猫のモモタ

緒方宗谷

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小さな町のお友達

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 結構大きな川の真ん中に、ボラが50匹ほどまとまって泳いでいました。低い橋の上から美味しそうだなぁ、と思ってみていたモモタは、ボラたちが塊になって、同じように泳いでいることに気が付きました。
 「ねえ、ボラさんたち、ボラさんたちは、何で同じように泳ぐの?あっちに行ったらみんなで行って、こっちに来たらみんなで来る。
  とても規則正しくて、綺麗なバンドみたい、何か音楽が聞こえてきそう」
 1匹ボラは笑って言いました。
 「別に、マーチの練習をしているわけではないよ。
  こうしていた方が安全なのさ」
 「安全?川の中に危険があるの?僕たちは中に入れないし、とても安全でしょう?」
 ボラは胸ヒレを使って、辺りを見渡すように言いました。
 「見てごらん、あそこには何人もの釣り人がいるだろう?あの竿の先についた糸には針が付いていて、僕たちを引っ掛けて釣り上げるんだ。
  空を見なよ、大きな鳥が飛んでいるだろう?彼らは、浅いところに来た僕らをパクッとするんだ。
  ここは橋の下だから安心だけどね」
モモタはおかしいと思って、指摘しました。
 「こんなに集まったらとても目立つじゃない。
  捕まえてくださいって言っているようなものだよ。
  だって、遠くからでも黒い影が見えるもの。
  だから、僕は見に来たんだよ」
 分かっていないなぁ、と言った表情で、ボラが言います。
 「もし君が僕たちを捕まえるとしたら、何匹捕まえられるかな?」
 「何匹って、僕1匹だから、1匹しか捕まえられないよ」
 「じゃあ、あの釣り人は?」
 「竿を1本しか持っていないから、1匹かな?」
 「しゃあ、お空の鳥は?」
 「5羽いるから、5匹かな」
 「1羽あたりは1匹だよね。
  ということは、僕が食べられちゃうとしたら、50回に1回だけなんだよ。
  1匹で泳いでいる時に狙われて捕まったら、必ず僕が食べられちゃうのに」
 モモタが確かにそうだ、と思った矢先、遠くにいた釣り人が1匹釣り上げました。
 「たっ!助けて~!!」
 モモタの耳まで、つられたボラの声が聞こえます。
 「でも、釣られた子にとっては、その1回が全てだね」
 ボラは、何も言葉を返してはくれませんでした。

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