エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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黒魔導士の実力

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 結構疲れた。あの洞窟で一泊してから、みんなを町へ連れて帰った。
 気が立っていただけの所長は、1日したら頭が冷めたらしく、ミリィたちのところに誤りに来た。そこでミリィが、天人について知っているか聞いてみたが、天人のての字も知らない、と言う。
 砦長は結構話し上手で、ミリィから話の主導権を奪って内容を脱線させ、悪魔教の話に摩り替えてしまった。
 砦を占拠していた悪魔教牝馬の爪は、もともと小さな教団で、ウィード公国もそれほど危険視はしていなかったらが、最近力をつけてきているらしい。
 ミリィは、少し考える素振りを見せてから言った。
 「まあ、クラフトのほうにも、そういう教団は沢山いるし、そのうち失速して、また小さくなるんじゃない? たいした事ないわよ」
 しかし、一行がにつくなり、所長は、、報復があったときのことを考え、町警備を強化するよう、ムーブルを統治する男爵のローゼンリッターに進言した。
 「・・・で、なんで、わたしたちまで駆り出されるのよ」
 と、町を取り囲む城壁の外で、ミリィがぼやいた。
 「しょうがないですよ」
 サラが慰める。
 報復がある様子もなく退屈だった4人は、場所を港に変えてもらい、いろいろな情報を聞きながら、時間をつぶすことにした。
 だが、たいした話は聞けなかった。情報になる情報は全くなく、退屈しのぎどころか疲れるだけに終ってしまった。
 むり言って警備からはずしてもらって街の役所に行き、海岸沿いにある入り江の洞窟の奥にある地底湖のことを聞いたが、誰に聞いてもたらい回しにされるだけで、結局、何も聞き出せなかった。
 書庫にいれてもらって、地理や歴史の本を読み、いろいろ調べたが見つからない。
 ミリィが訝しげに言う。
 「どういうことかしら・・・」
 「何か隠されてるってことですか?」と問うサラに、ミリィは「多分ね」と答える。
 管理する人に洞窟のことを聞いてみると、その本は戦争史の棚にあると言われ、あっさりミリィの勘は外れた。
 「何かあるんじゃなかったのか?」
 ウォーロックが茶々を入れる。
 「うるさいわね!!」
 サラが本を見つけ開くと、すぐに洞窟に関する歴史が書いてあった。内容は、800年以上前に降魔したズメホスを封じた魔法陣が洞窟にある、ということが書いてある。
 「洞窟に精霊がいないのはこのためなんですね」とサラ。
 「そういえば、あの教団ってズメホスを崇拝していたわね」
 そう言うミリィの頭越しに本を覗き込んだラングが言った。
 「・・・ということは、ズメホスが復活しそうなのか?」
 「それはないわ」
 サラの隣で降魔戦争に関する本を開いていたミリィは、ラングの問いに即座に答えた。
 本によると、ズメホスは自我を失ってしまっている状態のようだ。
 魔力の塊と化している今、自ら復活することはできないだろうし、牝馬の爪が復活させたとしても、信者達が魔族となるか魔獣化するだけだろう。ただ最悪の場合、溢れ出た魔力で、一時的に辺りが魔界のようになるかもしれない。
 ズメホスが本当に復活しかけているのなら、この間戦った魔導士たちは、もっと強かったはずだ。
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