猫のモモタ

緒方宗谷

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世界の中心、揚羽蝶の話

みんなが言うと、自分も同じ感じがするね

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 モモタの背中で、揚羽蝶の女の子が揚羽蝶の男の子に言いました。
 「私、今日誕生日なのよ。
  あそこの紋黄蝶さんは、菜の花の蜜をくれたのよ。
  それに、向こうのカメムシさんはクワの実ジュースをくれたの。
バッタさんはツツジの蜜をくれたわ」
 アゲハ君は言いました。
 「へえ、素敵なプレゼントだね」
 「それで、あなたは何をくれるの」
 「え?僕は何もないよ」
 びっくりしたアゲハちゃんは言います。
 「ふつう、女の子の誕生日には、プレゼントを用意するものよ」
 「そうかな」
 「そうよ、みんな言っているわよ。
  もしかして、あなた、私の事が嫌いなの?」
 「そんなことないよ」
 「好きなら、プレゼントして当然よ」
 ぷんぷん怒ったアゲハちゃんをなだめようと、オロオロしてばかりのアゲハ君は、急いでプレゼントを探しに行きます。
 それを聞いていたモモタは、アゲハちゃんに言いました。
 「プレゼントって、要求するものじゃないんじゃない?」
 「どうして?普通よ」
 「どうして普通なの?」
 「みんな言っているもの」
 「みんなが言っていると、どうして普通なの?」
 「どうしてもよ」
 「何で、どうしてもなの?」
 「それが普通だからよ」
 なんか堂々巡りです。戻ってきたアゲハ君に、モモタが訊きました。
 「もともと用意していなかったのに、どうして急に用意したの?」
 アゲハの男の子は、真剣に言いました。
 「僕は、この子が好きなのかもしれえない」
 「え?そんな風には見えなかったけど」
 驚いたモモタに、アゲハ君は説明します。
 「みんなが、この子にプレゼントをあげるんだから、素敵な子に決まってるよ。
  普通プレゼントをあげるのにあげないなんておかしいし、それに気が付いたら、急にドキドキしてきたんだ。
  これって恋だろう?」
 それを聞いたアゲハちゃんが言いました。
 「そうよ、だってみんなそうですもん」
 




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