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落下来了鲤鱼
日本語(日语)
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ある日、赤いリボンがついた帽子をかぶった早紀ちゃんが、お家の近くをお散歩していました。
もうすぐお家だにつくというところで、突然大きな何かが空から落ちてきました。可愛いパステルカラーのワンピースの裾をヒラヒラはためかせながら、駆け寄ってみた早紀ちゃんは、ビックリ仰天。見ると、大きなお魚でした。
早紀ちゃんは空を見ますが、雲一つない真っ青な空です。
とても激しくピチピチしている姿に驚いて、早紀ちゃんはコイに訊きました。
「痛いの? 生きてる? あなたはだーれ?」
早紀ちゃんは跪いて続けて訊きます。
「なんでお空から落ちてきたの?」
そのコイは答えて言いました。
「いたたたた、僕はコイだよ。龍になるための練習中に、飛ばされてきたんだ。
ここはどのあたりなの?」
「ここ? ここは日本よ」
「日本ってどこ? 中国のどのあたり?」
「日本は外国なの。海の向こうのとーても遠い島の国なの」
コイは驚いて、「外国!? なんで僕外国に来たの?」と叫びました。
「わたしにも訊かせて。練習ってなーに?」
すると、コイは呆れ顔で教えてくれました。
「君は知らないの? 僕たちコイは、一生懸命練習して滝を登れるようになると、龍に成長できるんだ」
「本当? それなら、何でコイさんは、コイさんのまま落ちてきたの? 失敗したの?」
「うん、そうかも」
早紀ちゃんは、コイの話をとても不思議に思いました。
「でも、なんで滝をのぼると日本に落ちるのかな?」
「僕が住んでいる川には滝がないんだよ。
それで、僕は幾つかの支流を探してみたんだけれど、それでもなくて、夕方になっちゃったんだ。
途方に暮れて帰ろうとしたときに、大きな地震が起きて、地面が割れて熱いお湯が噴水になって噴き出たんだよ。
見ると、間欠泉は天まで届いていたから、もしこの間欠泉に登れば、龍になれるんじゃないかなって思ったんだ」
「それで、なれたの?」
「ううん」
顔を覗き込む早紀ちゃんに、がっかりした様子のコイは言いました。
「だから落ちてきたんだ。
でも、僕はやっぱり龍になりたいよ。お願い手伝ってよ」
「うん、良いよ。でも東京に滝ないよ」
「大丈夫、とりあえず登れる水を探そう」
「分かったわ。一緒に滝を見つけて登りましょうね」
そう笑顔で言った早紀ちゃんは、コイを抱えて家に帰りました。そして、浴槽に連れて行って、シャワーを浴びせます。
早紀ちゃんは訊きました。
「どう? 登れそう?」
コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
「ううん、無理みたい」
そこで、早紀ちゃんはコイを連れて、近所の公園へ行きました。滑り台の下ほうにコイを置くと、滑り台の上の方から、じょうろを使って水を流します。すると、水は流れていって、滝みたいになりました。
早紀ちゃんは訊きました。
「どう? 登れそう?」
コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
「ううん、無理みたい」
そこで、早紀ちゃんはコイを抱えて、別の公園へ行きました。
次の公園には水場があって、小さな滝があります。早紀ちゃんは、そこにコイを入れてみました。
コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
「やっぱり駄目、無理みたい」
だんだんと陽が暮れてきました。方法がないので、2人はお家に帰りました。
お夕食の後に早紀ちゃんが歯を磨いていると、お父さんが見ていたニュースで、良い物を見つけました。
『静岡県で、竜巻が発生しました』と言っていたのを見て、早紀ちゃんは、これだぁー!! と思ったのです。
もし竜巻に上ることができれば、コイは龍になれるかもしれません。早紀ちゃんは、お父さんがお風呂に入っている合間に、こっそりとクレジットカードをパジャマのポッケにしまいました。次の日内緒で静岡に行くことにしたのです。
静岡にはおばあちゃんのお家があります。ですから、早紀ちゃんは、何度も行ったことがありました。だから、早紀ちゃんは1人で行っても大丈夫。コイを抱えて新幹線に乗って、静岡へと向かいました。
みんなは、変なコイを抱えた女の子がいるな、と思いましたが、まさか本物のコイだなんて思いません。何事もなく静岡にやって来ることができました。
色々静岡の町を歩き回って、ようやく2人は、学校の校庭に大きなつむじ風があるのを見つけて、「あったぁ!」と叫んで、喜び合いながらかけていきます。
早紀ちゃんは、コイをつむじ風のそばに置きますが、すぐにつむじ風は消えてしまいました。
早紀ちゃんは、つむじ風がまた吹くのを待って、もう一度つむじ風のそばにコイを置きます。つむじ風はだんだんと大きくなって、早紀ちゃんに向かってきます。
「きゃあ!助けて! 助けてぇ!」
急に怖くなった早紀ちゃんは走って逃げようとしますが、後ろを振り返ってびっくりしました。
振り向いた先から、もっと大きな竜巻が迫ってきていたのです。
「きゃー!」
早紀ちゃんは、空高くまで吹き飛ばされていきました。
「早紀ちゃ―――ん!!」
一緒に吹き飛ばされたコイが叫びます。
雲の上まで飛ばされた2人は、眩しくて目が眩みます。建物が米粒くらいの大きさになるほど、高い空の上です。
頑張って目を開けたコイは、だんだんと竜巻が弱まっていることに気がつきました。
このままでは、早紀ちゃんは、頭からまっ逆さま。死んでしまうでしょう。
もしできることなら、早紀ちゃんだけでも助けてあげたい、と思ったコイは、一生懸命早紀ちゃんへ向かって泳ごうとします。ですが、前に進む事が出来ません。
少しも早紀ちゃんのそばに近寄れないコイは、無理に口をパクパクさせたり、首を伸ばしたりしていました。ですが、不意に体が重くなったかと思った瞬間、早紀ちゃんが落ちていきます。
「早紀ちゃ―――ん!!」
コイも頭を下に向けて、早紀ちゃんを追って落ちていきます。
校庭がまじかに迫ってきました。2人はもう終わりだと思ったその時です。突然コイの体が光り出しました。
コイは、頑張って早紀ちゃんに追いつくと、地面すれすれで早紀ちゃんを背中に乗せて、再び大空へと翔け上がります。
コイの体は、驚くほど長く変化していました。その上、風がなくとも1人で飛ぶことさえできました。
コイは、雲よりも高くまで昇って、昔放送していた日本の昔話のオープニングテーマのアニメと同じように、大空を翔けぬけます。
コイは、興奮して叫びます。
「わぁ、すごい! 僕龍になれたんだ」
「わぁぁ、ついになれたね! こんなにも成長して、成長して、成長して?・・・龍に?」
早紀ちゃんの言葉が途切れます。それと同時に、コイも「あれ?」と気がつきました。
よく見ると、姿は変わっていません。ただ体が長くなっただけでした。
「・・・・・・・・・・」
コイは絶句です。
早紀ちゃんは、コイを慰めて言いました。
「だ・・大丈夫よ、コイではなくなったわ。うん、なくなったわ」
それ以降、2人は何も話す事が出来ずに、校庭へと戻ってきました。
しばらく沈黙していましたが、早紀ちゃんが「帰ろうか?」と言うと、コイも「うん」と悲しげに言いました。
早紀ちゃんは、適当な枝を拾ってきて、コイに加えさせます。こうするれば、こいのぼりに見えなくもありません。コイに、こいのぼりの変装をさせて、東京へと戻っていきました。
可笑しな姿に変身したコイは、鏡の前に行って自分の姿を見てみました。ため息しか出てきません。仕方なく、コイは中国に帰っていきました。
それから10年後、早紀ちゃんは可愛い高校生に成長していました。早紀ちゃんは、つむじ風を見るたびにコイのことを思い出して、いつも笑います。
「そう言えば、何で地上で息出来ていたの?」
あの時のコイは言っていました。
「もし僕が龍になれたら、もう一度早紀ちゃんに会いに来るよ。ありがとう、さようなら」
早紀ちゃんは、毎日楽しみに待っています。
もうすぐお家だにつくというところで、突然大きな何かが空から落ちてきました。可愛いパステルカラーのワンピースの裾をヒラヒラはためかせながら、駆け寄ってみた早紀ちゃんは、ビックリ仰天。見ると、大きなお魚でした。
早紀ちゃんは空を見ますが、雲一つない真っ青な空です。
とても激しくピチピチしている姿に驚いて、早紀ちゃんはコイに訊きました。
「痛いの? 生きてる? あなたはだーれ?」
早紀ちゃんは跪いて続けて訊きます。
「なんでお空から落ちてきたの?」
そのコイは答えて言いました。
「いたたたた、僕はコイだよ。龍になるための練習中に、飛ばされてきたんだ。
ここはどのあたりなの?」
「ここ? ここは日本よ」
「日本ってどこ? 中国のどのあたり?」
「日本は外国なの。海の向こうのとーても遠い島の国なの」
コイは驚いて、「外国!? なんで僕外国に来たの?」と叫びました。
「わたしにも訊かせて。練習ってなーに?」
すると、コイは呆れ顔で教えてくれました。
「君は知らないの? 僕たちコイは、一生懸命練習して滝を登れるようになると、龍に成長できるんだ」
「本当? それなら、何でコイさんは、コイさんのまま落ちてきたの? 失敗したの?」
「うん、そうかも」
早紀ちゃんは、コイの話をとても不思議に思いました。
「でも、なんで滝をのぼると日本に落ちるのかな?」
「僕が住んでいる川には滝がないんだよ。
それで、僕は幾つかの支流を探してみたんだけれど、それでもなくて、夕方になっちゃったんだ。
途方に暮れて帰ろうとしたときに、大きな地震が起きて、地面が割れて熱いお湯が噴水になって噴き出たんだよ。
見ると、間欠泉は天まで届いていたから、もしこの間欠泉に登れば、龍になれるんじゃないかなって思ったんだ」
「それで、なれたの?」
「ううん」
顔を覗き込む早紀ちゃんに、がっかりした様子のコイは言いました。
「だから落ちてきたんだ。
でも、僕はやっぱり龍になりたいよ。お願い手伝ってよ」
「うん、良いよ。でも東京に滝ないよ」
「大丈夫、とりあえず登れる水を探そう」
「分かったわ。一緒に滝を見つけて登りましょうね」
そう笑顔で言った早紀ちゃんは、コイを抱えて家に帰りました。そして、浴槽に連れて行って、シャワーを浴びせます。
早紀ちゃんは訊きました。
「どう? 登れそう?」
コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
「ううん、無理みたい」
そこで、早紀ちゃんはコイを連れて、近所の公園へ行きました。滑り台の下ほうにコイを置くと、滑り台の上の方から、じょうろを使って水を流します。すると、水は流れていって、滝みたいになりました。
早紀ちゃんは訊きました。
「どう? 登れそう?」
コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
「ううん、無理みたい」
そこで、早紀ちゃんはコイを抱えて、別の公園へ行きました。
次の公園には水場があって、小さな滝があります。早紀ちゃんは、そこにコイを入れてみました。
コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
「やっぱり駄目、無理みたい」
だんだんと陽が暮れてきました。方法がないので、2人はお家に帰りました。
お夕食の後に早紀ちゃんが歯を磨いていると、お父さんが見ていたニュースで、良い物を見つけました。
『静岡県で、竜巻が発生しました』と言っていたのを見て、早紀ちゃんは、これだぁー!! と思ったのです。
もし竜巻に上ることができれば、コイは龍になれるかもしれません。早紀ちゃんは、お父さんがお風呂に入っている合間に、こっそりとクレジットカードをパジャマのポッケにしまいました。次の日内緒で静岡に行くことにしたのです。
静岡にはおばあちゃんのお家があります。ですから、早紀ちゃんは、何度も行ったことがありました。だから、早紀ちゃんは1人で行っても大丈夫。コイを抱えて新幹線に乗って、静岡へと向かいました。
みんなは、変なコイを抱えた女の子がいるな、と思いましたが、まさか本物のコイだなんて思いません。何事もなく静岡にやって来ることができました。
色々静岡の町を歩き回って、ようやく2人は、学校の校庭に大きなつむじ風があるのを見つけて、「あったぁ!」と叫んで、喜び合いながらかけていきます。
早紀ちゃんは、コイをつむじ風のそばに置きますが、すぐにつむじ風は消えてしまいました。
早紀ちゃんは、つむじ風がまた吹くのを待って、もう一度つむじ風のそばにコイを置きます。つむじ風はだんだんと大きくなって、早紀ちゃんに向かってきます。
「きゃあ!助けて! 助けてぇ!」
急に怖くなった早紀ちゃんは走って逃げようとしますが、後ろを振り返ってびっくりしました。
振り向いた先から、もっと大きな竜巻が迫ってきていたのです。
「きゃー!」
早紀ちゃんは、空高くまで吹き飛ばされていきました。
「早紀ちゃ―――ん!!」
一緒に吹き飛ばされたコイが叫びます。
雲の上まで飛ばされた2人は、眩しくて目が眩みます。建物が米粒くらいの大きさになるほど、高い空の上です。
頑張って目を開けたコイは、だんだんと竜巻が弱まっていることに気がつきました。
このままでは、早紀ちゃんは、頭からまっ逆さま。死んでしまうでしょう。
もしできることなら、早紀ちゃんだけでも助けてあげたい、と思ったコイは、一生懸命早紀ちゃんへ向かって泳ごうとします。ですが、前に進む事が出来ません。
少しも早紀ちゃんのそばに近寄れないコイは、無理に口をパクパクさせたり、首を伸ばしたりしていました。ですが、不意に体が重くなったかと思った瞬間、早紀ちゃんが落ちていきます。
「早紀ちゃ―――ん!!」
コイも頭を下に向けて、早紀ちゃんを追って落ちていきます。
校庭がまじかに迫ってきました。2人はもう終わりだと思ったその時です。突然コイの体が光り出しました。
コイは、頑張って早紀ちゃんに追いつくと、地面すれすれで早紀ちゃんを背中に乗せて、再び大空へと翔け上がります。
コイの体は、驚くほど長く変化していました。その上、風がなくとも1人で飛ぶことさえできました。
コイは、雲よりも高くまで昇って、昔放送していた日本の昔話のオープニングテーマのアニメと同じように、大空を翔けぬけます。
コイは、興奮して叫びます。
「わぁ、すごい! 僕龍になれたんだ」
「わぁぁ、ついになれたね! こんなにも成長して、成長して、成長して?・・・龍に?」
早紀ちゃんの言葉が途切れます。それと同時に、コイも「あれ?」と気がつきました。
よく見ると、姿は変わっていません。ただ体が長くなっただけでした。
「・・・・・・・・・・」
コイは絶句です。
早紀ちゃんは、コイを慰めて言いました。
「だ・・大丈夫よ、コイではなくなったわ。うん、なくなったわ」
それ以降、2人は何も話す事が出来ずに、校庭へと戻ってきました。
しばらく沈黙していましたが、早紀ちゃんが「帰ろうか?」と言うと、コイも「うん」と悲しげに言いました。
早紀ちゃんは、適当な枝を拾ってきて、コイに加えさせます。こうするれば、こいのぼりに見えなくもありません。コイに、こいのぼりの変装をさせて、東京へと戻っていきました。
可笑しな姿に変身したコイは、鏡の前に行って自分の姿を見てみました。ため息しか出てきません。仕方なく、コイは中国に帰っていきました。
それから10年後、早紀ちゃんは可愛い高校生に成長していました。早紀ちゃんは、つむじ風を見るたびにコイのことを思い出して、いつも笑います。
「そう言えば、何で地上で息出来ていたの?」
あの時のコイは言っていました。
「もし僕が龍になれたら、もう一度早紀ちゃんに会いに来るよ。ありがとう、さようなら」
早紀ちゃんは、毎日楽しみに待っています。
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