猫のモモタ

緒方宗谷

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動物園のお友達

力の使い方

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 大きなオリの中に、たくさんのニワトリがいました。
 モモタは、オリの前にちょこんと座って、ニワトリを眺めながら思いました。
 「珍しい動物が住んでいるのが動物園だって思っていたけど、そうでもないみたい。
  ニワトリなんて、田舎に行ったらどこにでもいたよ」
 高い棒の上に、長い黒い尾の綺麗な茶色の長鳴鶏オンドリが、シャンと立っています。
 下には、コッコ、コッコ、とたくさんのメンドリがエサをついばんでいました。
 モモタの独り言を聞いたオンドリは、これ見よがしに、大きく鳴きました。
 「コッケッコッコ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ォー・・・・・・・ォ・・・………」
 モモタはびっくりしました。
 「とても息が長いんだね、こんなに長くて大きく鳴ける鳥さんを見たことないよ」
 驚くモモタを見て、オンドリは、満足そうに言いました。
 「そうだろう、そうだろう。
  拙者は、とても特別なニワトリなのじゃ。
  そんじょそこらのニワトリと一緒にされては困るぞよ」
 特技があるお友達を見ると、いつもモモタは楽しくなります。もう一度鳴いてほしい、と頼みました。
 「ダメじゃ」
 「どうして?良いじゃないの」
 「ワシの鳴き声は、特別じゃから、特別にしか鳴かんのじゃ」
 分からずにいるモモタに、オンドリは続けて、説明してくれました。
 「ここは土がないからの、大好きな虫がいないのじゃ。
  お膳は全部、人間に準備させておるのじゃが、あの者たちは、わしの鳴き声にほれ込んで、仕えてくれておる。
  であるから、人間の行いが大儀であったときに、褒美として与えておるのじゃ」
 特別に聴かせてくれたことがとても嬉しかったモモタは、オリの前の花壇の土を掘って、ミミズを捕ってあげました。
 たくさんのメンドリが、我先にと食べに来ます。
 「あらら、オンドリさんに捕ってあげたのに」
 モモタは残念に思いましたが、オンドリが褒めてから言いました。
 「ワシは良いのじゃ、おなごたちへのプレゼントにする」
 「立派なニワトリだなぁ」
 「うむ、わしは、この鳴き声を使って、みんなを守っておるのじゃ。
  ここではあまり虫が捕れぬものだから、皆とても苦労しておる。
  だから、お膳を持ってこさせる力のあるわしが、皆を養ってやらねばならんのじゃ」
 「ふーん、ルリさんたちみたいだね」
 「あの鳥は、1羽1羽が弱いから、皆で助け合っておる。
  わしらは、わしだけがとても強いので、皆を養っておるのじゃ」
 「女の子ばかり?」
 「男子は喧嘩っ早いからな、ワシだけで十分じゃ。
  そうでないと、戦国乱世の到来じゃ。
  そもそも、男子は自活せねばならん、誰かに養ってもらおうなんぞ、おこがましい」
 色々な夫婦の形があるようです。




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