猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
243 / 502
やってくれなきゃ怒りだすシラサギの話

慣れたら好意は好意じゃなくなる

しおりを挟む
 モモタが久しぶりにマリーちゃんのお家に旅行にやって来ると、沢山のシラサギが飛んでいるのが見えました。
 「もうこんな季節かぁ、今度、シラサギが山の向こうでどんな生活をしてるか見に行ってみようかな」
 モモタは以前会ったシラサギを思い出して、とても懐かしい気持ちになりました。
 「あれ?このお家とてもうるさいなぁ、どうしたんだろう」
 とても綺麗なデザインの格子の間からお庭を覗くと、なんと沢山のシラサギがいます。
 実は、以前にこのお家のプールで過ごしたシラサギが、お友達を連れて、またやって来たのです。本来なら山の向こうに行っているはずなのに。
 モモタはお庭に入って、あるシラサギに訊きました。
 「こんな小さなプールに、こんなたくさん集まって、大丈夫なの?」
 「まあ、なんとかなるさ。
  しかしなんて狭いプールかねぇ、しかもほら、あの窓から人間がこっちを見てるよ。
  何とも落ち着かないところだこと」
 人のお家を好き放題に使って置いて、文句を言いたい放題です。
 窓越しにお庭の光景を見ながら、人間の子供が言いました
 「お父さん、どうしよう」
 「これは・・・、どうしようもないなぁ」
 お父さんは苦笑いをするしかありません。おじいちゃんが言いました。
 「野生に生きる動物と、ペットの動物とは、だいぶ違うんだな。
  野生は食うか食われるかの世界だから、ここが安全だって思えば、どこにいるよりもここに来たがるだろうな。
  犬や猫と違って、どこまで入って良いか分からないで来過ぎてしまうんだよ。
 それを聞いたモモタは、シラサギに言いました。
 「ねえ、あの人たち、あまりいい顔してないよ。
  少し遠慮した方が良いんじゃないの?」
 「どうして、あの人たちは、私達に優しくしてくれる人なんでしょ?」
 「僕が去年、住んだ時は、男の事プールで遊んだんだ、だから、今年も遊んでくれるさ」
 そう言うシラサギたちは、持ち主の人間が困っている事などお構いなしに、好き勝手に遊んでいます。
 男の子がプールに入る隙間もありませんし、屋根もお庭もお家中、フンだらけです。結局追い出されたシラサギたちは、山の向こうへ飛んで行きました。
 「シラサギたちは、このお家の人たちと遊びたいって言っていたし、人間の男の子もお友達もシラサギと遊んで楽しんでいたのに、何で別れ別れになっちゃったんだろ?」
 気持ちは一緒だったのに、不思議なものです。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

バンズくん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
バンズくんと呼ばれるパンが悲しそうに言いました。 「ぼくは、サンドイッチになれないんだよな〜」 まるいパンだから、三角の形になれないのです。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

白と黒の戦争

つきいあや
児童書・童話
白の国と黒の国は戦っていました。 白の国は白を基調とした建物、白色の城。反対に黒の国は黒を基調とした建物、黒色の城。そこでは白ねこと黒ねこが分断されて暮らしていました。 クロムとシロンが出会うことで、変化が起きていきます。

処理中です...