猫のモモタ

緒方宗谷

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消極的な熊たちの話

喉から出た手を噛っちゃう

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 梢の隙間から差し込む光が、幻想的な輝く柱廊となっていました。
 人間は、樹海の奥の方にまでやってきません。
 ですから、硬い靴底で踏まれる事のない地面はふかふかで、木々の根っこは苔むしています。
 モモタは、川にやってきました。
 川の中の岩の下に、1匹の大きなマスが隠れていることに気が付いて、どうやって捕まえようかなぁ、と考えていました。
 河原には枯葉が積もって、とても良い香りのする腐葉土と化しています。
 その上、苔むしていましたから、とても豪華なお布団になっていました。
 モモタは、そのお布団の上に横になって、のんびりごはんのことを考えていると、熊がやってきました。
 モモタが木の上に隠れて見ていると、一頭のクマが言いました。
 「この辺りに、お魚はいないな」
 それを聞いて、モモタはおかしいな、と思いました。
 だって、そう言った熊は、大きなマスに気が付いている様子だったからです。
 別の熊が言いました。
  「カエルはっけーん。むしゃむしゃむしゃ。
  もう少し上に行ってみようよ。
  そうしたら、魚がいるかもしれないよ」
 この熊は、マスに気が付いていないようです。
 今度は、2頭の後ろをついて来た熊が、マスの隠れる岩の下を覗き込みました。
 目の前の岩の下には、大きなマスの尻尾が見えます。
 クマの大きな腕と爪なら、捕まえられそうです。
 続いてやって来たのは、2頭の親子熊でした。
 母熊は、子供たちに魚の捕り方を教えています。
 でも小魚ばかり。岩の下を探って子イワナを探しています。
 「お母さん、お母さん、ほらあそこ、大きなお魚の尻尾が見えるよ」
 母熊は、小熊に言われて岩場を見やります。
 「やめときなさい。あそこは深いし、どうせ坊やじゃ、手が届きませんよ」
 「お母さんは?お母さんなら届くでしょ?」
 「あんなところ行ったら、お母さんが濡れちゃうでしょ」
 そう言って、岩場から目を逸らしました。
 モモタは不思議に思いました。
 捕まえれば、自分たちの子供をみんな満腹にしてあげられます。
 なのに誰も捕まえません。
 しばらくして、また別の熊がやってきました。
 この熊は、見てみぬふりをせずに、言いました。
 「ややっ!あそこにマスの尻尾が見えるぞ。美味そうだな。
  でも、捕まえるのは無理そうだよな」
 そう言われた連れの熊が見やります。
 「近づいてもどうせ逃げられてしまうよ。
  岩に手を入れてみても、もっと奥に逃げちゃうよ。だからやめときな」
 その後も何頭かの熊が来ましたが、誰も何もしません。
 喉から手が出るほどでないと、本当の手も短くなってしまうのです。
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