エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
35 / 107
天人

しおりを挟む
 森がないため、ゴブリンなどの邪霊獣の加勢も期待できない。
 恐る恐る開きっぱなしになった門をくぐるが、中に入ると人々は平然と日常を過ごしていた。充満する神気に影響されることなく、子供たちさえ無邪気に遊んでいる。
 怪しい者(全員怪しいが)といえば、背中に剣を装備し、真っ白いローブを着た白い長髪の男がこっちを見ているだけで、大量の天使はいない。神気が充満しきった市国の中で、どこから神気が発せられるのか分からず、すぐに身動きが出来ない状況だった。
 「ミリィさん! なんかあの人、こっちにきますよ!!」
 人々もそうだが、それ以上に白いローブの男に対して違和感を覚えたミリィは、とっさに身構える。
 「そう殺気立つな」
 男は笑顔で話し掛けてきたが、神気がこの男から発せられているのに気付いたミリィは、即座にソニックブームを放つ。
 「私は、平和的にことを進めたいのに・・・」
なんと、男はソニックブームを受け止め、握り消してしまった。どう見ても肉体を持つ人間にしか見えないが、とてつもなくでかい神気を発っする人外の存在だ。
 「・・・無限に近い天使をたった2体倒しただけで、あんたみたいのが出張ってくるとは思えないわね」
 ミリィは、かまをかける。
 「さすが鋭い・・・」
 怪しい笑みを浮かべながら、男は答えた。
 「えぇ~!! 話が見えませ~ん!!」
 「それはそのうち教えてやる!!」
 その言葉と共に、神術ヴィリーヴァファロウアで生き人形とかし使徒となった人間たちが、無表情で襲ってきた。
 「サラッ、逃げるわよ!!」
 もう後ろは包囲されていたため、ミリィはボムクリムズンで、男の真正面に紅の爆発を起こし、その横を一気に走りぬけた。
 「どこまで走るんですかー!?」
 「使徒がいなくなるまでよ!!」
 物凄い距離を走った。2人が入ってきた門と正反対の門をぬけ、何もない草原まで来て、やっと走るのを止めた。追ってはやってこないようだ。振り返ってそれを確認して、ようやく休むことができた。
 「はぁ、はぁ、疲れたですぅ~、ミリィさ~ん」
 「ここまでくれば・・・」
 「それは甘いな」
 その声で正面に向き直ると、目の前にあの男がいる。気配はなく、ぜんぜん気がつかなかった。
 「なんなんですか~!? 貴方は~!!」
 サラはぷりぷり怒りながら、文句を言った。
 「まあ、敵であることは間違いないわね」と呟く。
 「そうとも言えないな・・・」
 「・・・・・?」
 ミリィは、その男が言うことが分からなかった。

しおりを挟む

処理中です...