エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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戦闘の後

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 「みなさん、おはようございま~す」
 お昼が過ぎた頃、サラはラングに少し遅れてミリィの部屋に入ってきた。
 「あ~らサラさん、お元気なこと」とミリィがイヤミを言う。全身に激痛の走る2人は愚痴をこぼすが、天然ぎみのサラがまさかここまで強いとは思いもしなかったため、少しビビッている。
 早朝、放心状態の3人を見つけた巡回の警備小隊の小隊長がラングから経緯を聞き、ぜひとも国王に会見すべきだと発言し、使いの飛竜兵を東衛砦へ送った。帰ってきた使いの兵から王室から迎えが送られてくると聞き、その兵を待っている。
 王に謁見できるということは、エルフに会いたいミリィにとって情報の宝庫である王室へ招かれるということ。エルフの村の場所を教えてくれる可能性もある上、超能力に関する教典もある超嬉しい場所だ。
 サラの唱えた回復呪文ヒールにより、だいぶ痛みのとれた2人は身支度を始めたが、迎えの来る時間にはまだ随分あるため、フィーリアンの騎士であるラングに城内の話を聞くことにした。
 平和主義のフィーリアンは軍事縮小の気概が強く、ラルガルマン帝国の1師団・1万人に対して、1師団・5000人と規模も小さい。北の大帝国ラルガルマンとお隣同士で、よくそんなことができるものだ。気絶していたため、昨日のラングの働きを見ていないミリィは、こんなにラングは弱いのに・・・、と思った。
 開けた草原の多い領土とはいえ開拓事業はそれほど行われておらず、国土の60パーセント近くが森で構成されている。国王を始めとし、国民全体が自然調和への思いが強く、文化も質素ながら大変優れていることを聞かされた。自然調和派が多いのは、たぶんエルフ保護が根底にあるのだろう。
 ラングの剣や鎧を見て分かるように、物理戦闘には合わない銀製武具を装備しているのは、ミリィが実践する開発されたサイキックと比べて原始的ではあるものの霊術を得意とし、その力を剣に上乗せして戦うからだろう。武器の強度的問題よりも霊力の伝導しやすさを重視しているのだ。
 人間同士の戦争よりも対神魔戦争を想定しているのだろう。自慢げに見せる美しい金細工のある丸みを帯びたフォルムのシルバーグレードは、栄華の象徴に見える。
 戦争のない昨今、剣の形状は術的機能美を含めより美しくを探求し、そっちのほうで発展していた。
 物理的には芸術性優先で弱体化した刀身だが、霊力を上乗せした場合、相当強力であることはミリィにも分かる。騎士たちの感覚としては“剣はファッションに近い”ということが、ラングの話で分かった。
 貿易は主にガラス工芸品などを輸出し、金と銀を輸入している。ミリィもフィーリアンの伝統工芸で作られたランプを実家の寝室に飾っていた。世界中で使われているステンドグラスのほとんどがフィーリアン製でだ。ブランド化にも成功していて、大変高価な代物だ。この国のガラス細工を駆使した装飾品は世界一美しい、とミリィも思っている。
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