猫のモモタ

緒方宗谷

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山の上のお友達

騙すより騙される方が良いと言うけれど、何故二択なの?

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 山の中に小さなワンちゃんがいました。
 自分と同じ大きさだったので、お友達になれないかな、とモモタは見ていました。
 「人間さーん、僕が案内してあげるよ」
 白い黒ぶちのワンちゃんは、登山に来た人間の先頭を歩いていきます。
 人間が道を曲がると、急いでそっちの道に行って、また先頭をあるきます。
 「ありがとうワンちゃん、案内してくれて嬉しいわ」
 大抵の人達は、お礼を言ってくれますが、たまに意地悪する人もいます。
 「わっ、危ないよ!逃げて!」
 とモモタが叫びます。
 カチッという音がして、モモタは目を覆いました。
 人間が犬に向かって、石を投げたのです。幸い当たりませんでしたが、危ない所でした。
 誰もいなくなった後に、モモタはワンちゃんに話しかけました。
 「大丈夫?」
 「大丈夫だよ、君も一緒にやるかい?」
 「僕はいいよ、人間と歩く趣味はないもの。
  それよりも、なんで人間といつも歩くの?
  犬が人間とお散歩をするのが趣味なのは分かるけど、石を投げる人にまで駆け寄って行かなくても良いじゃない」
 「そうなんだけど、呼ばれるとつい遊びに行っちゃうんだ」
 「石が当たると痛いでしょう?少し改めないと不幸だよ」
 ワンちゃんは、さびしげに言いました。
 「それでも僕は、人間を信じるよ。
  この山には、毒蛇もいるし熊もいるから、道に迷ったりしたら大変だもん」
 「おやつをくれる素振りをして、叩くなんてひどいじゃない?遠回りの道を教えてあげたら?」
 「僕は、誰かを騙す犬にはなりたくないんだ。
  騙す犬になるくらいなら、騙される犬になりたいよ」
 「そんな、騙すのは良くないけど、騙されるのも良くないよ」
 モモタは続けます。
 「人間を信じるのは良い事だよ、僕だって人間が大好きだもの。
  でも、信じられない人を簡単に信じるのは良くないよ。
  さっきのワンちゃんは、自分から騙されに行っているように見えたもの。
  あれじゃあ、意地悪を助けているようなものだよ」
 モモタは思いました。
 「とても寂しいと、嘘の優しさでも求めてしまうのかな?
  騙されると分かっていても、騙される直前まで、この子は楽しそうだったもの」
 

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