボックスにあったビーフジャーキーの袋を取りに行きました。
 モモタが戻ってきたとき、ちょうど、グッピーちゃんが嬉しそうに勢いよく飛び跳ねて、タヌキのお口にぴょいっと乗って、「出発進行―♪」ルンルン気分。
 「むしゃむしゃむしゃ」
 モモタはびっくりして、ぽとりと袋を落としました。唖然呆然動けません。
 「むしゃむしゃむしゃむしゃ、ごっくん。
  あー、美味しかった。ごちそうさまでしたー」
 「なななっ、なんで食べちゃったの?」
 「ん?とても珍しくて綺麗なお魚だったから、興味があったんですよ」
 「あんなに仲良かったのに、あんなにタヌキさんを信頼していたのに、グッピーちゃんが可愛そうだよ。
  信じられない。とても恨んでるよ」
 「恨んでも、恨まなくても、もうお腹の中だから関係ありません」
 「そんなひどいこと」
 モモタは怒りましたが、タヌキはシレッ、として言いました。
 「あの子は楽しいうちに食べられたから、幸せでしたよ」
 モモタは足がガクガクして、何も言い返せません。変なタヌキは、やっぱり変なタヌキでした。


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