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地底湖
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ズド~ン!!
ドドドドドドーッ!!
「なっ何!?」
爆音に飛び起きたミリィは、ドタバタと何度も転びながら、窓の外を見た。港に乱立する倉庫や付近の家々から煙が上がっている。
宿の人に望遠鏡を借りて海を見ると、海賊のものらしき数隻の船が、魔術かなにかで鉄丸をブッ放しながら接近してきていた。砦がなくなったのを聞きつけたのだろうか。
真ん中の一隻は明らかに海賊船だったが、周りの四隻は海賊船とばれないようにカモフラージュした船で、一見民間船に見える小柄な船だ。
甲板の上では、人魚(“じんぎょ”であって“にんぎょ”ではない。魚の人獣)を率いるハンマーシャークの魚人(人類の一種)が騒いでいた。
「ひゃっはっはっはっはっはっ~!!」
「死ね死ね死ね死ね~!!」
『世界生まれし時に生まれた 大いなる力
天空と地上と青き水を奏でし 大いなる力
右に破壊の刃 右に癒しの刃
清めの衣を纏う 偉大なる風の王 わが声に耳傾けよ
破壊の刃もちいて わが前に跪かせ』
ズドゴォォォン!!
「もう終わりか~!? まだ上陸もしてないのに~!!」
意気揚揚で攻め込んできた海賊船は、サラの精霊呪文一発で一瞬のうちに撃沈した。しょぼい海賊たちにはもったいないくらいの巨大な水柱が、数十秒にわたって墓標なり、町へ降り注ぐ海水の雨音が鎮魂歌を歌うように響く。
「それにしても、情報が行くのが早や過ぎないか?」
海水の雨が降り終えたことを確認したラングは、窓を開けながらミリィに話し掛けた。
「誰かが漏らしているとでも?」
「・・・近くに海賊のアジトでもあるんじゃないか?」
ミリィの横から割りいるようにウォーロックが答える。
「本当に在ったらやばいんじゃないの? ここら辺に軍事国が興って、フィーリアン連邦が瓦解したりして」
「フィーリアン騎士の前で言うことじゃないだろう?」
ミリィを除いたフィーリアン出身者一同が沈黙した。ミリィはバツがわるそうだ。
「でっ、でも、そういうことも考えておいたほうがいいでしょう? 公国の存亡を賭けた一大事なんだから・・・」
「まあ…そうだが・・・」
ラングは、ちょっとムカついたような表情で、ミリィの言い訳に答えた。
砦の人々を救出してから3日が経つが、邪教による町への報復は何もなく、ズメホスが復活したと思われる魔力も感じられない。洞窟を見に行くついでに、騎士であることを忘れないラングの主張を汲んで、海賊のアジトがないか調べることにした。
もしそれがあるとすれば、当然砦より外側だろうから、少し多めにお弁当を作ることにする。
まだ陽が昇ったばかりだからだろうか、砲撃を食らった倉庫には、所々赤々と燃えている建物があって消火活動が行われているにも関わらず、民衆は静けさを取り戻し、眠りについてしまったようだ。
建物の大半は石造りだし、巨大な水溜りである海がすぐそこにあるせいか、火事が広がったらという危機感は全くないのかもしれない。
何か特殊な力を習得ているわけでもないのに、自分よりも危機感のない町人に対し、ミリィは平和ボケすることに疑問を抱き、熱く語る。
「ねぇ~、ミリィさんも手伝ってくださいよー」とサラがぼやく。
「わたしは平和について語っているの! 邪魔しないで!!」
「語るっていったって、『平和すぎるのも危ない』ってところから、全然進んでないじゃないですかぁ」
「あっ、ばれてる?」
しぶしぶ、お弁当つくりに参加する。
母親に花嫁修行だとか言われてやらされていたミリィは、結構上手い。毎日が自給自足で自炊だったサラに引けを取ることなく、何とかやり遂げた。
・・・だが、輝かしい微笑みの裏に、自分は材料を切るだけで、調理するのはサラに任せたという巧みな戦術があったことは、言うまでもない。
ドドドドドドーッ!!
「なっ何!?」
爆音に飛び起きたミリィは、ドタバタと何度も転びながら、窓の外を見た。港に乱立する倉庫や付近の家々から煙が上がっている。
宿の人に望遠鏡を借りて海を見ると、海賊のものらしき数隻の船が、魔術かなにかで鉄丸をブッ放しながら接近してきていた。砦がなくなったのを聞きつけたのだろうか。
真ん中の一隻は明らかに海賊船だったが、周りの四隻は海賊船とばれないようにカモフラージュした船で、一見民間船に見える小柄な船だ。
甲板の上では、人魚(“じんぎょ”であって“にんぎょ”ではない。魚の人獣)を率いるハンマーシャークの魚人(人類の一種)が騒いでいた。
「ひゃっはっはっはっはっはっ~!!」
「死ね死ね死ね死ね~!!」
『世界生まれし時に生まれた 大いなる力
天空と地上と青き水を奏でし 大いなる力
右に破壊の刃 右に癒しの刃
清めの衣を纏う 偉大なる風の王 わが声に耳傾けよ
破壊の刃もちいて わが前に跪かせ』
ズドゴォォォン!!
「もう終わりか~!? まだ上陸もしてないのに~!!」
意気揚揚で攻め込んできた海賊船は、サラの精霊呪文一発で一瞬のうちに撃沈した。しょぼい海賊たちにはもったいないくらいの巨大な水柱が、数十秒にわたって墓標なり、町へ降り注ぐ海水の雨音が鎮魂歌を歌うように響く。
「それにしても、情報が行くのが早や過ぎないか?」
海水の雨が降り終えたことを確認したラングは、窓を開けながらミリィに話し掛けた。
「誰かが漏らしているとでも?」
「・・・近くに海賊のアジトでもあるんじゃないか?」
ミリィの横から割りいるようにウォーロックが答える。
「本当に在ったらやばいんじゃないの? ここら辺に軍事国が興って、フィーリアン連邦が瓦解したりして」
「フィーリアン騎士の前で言うことじゃないだろう?」
ミリィを除いたフィーリアン出身者一同が沈黙した。ミリィはバツがわるそうだ。
「でっ、でも、そういうことも考えておいたほうがいいでしょう? 公国の存亡を賭けた一大事なんだから・・・」
「まあ…そうだが・・・」
ラングは、ちょっとムカついたような表情で、ミリィの言い訳に答えた。
砦の人々を救出してから3日が経つが、邪教による町への報復は何もなく、ズメホスが復活したと思われる魔力も感じられない。洞窟を見に行くついでに、騎士であることを忘れないラングの主張を汲んで、海賊のアジトがないか調べることにした。
もしそれがあるとすれば、当然砦より外側だろうから、少し多めにお弁当を作ることにする。
まだ陽が昇ったばかりだからだろうか、砲撃を食らった倉庫には、所々赤々と燃えている建物があって消火活動が行われているにも関わらず、民衆は静けさを取り戻し、眠りについてしまったようだ。
建物の大半は石造りだし、巨大な水溜りである海がすぐそこにあるせいか、火事が広がったらという危機感は全くないのかもしれない。
何か特殊な力を習得ているわけでもないのに、自分よりも危機感のない町人に対し、ミリィは平和ボケすることに疑問を抱き、熱く語る。
「ねぇ~、ミリィさんも手伝ってくださいよー」とサラがぼやく。
「わたしは平和について語っているの! 邪魔しないで!!」
「語るっていったって、『平和すぎるのも危ない』ってところから、全然進んでないじゃないですかぁ」
「あっ、ばれてる?」
しぶしぶ、お弁当つくりに参加する。
母親に花嫁修行だとか言われてやらされていたミリィは、結構上手い。毎日が自給自足で自炊だったサラに引けを取ることなく、何とかやり遂げた。
・・・だが、輝かしい微笑みの裏に、自分は材料を切るだけで、調理するのはサラに任せたという巧みな戦術があったことは、言うまでもない。
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