440 / 506
二年生の一学期
第百四十三話 ご機嫌斜め
しおりを挟む
ゴールデンウィークが明けた最初の月曜日。奈緒は朝からおろおろしっぱなしだった。
幾つかの休み時間を経て迎えたお昼休み、身を左右に揺らしながら逡巡する様子の奈緒の後ろから陽菜子が、この子の肩越しに瑠衣の形のいい後頭部に視線を投げる。
「いい加減許してあげれば?」
「許すもなにも、べつに怒ってないよーぅ。ただどうしてわたしも誘ってくれなかったのかなって? なんか無視されたみたいでいやな気持ちになっちゃたなぁ」
赤いランチクロスに包まれたお弁当箱を両手で持って振り返った瑠衣が、冷たい双眸で陽菜子を突き刺す。
「わたしを睨まないでよ。一年の時からの仲なんだから仕方ないよ。どっちかっていうと、そのグループになんで誘われると思うの? って思うよ。接点ないじゃん。成瀬さん以外のメンバーと話してるところなんて見たことないよ、面識以上になにがあるの?」
奈緒が、申し訳なさそうにしょぼくれた。
「ごめんね、瑠衣ちゃん」
「いい、いい、謝んなくて」陽菜子が冷たくあしらう。
「なんで?」小さく瑠衣が息巻く。「エコフェスにも誘ってくれなかったばかりか二度までも……はぁ~」と毒づいて大きくため息をついた。
「エコフェス興味ないから行かないとか言っていたくせに」陽菜子がつっこむ。「それに、あれは美術部として出店してたんだから、流川が参加したってしょうがないでしょ。そればかりか吹部の先輩に知られたら、目ぇつけられて大変だよ」
「まあ、それはそうだけれど……」
「ていうか、わたしの応援に来てくれなかったくせに」
それぞれの机をくっつけて席に着くと、しゅんとした瑠衣に陽菜子が続ける。
「今日せっかく成瀬さんがおみやげ持って来てくれたんだから、もうそれでいいじゃん。食後のデザートと部活のおやつに食べて満足してよ」
渋々頷く瑠衣を見て、ようやく奈緒の表情が晴れた。
「大麦のお茶飲んだ。麦茶っぽくなくておいしかった」
「麦茶ぽくない麦茶なんてあんの?」陽菜子が訊く。
「ほんも の 素材だから」
「麦茶は普通本物じゃない? わざわざ味合成したりしないでしょ」
「そうか、いれたてだからだ」
幾つかの休み時間を経て迎えたお昼休み、身を左右に揺らしながら逡巡する様子の奈緒の後ろから陽菜子が、この子の肩越しに瑠衣の形のいい後頭部に視線を投げる。
「いい加減許してあげれば?」
「許すもなにも、べつに怒ってないよーぅ。ただどうしてわたしも誘ってくれなかったのかなって? なんか無視されたみたいでいやな気持ちになっちゃたなぁ」
赤いランチクロスに包まれたお弁当箱を両手で持って振り返った瑠衣が、冷たい双眸で陽菜子を突き刺す。
「わたしを睨まないでよ。一年の時からの仲なんだから仕方ないよ。どっちかっていうと、そのグループになんで誘われると思うの? って思うよ。接点ないじゃん。成瀬さん以外のメンバーと話してるところなんて見たことないよ、面識以上になにがあるの?」
奈緒が、申し訳なさそうにしょぼくれた。
「ごめんね、瑠衣ちゃん」
「いい、いい、謝んなくて」陽菜子が冷たくあしらう。
「なんで?」小さく瑠衣が息巻く。「エコフェスにも誘ってくれなかったばかりか二度までも……はぁ~」と毒づいて大きくため息をついた。
「エコフェス興味ないから行かないとか言っていたくせに」陽菜子がつっこむ。「それに、あれは美術部として出店してたんだから、流川が参加したってしょうがないでしょ。そればかりか吹部の先輩に知られたら、目ぇつけられて大変だよ」
「まあ、それはそうだけれど……」
「ていうか、わたしの応援に来てくれなかったくせに」
それぞれの机をくっつけて席に着くと、しゅんとした瑠衣に陽菜子が続ける。
「今日せっかく成瀬さんがおみやげ持って来てくれたんだから、もうそれでいいじゃん。食後のデザートと部活のおやつに食べて満足してよ」
渋々頷く瑠衣を見て、ようやく奈緒の表情が晴れた。
「大麦のお茶飲んだ。麦茶っぽくなくておいしかった」
「麦茶ぽくない麦茶なんてあんの?」陽菜子が訊く。
「ほんも の 素材だから」
「麦茶は普通本物じゃない? わざわざ味合成したりしないでしょ」
「そうか、いれたてだからだ」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる