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代々木公園 ~緑道に佇む静かな舞台~
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新学期に合わせたかのように、桜が満開を迎えた。そんな日和に緑道をゆくと、静かに佇むカフェを見つけた。いま一杯飲んだばかりだったが、大きなA型看板に書いてある文言を見て、即座に入店を決めた。BGMは、80年代から現代までのJポップ。
入ってすぐにあるカウンターでの説明によると、テラス利用やテイクアウトと店内利用とでメニューは異なり、店内にはコーヒーメニューがなく、完全なオーダーメイドで、コーヒー好きにとっては店内がおすすめだとのこと。
通されたカウンターには、既に用意されていた足付きグラスの水と小さな赤いファイルがあって、中にはアイリッシュコーヒー、その他クッキーやサンドイッチの写真がのっていた。
この店の豆は、全てスペシャリティコーヒーのようだ。ご店主自身が、Qグレイダーという資格を持っているらしい。
男性店員から声をかけられて、好みについて話し始めるとすぐに気がついた。よくあるおまかせで淹れてもらうものとは違うのだと。こと細かく質問する彼は、カルテのようにメモを取っていく。
僕は、相反することですが苦味と酸味があって、チョコレートのような甘味のある香りのしっかりとしたコクと深みがある味で、まろやかな舌触りあって、酸味にはトゲがなく、冷めるにつれて舌に広がるような感じにしてほしい、と頼んだ。
それでも答えが足りないのか、苦味についてしっかりとしたビターなガツンとしたほうがいいのか、ほどほどのほうがいいのか訊いてくる。
香りにしても、ナッツとかチョコとかフルーティーとかという大枠ではなく、ダークチョコレートなのか否か、ナッツにしてもアーモンドのようなとか、マカダミアナッツのようなとか、事細かな内容に及んだ。
会話を終えて一口飲んだ水はただ者ではなく、思わず水面を見やった。とてもまろやかでとろしとしている。そして仄かな甘さがあった。なかなか美味しい。
しばらくして、豆を挽く音が店内に響いた。それも電動ではなく、明らかに人の手が挽いている音だ。見ると、すぐそこで、重々しいミルの大きなハンドルがぐるぐると回されている。
カウンターの内側に焦げ茶と緑の大きなミルが二台備え付けられていたのは気がついていたが、飾りだと思っていた。だかそれは勘違いで、まさにそれを使用して、僕のコーヒーが作られている。エスプレッソマシーンのようなものの左横に電動ミルがあったが、オーダーメイドでは使用しないようだ。
サービスのクッキーと一緒に出てきたコーヒーは、なるほどと唸るほどのコクと苦味が色濃い。酸味がないのは仕方がないが、それを補うような香ばしさがあとを引く。驚くのは、焦げからくる尖った味は全くなく、かわりに優しくいぶされたような深みとコクを有していることだ。
小さな紙コップが運ばれてきた。この店おすすめの豆の試飲だという。
コロンビアのピンクブルボンという豆を浅煎りにしたのだと説明をくれた。名前の通り、ピンク色に熟す珍しい品種だという。
紅茶とまがうほどフルーティーで、グレープフルーツのような味わい。普段試飲があるのかどうかは分からないが、味比べができて、とても楽しい思いだ。
オーダーメイドのコーヒーは、冷めても酸味は弱かったが、満足してもしきれない飲みごたえがある。新たに訪れたお客さんと店員の会話を聞いていると、味の好みは千差万別。中には、ブラックでもミルクをいれたような味で、ミントのような香りとか珍しいものにしてほしいとの要望もあった。
それら全てに応えられるこの店なら、好みの味が見つけられないはずがないだろう。僕も新しい好みを開拓する楽しみを得られた。
この緑道が長いのか短いのかは分からない。だが、散策しがいがあった。また来る機会があれば、もっとちゃんとこの周辺を散歩したい。他にも色々と見つけられるのではないかと、大きな期待に胸が踊るひとときだった。
入ってすぐにあるカウンターでの説明によると、テラス利用やテイクアウトと店内利用とでメニューは異なり、店内にはコーヒーメニューがなく、完全なオーダーメイドで、コーヒー好きにとっては店内がおすすめだとのこと。
通されたカウンターには、既に用意されていた足付きグラスの水と小さな赤いファイルがあって、中にはアイリッシュコーヒー、その他クッキーやサンドイッチの写真がのっていた。
この店の豆は、全てスペシャリティコーヒーのようだ。ご店主自身が、Qグレイダーという資格を持っているらしい。
男性店員から声をかけられて、好みについて話し始めるとすぐに気がついた。よくあるおまかせで淹れてもらうものとは違うのだと。こと細かく質問する彼は、カルテのようにメモを取っていく。
僕は、相反することですが苦味と酸味があって、チョコレートのような甘味のある香りのしっかりとしたコクと深みがある味で、まろやかな舌触りあって、酸味にはトゲがなく、冷めるにつれて舌に広がるような感じにしてほしい、と頼んだ。
それでも答えが足りないのか、苦味についてしっかりとしたビターなガツンとしたほうがいいのか、ほどほどのほうがいいのか訊いてくる。
香りにしても、ナッツとかチョコとかフルーティーとかという大枠ではなく、ダークチョコレートなのか否か、ナッツにしてもアーモンドのようなとか、マカダミアナッツのようなとか、事細かな内容に及んだ。
会話を終えて一口飲んだ水はただ者ではなく、思わず水面を見やった。とてもまろやかでとろしとしている。そして仄かな甘さがあった。なかなか美味しい。
しばらくして、豆を挽く音が店内に響いた。それも電動ではなく、明らかに人の手が挽いている音だ。見ると、すぐそこで、重々しいミルの大きなハンドルがぐるぐると回されている。
カウンターの内側に焦げ茶と緑の大きなミルが二台備え付けられていたのは気がついていたが、飾りだと思っていた。だかそれは勘違いで、まさにそれを使用して、僕のコーヒーが作られている。エスプレッソマシーンのようなものの左横に電動ミルがあったが、オーダーメイドでは使用しないようだ。
サービスのクッキーと一緒に出てきたコーヒーは、なるほどと唸るほどのコクと苦味が色濃い。酸味がないのは仕方がないが、それを補うような香ばしさがあとを引く。驚くのは、焦げからくる尖った味は全くなく、かわりに優しくいぶされたような深みとコクを有していることだ。
小さな紙コップが運ばれてきた。この店おすすめの豆の試飲だという。
コロンビアのピンクブルボンという豆を浅煎りにしたのだと説明をくれた。名前の通り、ピンク色に熟す珍しい品種だという。
紅茶とまがうほどフルーティーで、グレープフルーツのような味わい。普段試飲があるのかどうかは分からないが、味比べができて、とても楽しい思いだ。
オーダーメイドのコーヒーは、冷めても酸味は弱かったが、満足してもしきれない飲みごたえがある。新たに訪れたお客さんと店員の会話を聞いていると、味の好みは千差万別。中には、ブラックでもミルクをいれたような味で、ミントのような香りとか珍しいものにしてほしいとの要望もあった。
それら全てに応えられるこの店なら、好みの味が見つけられないはずがないだろう。僕も新しい好みを開拓する楽しみを得られた。
この緑道が長いのか短いのかは分からない。だが、散策しがいがあった。また来る機会があれば、もっとちゃんとこの周辺を散歩したい。他にも色々と見つけられるのではないかと、大きな期待に胸が踊るひとときだった。
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