上 下
10 / 10
落下来了鲤鱼

日本語(日语)

しおりを挟む
 ある日、赤いリボンがついた帽子をかぶった早紀ちゃんが、お家の近くをお散歩していました。
 もうすぐお家だにつくというところで、突然大きな何かが空から落ちてきました。可愛いパステルカラーのワンピースの裾をヒラヒラはためかせながら、駆け寄ってみた早紀ちゃんは、ビックリ仰天。見ると、大きなお魚でした。
 早紀ちゃんは空を見ますが、雲一つない真っ青な空です。
 とても激しくピチピチしている姿に驚いて、早紀ちゃんはコイに訊きました。
 「痛いの? 生きてる? あなたはだーれ?」
 早紀ちゃんは跪いて続けて訊きます。
 「なんでお空から落ちてきたの?」
 そのコイは答えて言いました。
 「いたたたた、僕はコイだよ。龍になるための練習中に、飛ばされてきたんだ。
  ここはどのあたりなの?」
 「ここ? ここは日本よ」
 「日本ってどこ? 中国のどのあたり?」
 「日本は外国なの。海の向こうのとーても遠い島の国なの」
 コイは驚いて、「外国!? なんで僕外国に来たの?」と叫びました。
 「わたしにも訊かせて。練習ってなーに?」
 すると、コイは呆れ顔で教えてくれました。
 「君は知らないの? 僕たちコイは、一生懸命練習して滝を登れるようになると、龍に成長できるんだ」
 「本当? それなら、何でコイさんは、コイさんのまま落ちてきたの? 失敗したの?」
  「うん、そうかも」
 早紀ちゃんは、コイの話をとても不思議に思いました。
 「でも、なんで滝をのぼると日本に落ちるのかな?」
 「僕が住んでいる川には滝がないんだよ。
  それで、僕は幾つかの支流を探してみたんだけれど、それでもなくて、夕方になっちゃったんだ。
  途方に暮れて帰ろうとしたときに、大きな地震が起きて、地面が割れて熱いお湯が噴水になって噴き出たんだよ。
  見ると、間欠泉は天まで届いていたから、もしこの間欠泉に登れば、龍になれるんじゃないかなって思ったんだ」
 「それで、なれたの?」
 「ううん」
 顔を覗き込む早紀ちゃんに、がっかりした様子のコイは言いました。
 「だから落ちてきたんだ。
  でも、僕はやっぱり龍になりたいよ。お願い手伝ってよ」
 「うん、良いよ。でも東京に滝ないよ」
 「大丈夫、とりあえず登れる水を探そう」
 「分かったわ。一緒に滝を見つけて登りましょうね」
 そう笑顔で言った早紀ちゃんは、コイを抱えて家に帰りました。そして、浴槽に連れて行って、シャワーを浴びせます。
 早紀ちゃんは訊きました。
 「どう? 登れそう?」
 コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
 「ううん、無理みたい」 
 そこで、早紀ちゃんはコイを連れて、近所の公園へ行きました。滑り台の下ほうにコイを置くと、滑り台の上の方から、じょうろを使って水を流します。すると、水は流れていって、滝みたいになりました。
 早紀ちゃんは訊きました。
 「どう? 登れそう?」
 コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
 「ううん、無理みたい」 
 そこで、早紀ちゃんはコイを抱えて、別の公園へ行きました。
 次の公園には水場があって、小さな滝があります。早紀ちゃんは、そこにコイを入れてみました。
 コイは、一生懸命飛び跳ねながら言いました。
 「やっぱり駄目、無理みたい」 
 だんだんと陽が暮れてきました。方法がないので、2人はお家に帰りました。
 お夕食の後に早紀ちゃんが歯を磨いていると、お父さんが見ていたニュースで、良い物を見つけました。
 『静岡県で、竜巻が発生しました』と言っていたのを見て、早紀ちゃんは、これだぁー!! と思ったのです。
 もし竜巻に上ることができれば、コイは龍になれるかもしれません。早紀ちゃんは、お父さんがお風呂に入っている合間に、こっそりとクレジットカードをパジャマのポッケにしまいました。次の日内緒で静岡に行くことにしたのです。
 静岡にはおばあちゃんのお家があります。ですから、早紀ちゃんは、何度も行ったことがありました。だから、早紀ちゃんは1人で行っても大丈夫。コイを抱えて新幹線に乗って、静岡へと向かいました。
 みんなは、変なコイを抱えた女の子がいるな、と思いましたが、まさか本物のコイだなんて思いません。何事もなく静岡にやって来ることができました。
 色々静岡の町を歩き回って、ようやく2人は、学校の校庭に大きなつむじ風があるのを見つけて、「あったぁ!」と叫んで、喜び合いながらかけていきます。
 早紀ちゃんは、コイをつむじ風のそばに置きますが、すぐにつむじ風は消えてしまいました。
 早紀ちゃんは、つむじ風がまた吹くのを待って、もう一度つむじ風のそばにコイを置きます。つむじ風はだんだんと大きくなって、早紀ちゃんに向かってきます。
 「きゃあ!助けて! 助けてぇ!」
 急に怖くなった早紀ちゃんは走って逃げようとしますが、後ろを振り返ってびっくりしました。
 振り向いた先から、もっと大きな竜巻が迫ってきていたのです。
 「きゃー!」
 早紀ちゃんは、空高くまで吹き飛ばされていきました。
 「早紀ちゃ―――ん!!」
 一緒に吹き飛ばされたコイが叫びます。
 雲の上まで飛ばされた2人は、眩しくて目が眩みます。建物が米粒くらいの大きさになるほど、高い空の上です。
 頑張って目を開けたコイは、だんだんと竜巻が弱まっていることに気がつきました。
 このままでは、早紀ちゃんは、頭からまっ逆さま。死んでしまうでしょう。
 もしできることなら、早紀ちゃんだけでも助けてあげたい、と思ったコイは、一生懸命早紀ちゃんへ向かって泳ごうとします。ですが、前に進む事が出来ません。
 少しも早紀ちゃんのそばに近寄れないコイは、無理に口をパクパクさせたり、首を伸ばしたりしていました。ですが、不意に体が重くなったかと思った瞬間、早紀ちゃんが落ちていきます。
 「早紀ちゃ―――ん!!」
 コイも頭を下に向けて、早紀ちゃんを追って落ちていきます。
 校庭がまじかに迫ってきました。2人はもう終わりだと思ったその時です。突然コイの体が光り出しました。
 コイは、頑張って早紀ちゃんに追いつくと、地面すれすれで早紀ちゃんを背中に乗せて、再び大空へと翔け上がります。
 コイの体は、驚くほど長く変化していました。その上、風がなくとも1人で飛ぶことさえできました。
 コイは、雲よりも高くまで昇って、昔放送していた日本の昔話のオープニングテーマのアニメと同じように、大空を翔けぬけます。
 コイは、興奮して叫びます。
 「わぁ、すごい! 僕龍になれたんだ」
 「わぁぁ、ついになれたね! こんなにも成長して、成長して、成長して?・・・龍に?」
 早紀ちゃんの言葉が途切れます。それと同時に、コイも「あれ?」と気がつきました。
 よく見ると、姿は変わっていません。ただ体が長くなっただけでした。
 「・・・・・・・・・・」
 コイは絶句です。
 早紀ちゃんは、コイを慰めて言いました。
 「だ・・大丈夫よ、コイではなくなったわ。うん、なくなったわ」
 それ以降、2人は何も話す事が出来ずに、校庭へと戻ってきました。
 しばらく沈黙していましたが、早紀ちゃんが「帰ろうか?」と言うと、コイも「うん」と悲しげに言いました。
 早紀ちゃんは、適当な枝を拾ってきて、コイに加えさせます。こうするれば、こいのぼりに見えなくもありません。コイに、こいのぼりの変装をさせて、東京へと戻っていきました。
 可笑しな姿に変身したコイは、鏡の前に行って自分の姿を見てみました。ため息しか出てきません。仕方なく、コイは中国に帰っていきました。
 それから10年後、早紀ちゃんは可愛い高校生に成長していました。早紀ちゃんは、つむじ風を見るたびにコイのことを思い出して、いつも笑います。
 「そう言えば、何で地上で息出来ていたの?」
 あの時のコイは言っていました。
 「もし僕が龍になれたら、もう一度早紀ちゃんに会いに来るよ。ありがとう、さようなら」
 早紀ちゃんは、毎日楽しみに待っています。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

蜜吸のスズと白蛇のハル

緒方宗谷
児童書・童話
 イバラの中に住みついたひよこと子ヘビ。  本来なら出会うはずのなかった2人が、いくつもの難題を乗り越えて、友情を深めていく教養小説です。

野良の陰陽師少女♪

健野屋文乃
児童書・童話
吾が名は、野良のあき!ゆきちゃんの心の友にして最強の式神使い?! いつもは超名門女子小学校に通っている女の子のあき。 不可思議な式神たちと、心の友、引き籠り中の少女ゆきちゃんとの物語は進行中♪

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐︎登録して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

黒猫クロとトラ柄のシマ

榊咲
児童書・童話
ハウスの中で生まれたネコの話

タロウのひまわり

光野朝風
児童書・童話
捨て犬のタロウは人間不信で憎しみにも近い感情を抱きやさぐれていました。 ある日誰も信用していなかったタロウの前にタロウを受け入れてくれる存在が現れます。 タロウはやがて受け入れてくれた存在に恩返しをするため懸命な行動に出ます。 出会いと別れ、そして自己犠牲のものがたり。

知ったかぶりのヤマネコと森の落としもの

あしたてレナ
児童書・童話
ある日、森で見つけた落としもの。 動物たちはそれがだれの落としものなのか話し合います。 さまざまな意見が出ましたが、きっとそれはお星さまの落としもの。 知ったかぶりのヤマネコとこわがりのネズミ、食いしんぼうのイノシシが、困難に立ち向かいながら星の元へと落としものをとどける旅に出ます。 全9話。 ※初めての児童文学となりますゆえ、温かく見守っていただけましたら幸いです。

童話アンソロジー

色歌
児童書・童話
短い子供向けの小説をまとめました。

猫のモモタ

緒方宗谷
児童書・童話
モモタの出会う動物たちのお話。 毎月15日の更新です。 長編『モモタとママと虹の架け橋』が一番下にあります。完結済みです。

処理中です...