猫のモモタ

緒方宗谷

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一緒に暮らすの大得意イタチの話

不満が少ないので満足しなよ

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 山歩きをしていた人間が、休憩がてらチョコを食べようとした時、運悪く15個全部落としてしまいました。
 人間が行ったのを見計らって、イタチのユキちゃんが駆け寄ると同時に、黒アリとキツネもやってきました。
 キツネがユキちゃんに言いました。
 「先に見つけたのは、僕だよ」
 「いいえ、わたしよ」
 キツネとユキちゃんがケンカを始めます。小さな黒アリは、見守っていました。
 取っ組み合いのケンカになりましたが、体が小さい女の子のユキちゃんは負けてしまいました。
 勝ち誇るキツネが言いました。
 「僕が勝ったんだから、まず僕が10個もらうからね」
 それを見ていたモモタが言います。
 「お兄ちゃんなんだから、我慢しなきゃ。
  平等に5個ずつにしたらどう?」
 すると、黒アリが文句を言い始めました。
 「僕1個で十分だよ、5個もらっても、食べ切れないよ。
  それに、1個でも巣に入れるのは大変なんだ」
 モモタはびっくりしました。ほしかった数よりもだいぶ多くもらえらのだから、喜んでくれると思っていたからです。
 喜んだ様子のキツネが言います。
 「じゃあ、君は1個持って行きな。  
  後は、僕が10個で、イタチが4個だ」
 するとユキちゃんが怒ります。
 「それじゃあ足りないわ。
  あなたばかり多くて、ズルいわよ」
 ユキちゃんは、キツネから渡された4個を受け取るや否や、キツネから4つ奪いました。
 「それじゃあ僕が少なすぎるよ!君は満足かもしれないけれど、僕は不満爆発さ」
 2匹は牙を見せていがみ合っています。
 「ここでようやく、半々なんじゃないの?」
 モモタの言葉に、2匹が否定します。
 「それじゃあ、わたしの分が足りないわ」
 「僕だって足りないよ」
 そう言った2匹は、あれっ?と思って顔を見合わせました。
 「半々だと、わたし、足りないのよ。
  あなたばっかりズルいはずよ」
 「何言っているんだ。僕だって足りないよ」
 2匹は、試しに半々にしてみました。
 「7個ずつだね」
 「ホントだわ、7個ずつね。
  わたしのもあなたのも足りないわね」
 ユキちゃんは気が付きました。
 「キツネさんが1個満足に近づくと、わたしは不満に1個近づく。
  わたしが1個満足に近づくと、キツネさんが1個不満に近づくわね。
  キツネさんもわたしもこれ以上満足しようとすると、どちらかの不満が増えちゃうわ。
  黒アリさんは満足してるし、今が一番満足に近いんじゃないの?」
 確かにそうだとモモタとキツネはうなずきます。
 不思議な分け方だけれども、みんなユキちゃんの話に納得しました。

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