Kaddish

緒方宗谷

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別れと出会い

27ー2

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 恐怖に耐えかねた1人の男が、集められた者達の一団から走って離れていくと、2人の隊員が小銃を構える。上官らしき男がそれを遮り、ゆっくりと拳銃を腰から抜いて構えた。一瞬の静寂に終止符を打つ発砲音と同時に、走る男は地面に転げて動かなくなった。
 信じられない光景だ。大人達は何の躊躇もなく、人を撃ち殺した。
 きちんと整列するように、と銃で小突きまわされた時に、父は転んだ。その際に放り出された子供は、一団が壁となって隊員の目に映らなくなった。思わず走り出した子供は、ヘルメットをかぶった数人の子供に目撃されたが、誰も子供が逃げたとは言わなかった。
 生きるためにナチス側に使われるしかなかった子供達は、心までヒトラーに売り渡したわけではなかったのだ。幾つかの建物を回って隠れる場所を探したが、どこも隠れる人々で溢れかえっていたし、場所によってはばれてしまって、自動小銃の的にされる瞬間目撃するのだった。
 パジャマのまま裸足で隠れる場所を探し回った子供は、空いていた下水の穴に入り込み、汚臭漂う下水道を抜けて、次に開いていた穴から這い上がった。
 逃げる人が開けたのだろうか、追いかける人が開けたのだろうか分からない。地上にも地下にも犬の吠える声が沢山響いている。
 少年は、十字路に向けて走ったが、右から車の走ってくる音と、それを追いかける一団の足音が聞こえ、たまたま開いていた鉄格子の門を抜けて、袋小路の土の上にしゃがみ込んだ。ビルク家の庭だった。
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