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漂到的郡主
日本語(日语)
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ある日、一人の男が浜辺を歩いていると、水際に一艘の小舟があることに気が付いた。男がその小舟を覗と、一人のきれいな女性が気を失っている。
びっくりした男が駆け寄って、顔を覗き込むと息がある。安心した男は、女性を見た。とても綺麗な衣を着ている。天女が来ている羽衣の様だ。とても人間に得ない美しい女性だった。
男は呼び起こそうとしたが、女性は起きない。頬を叩いてみても、肩を揺らしてみても良きなかったので、男は女性を背負って家に帰ることにした。
次の日になっても女は目覚めない。しかし血色は良い。だから、そのうち目覚めるだろう、と男は思った。女性を見つけてから、男は毎日毎日彼女を看病した。一年が過ぎ、さらに一年が過ぎた頃、ようやく彼女は目覚めた。
部屋を見渡して、彼女が言った。
「ここはどこですか? 私はまだ生きているのですか?」
男は答えた。
「大丈夫ですよ、ここは日本です。あなたの話している言葉は中国語ですね? 中国人ですか?」
「はい、あなたは日本人ですか? 何故中国語を話せますか?」
「私は貿易をしていて、日本のものをうって生計を立てています。だから、少し話せるのです」
女性は目覚めたばかりで、体調は回復していない。実を起こすことは出来る物の、毎日布団で寝て過ごした。男は、あたかも自分を看るかのごとく、彼女の世話をした。そんな日本人に対して、女性はとても感謝した。
暫くして、女性の健康状態は、ついに立ち上がれるようにまで回復した。
男は、喜びながらも少しさびしそうに言った。
「これなら、あなたは帰国できるでしょう。
もし私の船が港に戻ってきたら、あなたを家まで送ってあげましょう」
しかし、女性は言った。
「いいえ、帰りたくありません。実は、私は宋国の地方領主の娘なんです。
私は、今ここでの生活と比べて、とてもいい暮らしをしていました。
ですが、私はただの道具だったのです。私の父は、自分の権力を増大させるために、私を隣の地域を治める方の長男に嫁がせようとしたのです」
「悪い話ではないでしょう? 生活水準はご実家と比べて悪くならないでしょうし」
「ですが、聞くととても性格が悪いのです。お金があればすぐ散財し、気に入らないことがあればすぐ暴力を振るうらしいのです。
もしその男に嫁ぎでもすれば、私はきっと不幸になってしまうでしょう」
「そう言うなら、あなたはどうしたいのです?」
「もし許されるのでしたら、ぜひここに住まわせてください」
「しかし、我が家はあなたのご実家と比べて裕福ではありません。私は貴方に高価なものを買い与えられるほどの力はありません」
「そんな事望みません。宋国に住んでいた頃は、私が望む物は何でももらえていましたが、誰も私に心からそれらを与えてくれませんでした。
あなたは、私を看病しながら変な事をしませんでした。あなたは真心を持って、私を看病してくださいました。あなたは、とても誠実な人です。私はあなたのような方に娶っていただきたいのです」
男は、びっくりしながらもとても嬉しく思った。二人はすぐに結婚し、盛大な披露宴を執り行った。
幸せな生活が続いたある日、男は仕事のために朝鮮王国に行かねばならなくなった。晴れた日の早朝、愛妻に見送られて男は朝鮮王国へと旅立って行った。
半年が過ぎて、夫から安否を知らせる文が届いて、愛妻はとても喜び安堵した。
旦那様はもうすぐ帰国される。愛妻は宴を開いてあげようと、家の者たちを集めて準備を始めた。しかし、いくら待っても夫は帰ってこない。
ある日、近所に住むおばさんがやって来て、女性に言った。
「大変! 大変! 奥様、浜辺に来てください! 大勢の人が浜に打ち上げられています‼」
妻が見に行くと、打ち上げられていたのは、なんと夫の部下の船乗りたちだった。多くの人が既に死んでいる。彼女は急いで生きている人のところに駆け寄って、一体何があってこんなにひどいことになったのか訊いた。
「ああ、奥様、実は博多のそばの日本海で大嵐にあっただ。旦那様は頑張ってくれたんだども、遂にオラたちの船はひっくり返っちまっただよ」
「ああ、なんということ! 私の旦那様は死んでしまった!」
彼女は悲しみのあまり崩れて蹲り、遠くまで聞こえるほど大声で泣きわめいた。いつまでもいつまでも泣き続ける彼女を心配して、みんなは、「家に帰ろう」と声をかけた。しかし、彼女はいつまでもその場で泣き続けた。
次の日、泣き疲れてそのまま寝てしまった彼女は、大勢が騒ぐ声を聞いて目を覚ました。みんなを見ると、誰もが水平線を見ている。彼女も水平線を見た。とても遠くに何かが見える。
彼女は思った。
「もしかしたら、私の旦那様は生きているのかも」
彼女は水平線を見つめる。とても遠くであったが、海面上に見えるのは、間違いなく船の腹だ。
思わず大声で夫を呼んだ。そしてその場に跪いて祈る。毎日毎日祈り続けた。
その祈りは、少し遠くにあるこの地方の神社まで届いた。毎日毎日一日中聞こえてくる祈りが気になって、その神社に住まう雷神が船の様子を見に行くと、確かに彼女の旦那は生きていた。
しかし、彼がいる船は出入口が水没していて、助け出すことは容易ではない。既にほとんどが沈んでいて、死は間近だろう。そのうえ近くには新しい嵐が迫っていた。
時間がない。もし雷神が彼の命を救うのなら、誰かの命を使わなければならない。それは、最も親密な人以外ではならなかった。
雷神は妻の方を見やった。彼女しかいないだろう。しかし彼女は宋国の民であって、日の本の民ではない。そこで、日本の雷神は知り合いの宋国の雷神に訊いた。
日本の雷神から問われた宋国の雷神は、彼女の生まれ故郷の土地神に訊いた。
すると土地神は、「あの娘は日本に行って幸せになれた。だから、もし娘がその様に望むのであれば、どうかその娘のために願いを叶えてほしい」と言った。
そこで日本の雷神は、嘆き悲しむ妻のところに行って言った。
「心配しなくてもよい。汝の夫は存命であるぞ」
「本当ですか? どうか私の旦那様を助け出してくださいませ」
「うむ、可能であるぞよ。だが、条件がるのじゃ」
「どのような条件でございますか? 私はどの様な条件でも受けましょう」
それを聞いて、雷神は言った。
「汝の命を糧にする必要があるのじゃ」
妻はすぐさま答えた。
「そのようなことでよろしければ、今すぐにでもこの命差し出しましょう。
私の命は旦那様のものでございます。ですから、私の命を奉納いたしますゆえ、どうか旦那様の命をお救いください」
聞き終った雷神は、何やら難しい大和言葉を唱えて、彼女の胸から光り輝く魂魄を取り出した。すると、辺り一面に魂魄の光が広がって、黒雲をきれいさっぱり消し去った。
それから、少し残っていた暴風を利用して船を再びひっくり返す。それを見届けた妻は静かに息を引き取った。
上下が戻った船に乗って港に戻ってきた夫は、死んだ愛妻を見て、大声で泣いた。夫がいくら呼んでも妻は目覚めない。しかし、ある奇跡が起きていた。あまりお腹が膨らんでいなかったので、誰も気が付けなかった小さな命が、彼女のお腹の中に宿っていた。
この家族を哀れに思った雷神は、自らの神力を使って、小さな命を成長させて赤子にし、優しく外に導いてやった。
夫は感激して、とても多くの宝物を神社に奉納した。彼は、愛する妻の形見として、生まれた子を育てた。
びっくりした男が駆け寄って、顔を覗き込むと息がある。安心した男は、女性を見た。とても綺麗な衣を着ている。天女が来ている羽衣の様だ。とても人間に得ない美しい女性だった。
男は呼び起こそうとしたが、女性は起きない。頬を叩いてみても、肩を揺らしてみても良きなかったので、男は女性を背負って家に帰ることにした。
次の日になっても女は目覚めない。しかし血色は良い。だから、そのうち目覚めるだろう、と男は思った。女性を見つけてから、男は毎日毎日彼女を看病した。一年が過ぎ、さらに一年が過ぎた頃、ようやく彼女は目覚めた。
部屋を見渡して、彼女が言った。
「ここはどこですか? 私はまだ生きているのですか?」
男は答えた。
「大丈夫ですよ、ここは日本です。あなたの話している言葉は中国語ですね? 中国人ですか?」
「はい、あなたは日本人ですか? 何故中国語を話せますか?」
「私は貿易をしていて、日本のものをうって生計を立てています。だから、少し話せるのです」
女性は目覚めたばかりで、体調は回復していない。実を起こすことは出来る物の、毎日布団で寝て過ごした。男は、あたかも自分を看るかのごとく、彼女の世話をした。そんな日本人に対して、女性はとても感謝した。
暫くして、女性の健康状態は、ついに立ち上がれるようにまで回復した。
男は、喜びながらも少しさびしそうに言った。
「これなら、あなたは帰国できるでしょう。
もし私の船が港に戻ってきたら、あなたを家まで送ってあげましょう」
しかし、女性は言った。
「いいえ、帰りたくありません。実は、私は宋国の地方領主の娘なんです。
私は、今ここでの生活と比べて、とてもいい暮らしをしていました。
ですが、私はただの道具だったのです。私の父は、自分の権力を増大させるために、私を隣の地域を治める方の長男に嫁がせようとしたのです」
「悪い話ではないでしょう? 生活水準はご実家と比べて悪くならないでしょうし」
「ですが、聞くととても性格が悪いのです。お金があればすぐ散財し、気に入らないことがあればすぐ暴力を振るうらしいのです。
もしその男に嫁ぎでもすれば、私はきっと不幸になってしまうでしょう」
「そう言うなら、あなたはどうしたいのです?」
「もし許されるのでしたら、ぜひここに住まわせてください」
「しかし、我が家はあなたのご実家と比べて裕福ではありません。私は貴方に高価なものを買い与えられるほどの力はありません」
「そんな事望みません。宋国に住んでいた頃は、私が望む物は何でももらえていましたが、誰も私に心からそれらを与えてくれませんでした。
あなたは、私を看病しながら変な事をしませんでした。あなたは真心を持って、私を看病してくださいました。あなたは、とても誠実な人です。私はあなたのような方に娶っていただきたいのです」
男は、びっくりしながらもとても嬉しく思った。二人はすぐに結婚し、盛大な披露宴を執り行った。
幸せな生活が続いたある日、男は仕事のために朝鮮王国に行かねばならなくなった。晴れた日の早朝、愛妻に見送られて男は朝鮮王国へと旅立って行った。
半年が過ぎて、夫から安否を知らせる文が届いて、愛妻はとても喜び安堵した。
旦那様はもうすぐ帰国される。愛妻は宴を開いてあげようと、家の者たちを集めて準備を始めた。しかし、いくら待っても夫は帰ってこない。
ある日、近所に住むおばさんがやって来て、女性に言った。
「大変! 大変! 奥様、浜辺に来てください! 大勢の人が浜に打ち上げられています‼」
妻が見に行くと、打ち上げられていたのは、なんと夫の部下の船乗りたちだった。多くの人が既に死んでいる。彼女は急いで生きている人のところに駆け寄って、一体何があってこんなにひどいことになったのか訊いた。
「ああ、奥様、実は博多のそばの日本海で大嵐にあっただ。旦那様は頑張ってくれたんだども、遂にオラたちの船はひっくり返っちまっただよ」
「ああ、なんということ! 私の旦那様は死んでしまった!」
彼女は悲しみのあまり崩れて蹲り、遠くまで聞こえるほど大声で泣きわめいた。いつまでもいつまでも泣き続ける彼女を心配して、みんなは、「家に帰ろう」と声をかけた。しかし、彼女はいつまでもその場で泣き続けた。
次の日、泣き疲れてそのまま寝てしまった彼女は、大勢が騒ぐ声を聞いて目を覚ました。みんなを見ると、誰もが水平線を見ている。彼女も水平線を見た。とても遠くに何かが見える。
彼女は思った。
「もしかしたら、私の旦那様は生きているのかも」
彼女は水平線を見つめる。とても遠くであったが、海面上に見えるのは、間違いなく船の腹だ。
思わず大声で夫を呼んだ。そしてその場に跪いて祈る。毎日毎日祈り続けた。
その祈りは、少し遠くにあるこの地方の神社まで届いた。毎日毎日一日中聞こえてくる祈りが気になって、その神社に住まう雷神が船の様子を見に行くと、確かに彼女の旦那は生きていた。
しかし、彼がいる船は出入口が水没していて、助け出すことは容易ではない。既にほとんどが沈んでいて、死は間近だろう。そのうえ近くには新しい嵐が迫っていた。
時間がない。もし雷神が彼の命を救うのなら、誰かの命を使わなければならない。それは、最も親密な人以外ではならなかった。
雷神は妻の方を見やった。彼女しかいないだろう。しかし彼女は宋国の民であって、日の本の民ではない。そこで、日本の雷神は知り合いの宋国の雷神に訊いた。
日本の雷神から問われた宋国の雷神は、彼女の生まれ故郷の土地神に訊いた。
すると土地神は、「あの娘は日本に行って幸せになれた。だから、もし娘がその様に望むのであれば、どうかその娘のために願いを叶えてほしい」と言った。
そこで日本の雷神は、嘆き悲しむ妻のところに行って言った。
「心配しなくてもよい。汝の夫は存命であるぞ」
「本当ですか? どうか私の旦那様を助け出してくださいませ」
「うむ、可能であるぞよ。だが、条件がるのじゃ」
「どのような条件でございますか? 私はどの様な条件でも受けましょう」
それを聞いて、雷神は言った。
「汝の命を糧にする必要があるのじゃ」
妻はすぐさま答えた。
「そのようなことでよろしければ、今すぐにでもこの命差し出しましょう。
私の命は旦那様のものでございます。ですから、私の命を奉納いたしますゆえ、どうか旦那様の命をお救いください」
聞き終った雷神は、何やら難しい大和言葉を唱えて、彼女の胸から光り輝く魂魄を取り出した。すると、辺り一面に魂魄の光が広がって、黒雲をきれいさっぱり消し去った。
それから、少し残っていた暴風を利用して船を再びひっくり返す。それを見届けた妻は静かに息を引き取った。
上下が戻った船に乗って港に戻ってきた夫は、死んだ愛妻を見て、大声で泣いた。夫がいくら呼んでも妻は目覚めない。しかし、ある奇跡が起きていた。あまりお腹が膨らんでいなかったので、誰も気が付けなかった小さな命が、彼女のお腹の中に宿っていた。
この家族を哀れに思った雷神は、自らの神力を使って、小さな命を成長させて赤子にし、優しく外に導いてやった。
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