猫のモモタ

緒方宗谷

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ロマンチストな海ガメの話

旅立つ先は誰も知らないけれど、でもみんな行くところ

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 海ガメは、卵に砂のお布団をかけながら言いました。
 「星の数だけ、命が生まれるのよ。
  新しい星を見つけたら、生まれる命も増えたってこと」
 「じゃあ、流れ星はどうして流れるの?」
 言うかどうか迷った海ガメですが、モモタの目を見て決めました。
 「そうね、誰かが亡くなったのかもしれないわ」
 「亡くなるって、なーに?」
 「死ぬってことよ」
 モモタはビックリしました。
 「死ぬ?僕も死ぬの?」
 「ええ、死ぬわ、生き物は誰でも死ぬものなのよ」
 縮こまったモモタは震え始めます。
 「僕死にたくないよ。
  大好きな祐ちゃんに会えなくなっちゃうよ。
  それに、僕を生んでくれたママにも会いたくなっちゃった。
  だから、ずっと生きていたいよ」
 海ガメは、モモタに頬ずりをしました。
 「大丈夫よ、死はお別れじゃないのよ。
  生きている間に出会う大切なものが、本当に大切だわって思わせてくれるためにあるのよ。
  死がなかったら、いつでもどこでも会えるからって、大切なものを見なくなってしまうのよ」
 「でも、死んだらもう会えないでしょう?」
 「そうね、だからこそお星さまはあんなに輝いているのよ。
  だって、死があるほうが、大切なものが際立つから」
 「僕は死なない方が良いな、だってその方が、祐ちゃんにいっぱい甘えられるもの」
 「そういう気持ちも忘れてしまうのよ。
  いつでも会えるから、会わなくていいやって思ってしまって、永遠に会いに行かなくなるわ」
 モモタは、考えても何も思いつきません。間を置いて海ガメが言いました。
 「死んでも忘れないくらいの思い出をたくさん作ることね」
 「そしたら忘れないの?」
 「そうよ、忘れないわ。
  死ぬときに振り返って、楽しい人生だったなぁって眠りにつければ、思い出いっぱいの夢を見る事が出来るのよ。
  それに、今あなたは、祐ちゃんに会いたいママに会いたいって思っているでしょう?
  死がなかったら、会いに行こうとか探しに行こうとか思わないで、ここでお魚の匂いを嗅ぎながら、永遠に過ごすと思うわ、だって、忘れてしまって無いんですもの」
 「そんなのやだなー」
 「そうよ、大切なものがあるから、みんな必死に生きられるのよ。
  私の赤ちゃんたちも必死に生きてくれるわ。
  ほら見てごらんなさい、私たちはたくさんいるでしょう?死があるから私達はたくさんいるのよ。
  もしなかったら、いつか独りぼっちになってしまうわ」
 砂浜を見渡すと、たくさんの海ガメママが卵を生んでいます。モモタは、まんまるお月様にお願いしました。
 「この子達が、またママに会えますように」



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