猫のモモタ

緒方宗谷

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しない努力家、根切り虫の話

努力も無駄な時がある

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 村にはあまり家がありません。モモタは田んぼのあぜ道を抜けて、大きな畑のあるお家に行きました。
 「何列も葉っぱが並んだ畑の中でおトイレをしていると、土の中から何やら寝ぼけた声が聞こえてきます。
 「誰でちゅか、おしっこをしてるのは?僕たちはオネムの時間なんでちゅよ、起こさないでほしいでちゅよ」
 「???どこにいるの?」
 モモタがキョロキョロしていると、葉っぱの根元から、濃い灰色の芋虫が出てきました。
 「昼間っから寝てるの?芋虫さんなら、一生懸命ハムハムしなきゃ、大きくなれないよ」
 芋虫は、ゴロゴロしながら言いました。
 「一生懸命ってどんなふうに?」
 モモタは、辺りを見渡しました。
 「たとえば、蝶々の青虫ちゃんみたいにだよ。
  他にも、向こうの柿の木にいる毛虫ちゃんみたいにさ」
 視線の先を追った芋虫は、笑って言います。
 「あれが努力?あはははは、努力なんてしてないでちゅよ。
  あれは、何もしてない証拠でちゅ」
 「そんなことないよ、ああやって一生懸命葉っぱをハムハムしてるから、蛾や蝶々になれるんだよ。
  君も頑張らないと、お空を飛べないよ」
 芋虫はニヤニヤしながら言います。
 「僕だって努力してまちゅよ。 
  でもそれは、ムダをしない努力でちゅ」
 努力しない努力なんて、意味が分かりません。
 「それって、何もしないってことでしょう?努力してないのと同じじゃない」
 芋虫は答えてくれませんでした。とても眠かったので、土のお布団に包まってしまったのです。
 モモタは考えました。
 「今寝てるってことは、この子は夜のお友達かな?」
 日が暮れてからこのお家にやってきたモモタは、畑の中で、お友達を探しました。
 「あ、いたいた、こんばんは、じゃなかった、君にとってはおはようかな?」
 「また来たでちゅか?」
 モモタは、何もしないのになぜお空が飛べるのか興味があったので、教えてもらおうとしたのです。
 「みんな、いちいち木に登ったり枝に登ったり、食べても食べても疲れちゃって、すぐに大きくなれないでちゅよ。
  僕は、みんなみたく、疲れたくないでちゅよ」
 「でも、ご飯を採るってそう言うことでしょう?そうやって努力するから、採れるように成長するんだよ」
 そうモモタが言っている間に、畑にあった枝豆の苗が倒れました。
 「わっ!すごいね、自分の何倍もある葉っぱを倒しちゃったよ」
 「こうすれば、わざわざ登らなくても済むんでちゅよ。
  全然疲れないから、すぐにお腹いっぱいでちゅよ」
 しなくて良いことって以外にあるのかも、と思うモモタでした。


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