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お家で出会ったお友達の話
夢は想像で成長するのよ
しおりを挟むお庭の木に、珍しい鳥が羽を休めていました。
「あれ?珍しい鳥がいるね、僕達、初めて会うでしょう?」
「そうね、初めて会うかしら、久しぶりにここに来たから」
「普段はどこにいるの?」
「暑いときは北に旅行して、寒くなったら南に旅行するのよ」
この子は渡り鳥でした。雀とハトとカラスしか知らないモモタは、この子の言うことが不思議でなりません。
「お家にはいつ帰るの?」
「お家はないわ、こうやって住みやすそうな木をかりて、のんびり過ごすのよ」
モモタは、笑って言いました。
「変なのー、お家に住めば、日陰で涼めるし、日向で暖まれるのに。
わざわざ遠くに行かなくて良いから、楽チンだよ」
「ずっとお家にいたら、素敵な景色が楽しめないわ。
モモタちゃんは、お外を知らないのでしょう?世界はとても広いのよ」
「知ってるよ、僕屋根に上れるもん。
たくさんお家があるんでしょう?」
渡り鳥は笑います。
「世界は、こんなに灰色じゃないわ。
もっと遠くに行くと、大きな山がたくさんあるの。
木々の緑だって違っていて、南のほうはうんと濃いし、北の方は薄いの。
海だって知らないでしょう?色々な青に輝く水溜まりなの。
長旅のつかれも、羽ばたくたびに落ちていくほど美しいのよ」
モモタは、お家から出たことがないので、おとぎ話を聞いているようです。
「良いなー、僕も鳥さんだったら、見に行けるのにな」
「あら、猫ちゃんでも見に行けるわよ。
外にはたくさんの猫がいるもの。
どこに行っても、人間に可愛がられているわ。
人さえいれば、ご飯にも困らないんじゃないかしら。
お家は快適かもしれないけれど、お外にだって、素敵なことはたくさんあるわ。
お友達もいっぱいよ」
それからモモタは、毎日屋根から町を眺めるようになりました。まだ怖くてお外には出られませんが、新しいお友達への思いは、膨らむばかりです。
寝ても覚めても、お外で遊ぶ自分を想像して、楽しんでいました。
「僕はやっぱりダメだよ。
怖くてお外には出れないや」
しょげているモモタに、渡り鳥が旅立つときに言いました。
「想像することはとても大事よ。
お外に出られないのは、今がまだその時じゃないだけだから、気にしなくて良いの。
そのときが来たら、自然と出られるわ。
お外で待っている心が、呼んでくれるもの」
渡り鳥は飛んでいきました。
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