猫のモモタ

緒方宗谷

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やってくれなきゃ怒りだすシラサギの話

感謝は侮るきっかけになる

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 マリーちゃんのお家に遊びに行く途中で空を見上げると、1羽の大きな鳥が飛んでいるのが見えました。
 とても疲れている様子で、フラフラと公園の木に下りてきます。
 モモタは、お休みするためにこずえにとまった鳥に話しかけてみる事にしました。
 「こんにちは、大きな鳥だね。
  僕、白鳥以外でこんなに大きな鳥を見るのは初めてだよ」
 シラサギだと名乗った鳥は、困った顔で言いました。
 「ここらへんに田んぼは無いかなぁ。
  僕は毎年、むこうの山を越えたところの田んぼで、一季節過ごすんだけど、今年は体調が悪くて、もう飛べそうにないんだ」
 「この辺りに田んぼは無いよ、だってここら辺は町だもの。
  少し行ったところに畑があるけど、家庭菜園くらいかな」
 目的地まで飛べそうにない上に、この辺りには身を隠せる林もありません。
 「この辺りで夜を過ごすのは、少し怖いなぁ、だって人間に丸見えじゃない」
 「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。
  森のみんなみたいに、君をご飯にしようなんて思わないと思うけどな」
 ここには、クマもタカもいません。しいて言えばカラスと猫ですが、さすがにシラサギほど大きな鳥をご飯にしようとは思いません。
 「せめて、大きな池があると良いんだけど」
 「大きくは無いけど、上のお家にプールがあるよ」
 どうしても教えてほしいと言うので、モモタは連れて行ってあげる事にしました。
 「あ、本当だ、だいぶ狭いけどないよりましかな。
  今年はここでエンジョイしようっと」
 人のお家を拝借するのに、勝手なものです。
 「ちゃんとお家の人にごあいさつしなきゃダメだよ」
 「分かってるよ、そのうちするから放っておいてよ」
 そうこうする家に、男の子がやっていて騒ぎ始めました。
 「お父さん、お父さん、なんか庭のプールに大きな鳥がいるよ」
 「ん?本当だ、あれはシラサギだな、早いとこ追い払わないと」
 そういって、お父さんはほうきを持って来て、プールの水をバシャバシャし始めます。
 「わっ!何なんだ、何てことするんだよ。
  僕はとっても困っているんだよ、少しくらい助けてくれても良いじゃないか」
 シラサギはそう訴えながら、何度追い出されても戻ってきます。
 「ねえ、お父さん、可愛そうだからおいてあげようよ」
 それを聞いたシラサギが訴えます。
 「ぼっちゃんの言う通りだよ、僕のこと、おいておくれよ」
 お父さんは、しゃがんで子供に言いました。
 「野生の動物と人間は共生できないんだよ。
  ここに出てきても安全なんだって思って、ここに住んでしまうと、お互い大変な思いをするんだよ。
  車に魅かれたり、ペットに襲われたりするかもしれない。
  ヒナを育てていれば、逆に人間を突くかもしれないし、病気を持っているかもしれないんだ」
 男の子は、めげずに言います。
 「でもそれは、あの子のせいじゃないでしょう?
  ここだって、昔は山だったって、お父さん言ったじゃないか。
  あの鳥が人間の住処にやって来たんじゃなくて、人間があの鳥の住処にやって来たんじゃないの?」
 どう諭して良いものか考え込むお父さんを見かねて、おじいちゃんが言いました。
 「まあ、どうなるか見てみれば良いじゃないか。
  共生が無理なら、その時、山の向こうの田舎に行ってもらえば良いさ」
 モモタは、とても優しい男の子だなぁ、と思いました。
 この年、このお家に巣を作ったシラサギは、綺麗なお嫁さんをもらって、可愛い赤ちゃんを産みました。
 「ふーん、人間って、案外怖くないものなんだね。
  今度みんなにも教えてあげようっと」
 そう言って、飛んで行きました。


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