猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
287 / 502
山間の集落で出会ったお友達

誰よりも自分が大事

しおりを挟む
 辺りは騒然、赤いランプを光らせたパトカーがいっぱいです。
 実は、毒のあるサソリを内緒で飼っていた人がいたのですが、なんとそのサソリが、水槽の中から逃げ出してしまったというのです。
 近所の動物たちが、口々に噂しています。
 「あのお家で飼われていたサソリのメッタンが逃げたらしいよ」
 「アイツ尖っているから、目が合うだけでしっぽの針で刺してくるぞ」
 集落に住んでいたお友だちは、みんなとても怖がっています。モモタも怖がりたかったのですが、サソリを見たことありません。
 熊やスズメバチなど、とても怖いお友だちを知っていたので、ペットに出来る程度の怖さなら、なんてことないや、と思っていたのです。
 外には人気も動物気もありません。モモタだけが、サソリを見てやろう、と出歩いていました。
 モモタが角を曲がろうとした時、目の前に赤い針が迫ってきてビックリ仰天。慌てて顔を針からそらせてよけました。
 目の前には、大きなザリガニがいました。怒ったモモタが言いました。
 「尖ったしっぽを相手に向けてちゃダメ。
  誰かとぶつかって相手が怪我したらどうするの?
  僕がよけたからよかったけど、もし刺さっていたら、とっても痛いよ」
 すると、ザリガニが言いました。
 「自分は気を付けているよ。
  怪我するとしたら相手のせいさ。
  実際、君はよそ見して来ただろう?
  君から刺さりに来たんだよ」
 図星です。モモタは言い返せません。
 それでも、なんとか言葉を発します。
 「でも・・・でも、相手に尖った物を向けないのは優しさだよ」
 「相手の代わりに怪我するのが、優しさってやつなのかい?
  どちらかが怪我するなら、自分じゃない方がいいね。
  相手のせいで怪我をしたら、どう責任とってくれるの?
  怪我する前には戻れないよ。
  こうやって尻尾を外に向けておけば、僕には絶対刺さらない。
  君でいえば、刺さりにきた君が刺さるんだ。
  まあこっちに原因があっても刺さるのは君だけれどね。
  でも自分が怪我するよりは全然マシ」
 「ひどいこと言うなー」
  モモタは、最後までサソリのことをザリガニだと思って話していました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

バンズくん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
バンズくんと呼ばれるパンが悲しそうに言いました。 「ぼくは、サンドイッチになれないんだよな〜」 まるいパンだから、三角の形になれないのです。

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

おなら、おもっきり出したいよね

魚口ホワホワ
児童書・童話
 ぼくの名前は、出男(でるお)、おじいちゃんが、世界に出て行く男になるようにと、つけられたみたい。  でも、ぼくの場合は、違うもの出ちゃうのさ、それは『おなら』すぐしたくなっちゃんだ。  そんなある日、『おならの妖精ププ』に出会い、おならの意味や大切さを教えてもらったのさ。  やっぱり、おならは、おもっきり出したいよね。

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

処理中です...