猫のモモタ

緒方宗谷

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世界の中心、揚羽蝶の話

選ぶと嫌いも好きになる

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 蜜集めをサボっていた黄蝶が、楽しそうに蜜を集めるアゲハちゃんを眺めていました。
 「何で、あなた達って、楽しそうにご飯を集めていられるのかしら。
  生きるための大事なお仕事なのに、遊んでいるように見えて、良くないわ」
 たっぷりと蜜デートを楽しんだ揚羽蝶の2匹と、野ネズミを捕まえてきたモモタが、バルコニーの日陰でお昼ご飯を食べようとしたときに、黄蝶が話しかけてきたので、おしゃべりしながらご飯を食べる事にしました。
 「ご飯を集めて盛り付けるのが趣味よ。
  生きるとこが趣味も兼ねているのよ」
 「うん、僕もそうだよ」とモモタも言って続けます。
  「ヒュッて動くのを見ると、つい追いかけちゃんだ」
 「良いわね、趣味が生活だなんて」
 「あら、あなたもそうすればいいでしょ?」
 「出来ないわ、それに、生活で遊ぶなんてよくないわ」
 「どうして?どうして生活を楽しむのが悪いの?
 アゲハちゃんも紋黄蝶も楽しそうに生きることをしてるよ」
 「生きることは頑張ってするものでしょう?」
 モモタの話にため息をついて答える黄蝶に、アゲハちゃんが言いました。
 「頑張って楽しめばいいじゃない。」
 「でも、趣味を生活に出来るとは限らないわ」
 「出来ないとも限らないでしょう?それでもできないって言うんなら、生活を趣味にしてしまえばいいのよ」
 逆になっただけで、同じことを言っています。
 「あの花と、その花と、この花と、むこうと、そっちと、あっちと、こっちのお花で、蜜を集めたいのはあるの?」
 「ないわ、どれも好きな味じゃないもの」
 「じゃあ、一番好きじゃなさそうのはどれ?」
 「そっちのかなぁ」
 「じゃあ、一番好きじゃなさそうでなさそうなのはどれ?」
 「あの花かなぁ」
 黄蝶が渋々選ぶと、アゲハちゃんは言いました。
 「じゃあ、一番好きじゃなさそうな花の蜜は飲めなくても、あれ1輪だけなら飲めるでしょう?」
 そう語りかけながら、黄蝶の手を引いて、お花に飛んで行きます。
 「じゃあ、このお花は他のよりおいしいそうってことよね。
  あら、美味しいじゃない、黄蝶ちゃんも飲んでみなさいよ」
 一口飲んだ黄蝶は首をかしげます。アゲハちゃんが一緒にいたアゲハ君に訊きました。
 「アゲハ君もおいしいと思うでしょ?」
 「そうだね、とても美味しいよ」
 「みんな、このお花の蜜おいしいわよ、おすそ分けし得てあげるから、いらっしゃい」
 集まってきた子供の紋黄蝶に蜜を取ってあげたアゲハちゃんは、みんなに美味しいか訊きました。
 「10輪中、ナンバーワンの美味しさよ、美味しいでしょ?」
 「うん、本当おいしいよー」
 ワイワイとピクニックをするみんなの前で、美味しくないと言えない黄蝶は、2番目3番目に好きじゃなさそうでなさそうな花の蜜も飲んでいきます。
 そのうち、みんなでワイワイしているのが楽しくて、美味しく感じるようになってきました。
 モモタは気が付いて、思いました。
 「あれあれ?いつの間にか、黄蝶の女の子の困りごとが解決してるじゃない。
  いつどうやって解決したのかなぁ」
 やっぱり蝶々は魔法が使える様です。アゲハちゃんが使っているのは、言葉のマジックでした。


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