猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
107 / 502
世界の中心、揚羽蝶の話

好きって言うのは嫌いと一緒

しおりを挟む
 とても良いお昼寝日和です。モモタは黄色い蝶々のお布団になってあげながら、ウトウトとしていました。
 「あら、猫ちゃん、こんにちは」
 モモタが目を上げると、大きな揚羽蝶が肩にとまっていました。
 「うぁ、とても綺麗な蝶々だね」
 「うふふ、ありがとー」
 揚羽蝶は嬉しそうにお礼を言って続けます。
 「あなた、センスが良いのね。
  私の良さが分かるなら、玉虫君の良さも分かるでしょう?」
 「玉虫君?会ったことないなぁ」
 揚羽蝶はビックリしました。
 「私の良さが分かるのに、玉虫君にまだ会ったことが無いなんて、信じられないわ。
  ねぇ、そうでしょう?」
 同意を求められた黄色い蝶々たちは、顔を見合わせて困った様子です。
 「金緑に輝いていて、違う方向から見ると、光の加減で違う色に見えるの、あなたたちも素敵って思うでしょう?
  金色がかった紫色の筋がアクセントね、甲虫なのに貴族みたい。
  私たちみんな見惚れちゃうわね?」
 自慢げにうんちくを述べていた揚羽蝶が気付くと、黄色い蝶々はいなくなっていました。
 「はぁ」
 「どうしたの、ため息なんてついて」
 うつむいた揚羽蝶を見て、モモタが訊きました。
 「実はね、私、お友達がいないの。
  頑張っているのよ、頑張っているんだけれど、誰も一緒にいてくれないの」
 「種類が違うからじゃないの?」
 モモタが言うと、揚羽蝶は違うと言います。
 「むこうを見てごらんなさいよ、揚羽蝶が黄色い蝶々と遊んでいるでしょう。
  私、いじめられているのかしら」
 「そんな事ないよ、どうしてお友達になってくれないか、僕が訊いてきてあげるよ」
 モモタは、別の揚羽蝶と遊んでいる黄色い蝶々の所に行って訊きくと、みんなは言いました。
 「あの子が私たちとお友達になりたいの?冗談でしょう?」
 「うそよ、だってあの子、私たちの事きらいだもの」
 モモタは否定しますが、みんなは信じません。
 「あの子は、幾つもの色に光る虫が好きなのよね、白は嫌いなのよ」
 「黄色もきらいなはずよ」
 モモタは言いました。
 「そんな話聞いてないよ、だから、きらいなはずないよ」
 「だって、玉虫色が好きなんでしょ?」
 モモタには分かりません。
 「あの子、私たちに玉虫色を好きでしょって言うのよ、私白色が好きなのに」
 だんだん分かってきました。モモタが、黄色い蝶々の話を1匹ぼっちの揚羽蝶に教えてあげると、揚羽蝶は言いました。
 「白が好きなの?あんな何色でもない色が?信じられないわ。
  私や玉虫君のように、輝く色の方が綺麗に決まっているのにね、あなたもそう思うでしょう?」
 「輝く色も良いけど、素朴な色も僕好きだよ」
 信じられないという様子の揚羽蝶を見て、モモタは言いました。
 「好きって言うことは、他をきらいっていうことなんだろうね」
 「じゃあ何?あなたは私の事が嫌いなのね」
 「そんな事ないよ」
 モモタは慌てて否定して思いました。
 「揚羽蝶と黄色い蝶々と考えてることは一緒なのに、なんで分かり合えないんだろう?」






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

バンズくん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
バンズくんと呼ばれるパンが悲しそうに言いました。 「ぼくは、サンドイッチになれないんだよな〜」 まるいパンだから、三角の形になれないのです。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

白と黒の戦争

つきいあや
児童書・童話
白の国と黒の国は戦っていました。 白の国は白を基調とした建物、白色の城。反対に黒の国は黒を基調とした建物、黒色の城。そこでは白ねこと黒ねこが分断されて暮らしていました。 クロムとシロンが出会うことで、変化が起きていきます。

処理中です...