猫のモモタ

緒方宗谷

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一心不乱のハツカネズミの話

落としたものを拾ってくれるのは、いつも思ってくれるから

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 モモタは、久しぶりにゲージを見に行きました。窓ごしにのぞくと、ハツカパパは、やっぱりぐるぐるしていました。
 「あれ?ジュースがないね」
 モモタがそう言うと、ハツカママは笑って言いました。
 「そうなのよ、この暑さでしょう、たれてきたのも全部蒸発しちゃったの」
 「何ももらえないのにぐるぐるしてるなんて、もう遊んでるだけだ。
  それじゃ水しかないの?おやつにならないね」
 モモタは、家族がさぞ困っているだろうと思って、巣にいる子供たちを見ました。ですが、意外にも子供たちは元気で、ハツカママも家庭を心配していない様子です。
 「らりぱっぱー、らりぱっぱー」
 ハツカパパがは叫び始めました。
 「?なんか変だよ?」
 「そうなの、暑さにやられたの。
  昨日から、回りっぱなしなのよ」
 「昨日から?休まずに?午前様も過ぎてるのに?」
 モモタは、ハツカパパにジュースを飲ましてやりたいと思いましたが、このお家は留守のようなので、どうしようもありません。
 「ご主人様が帰って来るまで、辛抱しなきゃだね」
 「それが、当分帰ってこないの。
  夏休みで家族旅行に行ってしまったから」
 モモタはびっくりして言いました。
 「それじゃあ、当分ご飯もらえないじゃない」
 「ママ、ママ、僕たちお腹が空いたよ」
 子供たちが可愛そうでならないモモタは、ピーナッツの袋が無いか、部屋を見渡しました。ですが、ここは子供部屋なので、食べ物はありません。
 「遊び疲れたのね、それじゃあ、おやつをあげますよ」
 ハツカママはそう言って、自分の寝床の木屑の下からヒマワリの種を取り出して、子供たちに与えました。
 「わっ、たくさんあるね、そんなにため込んでいたの?」
 しっ、と小声で話すようにうながすハツカママは、自慢げに教えてくれました。
 「パパがいつもぐるぐるしているから、ご主人様が、それじゃあとても疲れてお腹が空くだろうって、ご飯をいっぱいくれるの。
  それをため込んでいるのよ」
 へそくりというやつです。
 ハツカママのお布団の中には、他にも人参味やほうれん草味のチューちゃんご飯がいっぱいです。
 何日かご主人様が返ってこなくても安心です。家族円満の秘訣を見たモモタでした。







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