猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
52 / 502
全家福を夢見るオオカマキリの話

自分の幸せと孫の幸せどっちが大事?

しおりを挟む
 空き地の葉っぱの上で、大きなカマキリのカップルが、イチャイチャしていました。
 「カマ男さん、愛しているわ」
 「僕もだよ、カマ実ちゃん」
 とても仲が良さそうですが、すぐにカマ男さんがどこかに行こうとします。
 「どこに行くの?私、あなたをムシャムシャしたいほど愛しているのよ」
 「僕も同じだよ、僕もムシャムシャされたいほど、君を愛しているよ」
 「じゃあ行かないで、私にムシャムシャされてちょうだい」
 カマ実ちゃんはお願いしますが、カマ男さんは行ってしまいました。
 あまりにしょげているので、カマ実ちゃんが可愛そうになったモモタは、慰めてあげました。
 「カマ実ちゃんは綺麗だから、カマ男さんもすぐに戻って来るよ」
 「ありがとう、でも、ダメなの。
  あの人、違うカマキリちゃんのところに行ったんだわ、きっと」  
 モモタが塀の上から、空き地の中央を見やると、カマ男君は、違うカマキリちゃんとイチャイチャしています。
 「もっと良いカマキリさんに出会えるよ」
 カマ男くんを見たことを黙ったまま、モモタはそう言いました。
 「はぁ、私って、いつもあんなカマキリを好きになっちゃうの。
  ムシャムシャしたいのに、ムシャムシャさせてくれないカマキリに魅かれちゃうのよね。
  ムシャムシャさせてくれる一途なカマキリの方が良いのは分かるけれど、でも違うのよね」
 モモタは、訊きました。
 「そこまで分かっているなら、あえてムシャムシャカマキリを選んだら?」
 「私、赤ちゃんにはモテモテカマキリになってほしいの。
  たくさん孫の顔が見たいし、ひ孫もみたいわ。
  だから、カマ男さんみたいな、モテモテカマキリにお父さんになってほしいのよ」
 モモタには分かりません。
 「好きな子には、好きでいてもらいたいな」
 「そうね、私もそう思うわ。
  でも、私にムシャムシャされてしまうオスの子は、私みたいなのにムシャムシャされてしまうわ。
  そうしたら、たくさんイチャイチャ出来ないでしょう?私の孫の数が減っちゃうもの」
 自分の幸せよりも、子供や孫の幸せを何よりの幸せ、と思うカマ実ちゃんでした。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

バンズくん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
バンズくんと呼ばれるパンが悲しそうに言いました。 「ぼくは、サンドイッチになれないんだよな〜」 まるいパンだから、三角の形になれないのです。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

白と黒の戦争

つきいあや
児童書・童話
白の国と黒の国は戦っていました。 白の国は白を基調とした建物、白色の城。反対に黒の国は黒を基調とした建物、黒色の城。そこでは白ねこと黒ねこが分断されて暮らしていました。 クロムとシロンが出会うことで、変化が起きていきます。

処理中です...