猫のモモタ

緒方宗谷

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動物園のお友達

言われたことだけなんでもやるよ

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 この動物園は、とても広いので、訪れる子供たちのために、ロバが引く小さな馬車が園内を回っていました。
 ロバの傍らには、いつも飼育員の人が付いていて、「ゆっくり歩いて」とか、「ここで停まって」とかと言っています。
 足の出し方も言われる通り、おやつに食べるニンジンのも数も言われる通りでした。
 ロバは、毎日毎日、飼育員に言われるがままに、言われたところまで馬車を引いていくのです。
 ある時、迷子の子供を見つけた係員が、その子供を抱っこしてあげようと、ロバのそばを離れました。
 先導を失ったロバでしたが、そのままいつもの駅まで歩んでいきます。
 子供を警備のおじさんに預けた飼育員のお兄さんは、ロバが見当たらないので心配になって、辺りを探します。
 見つけた時には、幾つか向こうの駅で停まった後でした。とまっている時間も約5分。いつも通りです。
駆け寄ってきた人間は、ロバに言いました。
 「エライなー、どん太郎は。
  これなら、これからはお前だけで回れるな」
 次の日から、係員さんは付きませんでした。一頭で馬車を引くようになったのです。
 モモタは、立派になったどん太郎が引く馬車に乗って、らくちんお散歩、乗ってくる子供たちに、喉をくずぐってもらって、ゴロゴロ鳴いて甘えていました。
 どの駅にもちゃんと停車して、5分くらいでまた出発します。何の問題もありません。
 でも、ある時、わんぱく坊やが乗ってきました。
 静かに座っていないで、立ったり登ったりぶら下がったりやりたい放題。他の子供たちは大迷惑。
 どん太郎は気が付いていましたが、知らんぷりです。何事もなくカッポカッポと進んでいきます。
 窓から身を乗り出していたわんぱく坊やは、遂には転げ落ちてしまいました。
 びっくりしたモモタが、窓から顔を出すと、服がドアノブに引っ掛かって、引きずられています。
 モモタがロバを見やると、気が付いている様子でした。でも停まりません。
 引っ掛かっていたわんぱく坊やは足がつきましたので、引っ掛かったまま馬車と一緒に歩いています。
 おへそ丸出しでとても恥ずかしいのか、照れ笑いをしながら、クスクス笑う子供たちに手を振っていました。
 次の駅について停まったけれど、乗る人がいないので、どん太郎は、すぐに歩きはじめます。男の子は引きずられっぱなしです。
 一周周る頃には、引っ掛かっていた坊やは、上半身裸で馬車に乗ってました。服はドアノブに引っ掛かったままです。
 終点について、お母さんに笑われた坊やは、恥ずかしそうに服を着て、どん太郎にバイバイをして帰っていきます。
 モモタは、どん太郎の背中に乗って訊きました。
 「なんで、止まらなかったの?」
 「そんな事習っていないよ。
  僕が知っているのは、駅で停まることと、一周周ってくることだけ」
 「子供が引っ掛かっていたんだよ」
 「じゃあ、どうすれば良かったの?僕つながれていて馬車をひく事しか出来ないのに。
  それ以外はどうすれば良いの」
 どん太郎は、手取り足取り言われるがままに生きてきたので、誰かに何か言ってもらわないと、何をどうしていいか分からのでした。
 自分で考えてやれないです。
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