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2 村
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「そんなことよりも、俺の話を聞いてくれ!!」
すっかり2人に忘れられていた男は、会話に割って入ってきた。よく見ると、結構美形だ。ベージュ色の肌で、少しくせのある栗色の短めの髪をしている。鎧を見ると雑兵ではなく、ナイトクラスのようだ。白銀の鎧をまとい、フィーリアンの国旗と同じ、茨の紋章の入ったシルバーグレードという大剣を装備している。
しかし、平和主義のフィーリアンにしては似つかわしくない、傷つき返り血を浴びた鎧であった。光沢のある白銀の鎧が台無しだ。その血は結構臭い。
ヤジ馬となって集まってきた人々は、18年ぶりに、ラルガルマンと戦争になるのではないか、と不安そうな面持ちで遠巻きに見ている。ミリィも心配になったが、少し話しただけで、その心配は吹き飛んだ。
ミリィが呆れ顔で言った。
「ゴブリンが襲ってくるから逃げろって、何で襲ってくるのよ!?」
「うぅ・・・、それは・・・」
ミリィの質問にタジタジになったその騎士は、困った表情で、どこかに理由が転がってないか、と目を泳がせる。
「そうですよね、いくら小さい村って言っても、ゴブリンに村を襲う度胸なんて無いですもんね」
たまにはサラも的を射たことを言う。でしょうね、と頷いたミリィが続ける。
「どうせ、騎士様がゴブリンを殺したんでしょう?」
腕を組んでため息を付く素振りを見せるミリィを見やって、騎士が白状する。
「はい、そうです・・・」
騎士はしょぼくれた様子でうつむいた。ゴブリンを殺した者が人の密集するところに来るということが、どれだけ危険なことか分かっているようだ。まあ、騎士なんだから、そのくらいの教養はあるだろう。
「だったら、何でここに来るのよ。
確か、東衛砦があったわね、何でそこに行かないのよ!! 砦に行けば、ここは襲われずにすんだでしょ!?」
ミリィは声を荒げて責めた。ゴブリンはトロルよりも小柄で、猪と蛙を足したよう姿をしている。攻撃能力、生命力においてトロルを下回るが、凶暴性と素早さにおいては、トロルを上回る。しかも集団で行動するため、ドッと村に押し寄せてくることになる。
そんなことになったら、こんな小さな村すぐに壊滅してしまう。普段は臆病なゴブリンだが、怒らせると厄介な邪霊獣だ。
「国王陛下が、東衛砦のフォード閣下とお茶会を開いているもんで、砦に帰還するわけにも行かず困っていたところ、ある情報を思い出したものだから・・・」
ミリィは、シドロモドロに説明する騎士を不信の眼差しで見つめながら、説明の結末を急かす。
「国境警備兵のほうから、十数日前に女剣士と思われる人物が、ミットエルと接する国境のゲートを越えて入国したと・・・、そう聞いたもので、城下へ行くならこの村に立ち寄っているかと――」
騎士の説明が終わる間もなく、サラが割って入ってきた。
「あっ、それ絶対、ミリィさんのことですね、昨日まで3日間、まい――」
ドカ! バキ! グシャ!!
「ううぅぅぅぅ、ひどい」
サラの顔面から、しゅゅゅゅぅぅぅ、と煙が上がっている。
「まずは手分けをして、一番安全なのは・・・学校ね? 手分けして、そこにみんなを避難させましょう」
最後に騎士はラングと名乗り、村人の避難にあたった。その際、ラングに誘導された人々は、鮮血に染まった鎧を見て、原因はコイツか・・・と一瞬で察知したが、文句をいうものは誰1人としていなかった。
この国の国王は、代々、国民第一の政策をとってきた。森の中での生活を好む自分たちのために高い石の塀を築くなど、色々と王室には世話になっている。そのため、国王の安全のために我々も戦おう、と言わんばかりの勢いで、落ち着かせるのに3人は苦労した。
すっかり2人に忘れられていた男は、会話に割って入ってきた。よく見ると、結構美形だ。ベージュ色の肌で、少しくせのある栗色の短めの髪をしている。鎧を見ると雑兵ではなく、ナイトクラスのようだ。白銀の鎧をまとい、フィーリアンの国旗と同じ、茨の紋章の入ったシルバーグレードという大剣を装備している。
しかし、平和主義のフィーリアンにしては似つかわしくない、傷つき返り血を浴びた鎧であった。光沢のある白銀の鎧が台無しだ。その血は結構臭い。
ヤジ馬となって集まってきた人々は、18年ぶりに、ラルガルマンと戦争になるのではないか、と不安そうな面持ちで遠巻きに見ている。ミリィも心配になったが、少し話しただけで、その心配は吹き飛んだ。
ミリィが呆れ顔で言った。
「ゴブリンが襲ってくるから逃げろって、何で襲ってくるのよ!?」
「うぅ・・・、それは・・・」
ミリィの質問にタジタジになったその騎士は、困った表情で、どこかに理由が転がってないか、と目を泳がせる。
「そうですよね、いくら小さい村って言っても、ゴブリンに村を襲う度胸なんて無いですもんね」
たまにはサラも的を射たことを言う。でしょうね、と頷いたミリィが続ける。
「どうせ、騎士様がゴブリンを殺したんでしょう?」
腕を組んでため息を付く素振りを見せるミリィを見やって、騎士が白状する。
「はい、そうです・・・」
騎士はしょぼくれた様子でうつむいた。ゴブリンを殺した者が人の密集するところに来るということが、どれだけ危険なことか分かっているようだ。まあ、騎士なんだから、そのくらいの教養はあるだろう。
「だったら、何でここに来るのよ。
確か、東衛砦があったわね、何でそこに行かないのよ!! 砦に行けば、ここは襲われずにすんだでしょ!?」
ミリィは声を荒げて責めた。ゴブリンはトロルよりも小柄で、猪と蛙を足したよう姿をしている。攻撃能力、生命力においてトロルを下回るが、凶暴性と素早さにおいては、トロルを上回る。しかも集団で行動するため、ドッと村に押し寄せてくることになる。
そんなことになったら、こんな小さな村すぐに壊滅してしまう。普段は臆病なゴブリンだが、怒らせると厄介な邪霊獣だ。
「国王陛下が、東衛砦のフォード閣下とお茶会を開いているもんで、砦に帰還するわけにも行かず困っていたところ、ある情報を思い出したものだから・・・」
ミリィは、シドロモドロに説明する騎士を不信の眼差しで見つめながら、説明の結末を急かす。
「国境警備兵のほうから、十数日前に女剣士と思われる人物が、ミットエルと接する国境のゲートを越えて入国したと・・・、そう聞いたもので、城下へ行くならこの村に立ち寄っているかと――」
騎士の説明が終わる間もなく、サラが割って入ってきた。
「あっ、それ絶対、ミリィさんのことですね、昨日まで3日間、まい――」
ドカ! バキ! グシャ!!
「ううぅぅぅぅ、ひどい」
サラの顔面から、しゅゅゅゅぅぅぅ、と煙が上がっている。
「まずは手分けをして、一番安全なのは・・・学校ね? 手分けして、そこにみんなを避難させましょう」
最後に騎士はラングと名乗り、村人の避難にあたった。その際、ラングに誘導された人々は、鮮血に染まった鎧を見て、原因はコイツか・・・と一瞬で察知したが、文句をいうものは誰1人としていなかった。
この国の国王は、代々、国民第一の政策をとってきた。森の中での生活を好む自分たちのために高い石の塀を築くなど、色々と王室には世話になっている。そのため、国王の安全のために我々も戦おう、と言わんばかりの勢いで、落ち着かせるのに3人は苦労した。
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