FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🍭

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 顔をのぞき込む彼に、杏奈が答える。
「……ナナから電話があって、こういうことするって決意を聞いた時、わたし混乱してしまって……確かに務君の言う通り、みんなで一緒に来ればよかったよね。でも必死で思いつかなかった……ごめんなさい。わたしのせいだね、こんなことになってしまったのって」
 魚子が割り込む。
「騙されてるよ、こんなの杏奈の常とう手段じゃん。あたしたちがこんなこと単独でするわけないでしょ。そもそもクラスだってもう違うんだよ、二年になってから一度も接触してなかったんだよ。誰がどう考えても、こんなことする理由ないでしょ」
 杏奈は、務に寄り添って白いインナーの裾を握ると、彼の右腕越しに魚子を睨みつけた。
「ダンス部の中には、成瀬さんを快く思わない人結構いるよね。その人たちにせっつかれたんじゃないの? 雷さんのこと急先鋒だって言ったけれど、みんなはあなたが急先鋒だって思っているのよ、実際そうでしょ? 成瀬さんを辞めさせようって人たちに囲まれていたじゃないの。だから多勢に無勢のわたしを裏切って、こんなことしたのよ」
「違うっ! あんたが立ちまわって、こういうことが起こるように仕向けたんでしょ。あたしらがしなかったら、雷辺りがしでかしてたよ。そしたらもっとひどいことになってた。成瀬のことなんてどうでもよかったけど、大ごとになって杏奈が窮地に追い込まれるのだけは避けたくて、うちらで行動起こしたんだよ。綱渡りだったけど、成瀬を学校辞めさせて、土屋君を手に入れて、ダンス部で全国目指す。これがあたしらの計画だったじゃん。今回のことだって杏奈が作り出した空気だったじゃない。監禁して脱がして脅してやれば、こいつ来なくなるって。あんたがそれを望んだから。あたしは――」
「うそっ! 今まであなたたちが学校でなにしてきたの? 大音量で音楽かけて、演劇部や吹奏楽部の発表会を邪魔したり、文化祭の準備手伝わないばかりか、勝手に場所確保して踊り始めるし。この間の修学旅行だって、どっか行っちゃっていなくなるし、しかもバトルイベント見に行ってグループ行動無視するし。どれだけ迷惑かけてきたと思っているの?」
 魚子は絶句した。文化祭に関していえば、実はそれは杏奈の発案で、場所も彼女が無理して用意してくれたと信じていたからだ。
 結ばれた紐帯が切れたと思わせるような、双方の心が離れた瞬間を感じさせる空気へと室内が変質し、急速に冷える。二人の間に女の友情を垣間見させるものは微塵もなかった。



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