エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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天使との遭遇

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 物質世界の空のどこかにあると言われる浮遊しながら移動する天空の丘、ミカエルなどの高位天使は、その丘にしか降臨できないのに対し、どこへでも降臨できる下級の第三位・主天使ドミニオンである。
 ミリィたちは素早く馬車を降りて身構えた。3人はもちろん、10人いる騎士たちも天使を見るのは初めてだった。
 神や天使の体である光体を包み込めるほど大きな二枚の翼、全身に色はなく透き通っている。その体が放つ白い光によって、透明な光体は白い半透明になっていた。その体自体が、見たことのない丸みのある鎧のようだ。
 姿形は人間に似ていたが、その表情はとても冷たく、心が凍ってしまいそうになる。王室騎士でさえ、気負い負けして動けずにいた。
 精心攻撃はもうすでに始まっており、突然の出現に焦ったみんなは精神状態が一気に不安定なものになり、意識はあってもないに等しい状態に陥っている。
 いち早く危機を脱したミリィは攻撃を加えようとするが、不安定な精神状態が影響して霊力をサイコエネルギーへの変換に手間取り、力を放出することができない。技を放つことができず混乱するミリィを見ながら、ドミニオンは微動だ似せず、何の前触れもなしに物凄い出力の神の火をミリィたちめがけて打ち込んできた。
 『サイコシールド!!』
 円筒形の光の壁がミリィたちを包み、寸でのところで竜巻のごとく渦巻く神の火から身を守ることができた。光の壁に包まれた領域にぶち当たって割られた神の火は後方の地面にぶち当たり、爆音を響かせ燃え上がっている。
 サイコシールド一杯に広がった神の火の激しさに、ミリィは顔を被っていた。すぐに次の攻撃に備えようと顔を上げたときには、ドミニオンはすでに目の前にいる。光体から発せられる神気にミリィの精心は圧倒され、攻撃することできない。
 声を出すことすらできず後ずさりしたミリィは、立っているのがやっとだ。その光景を少し浮いた状態で見下ろしているドミニオンは、周辺の空気を激しく振動させ、奇声を上げるように歌いだした。その天使の賛美歌によって、一瞬の内にミリィを囲む結界が出現した。その中にいるミリィは、魂を大きく揺さぶられ、昇天しそうになる。
 結界内部で宙に縛り付けられたような格好のミリィは、声にならない声をあげながら痙攣し出した。ミリィを助けようとするゴブリンたちに宿る邪霊は、精霊の楯と呼ばれる結界を天使の作り出した結界に重ねて作った。
 中和された天使の結界から逃れたミリィは今にも倒れこみそうによろめきながら、精心を安定させようと外からの精心的干渉を遮断するサイコフィールドをはり、フィールドの出現と同時に跪いて両腕を地に付いた。
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