猫のモモタ

緒方宗谷

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命を懸けるネズミの話

命がけで頑張るのはすごいけれど、のんびりできるのもすごいんだよ

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 田舎のネズミと追いかけっこして遊んでいたモモタに、ネズミは言いました。
 「君は不思議な猫だなぁ、僕達を食べもしないのに、何故追いかけるのさ?」
 「何でだろう?追いかけっこは楽しいからかな?つい追いかけちゃうんだ」
 お家にいた頃に出会ったネズミと比べて、ここのネズミはとてもすばしっこいので、モモタは力尽きるまで遊びます。
 「そういえば、ハトもそんなこと言っていたかな。
  ここら辺の猫は、ハトやネズミを食べるって本当?」
 「ああ、食べるさ。
  逆に聞くけど、都会の猫は僕達やハトを食べないって本当なのか?」
 「食べないよ。
  少なくとも、僕が住んでいた町の猫たちは、食べないよ」
 ネズミは少し考えて、悲しくなりました。
 「じゃあ、何のために追いかけるんだ?僕達は命がけで逃げているのに、君たちは遊ぶために追いかけているのか?僕達は、生きるか死ぬかの勝負をしているんだぞ。
  手を抜いては困るなぁ」
 モモタはビックリしました。
 「何も、そんな風に考えなくても良いじゃない?楽しく駆けっこして遊ぼうよ。
  お家の庭に住んでたネズミさんは、そんなこと言わなかったよ。
  それに、ハムスターのお友達もそんなこと言わなかったよ」
 「ハムちゃんは飼いネズミだからだろう?
  お庭のネズミはどうしたの?」
 「ママにフラれて、参ったなーて頭をかいて帰って行ったよ」
 ネズミはため息をつきました。
 「ふーん、楽しそうにしてるのなら、まだ良いか。
  でもね、僕達は食べて食べられて生きているんだ!!」
 仰向けになったネズミは続けます。
 「さあ、食べてくれ!ひと思いに僕を食べてくれ!!」
 「良いよ、お腹いっぱいだから。
  多分、町の猫たちもお腹いっぱいだから、ハトやネズミを食べないのかもしれないね」
 ネズミは起き上がって言いました。
 「そうなのか?お腹いっぱいってすごいんだな。
  命がけのレースも楽しい鬼ごっこに変えてしまうんだから」
 「お腹いっぱいだと、みんな幸せになれるんだよ」
 モモタとネズミは、お友達になりました。


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