FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

第百二十九話 あいまいな記憶

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 五人は、L字道路の路肩に腰かけて、しばらくの間タクシーを待つことにした。
 南がプルオーバーのポケットに両手を入れて上下に揺らす。
「そういえば今思い出したんだけど、すっごい昔、首都移転計画とかあったらしいよ。昔遊びに来た時、お母さんが小学校新しいとか、マンション建ってるとか騒いでた。ついに黒磯が首都になる日が来るんだって」
「それはどうだろ。大阪とか仙台とか、大きな都市が他にたくさんあるのに」
 杏奈が冷ややかに言うと、春樹が続ける。
「そうだよなぁ。黒磯都、那須塩原都、那須都、塩原都、栃木都……すまん、移転がなくてよかったと思う。ゴロわりぃ」
 南が笑って、道路の向こうに小石を蹴っ飛ばした。
「わたしもそう思うけど、それでもここ、だいぶ変わったと思う」
「前はどうだったの?」杏奈が訊く。
「イメージ的には、ほんと山道って感じ。でも実際はどうだろ。古い民家も多いから、記憶違いかも。現状、ななまーととこのⅬ字道路しか記憶ない」
 みんなと辺りを見渡しながら、春樹が適当な口調で述べる。
「いい加減だな、たどり着けるのか? そんなんで。おばあちゃんちに行くんのも、遠回りだったし」
「うるさいなぁ、いけるよ、、、たぶん」
 南があからさまに不機嫌になってそう言ったものの、最後のほうはパワーダウン。
 長袖Teeに隠れた春樹の胸板によって歪むベージュにこげ茶の横ストライプを見やった杏奈が、視線を角の空き地へと逸らした。
「でもなんか、変わっていくと思うと、寂しい気もするな。このまま発展してしまったら、駅前みたいなのどかな風景もなくなっちゃうのかな?」
 春樹が答える。
「旅行で来る分には、そんなことになってほしくないけど、勝手なことは言えねぇよな。高齢化とか人口減少とか、自治体や地元民には切実な問題だろうし」
「難しいよね、例えば雪国に行くと、一メートルとか積もる雪見て感動するけど、雪かきだけでも大変でしょ。小学生の時スキーに行って、お土産屋さんの入った時に、たくさん雪が積もっていいですねって言ったら、遊びに来るだけだからそう言えるの、住んでいる人の身にもなって言ってちょうだいって怒られたことある」
 務が、黒地に黒赤白の細かい十字が連なる横縞ポロシャツを揺らして笑った。
「それは災難だったね。その人の言いたいことは分かるけど、その雪のおかげで観光地と化して、地元経済が潤っている部分もあるだろうから、豪雪がないほうがいいのかって言うと、そうじゃないでしょ。杏奈みたいな観光客が来てくれるおかげで、そのお土産屋さんも営んでいられるわけだし」
「まあ、スマートシティ化すれば、一極集中しなくてもよくなるとは思うけど」
 春樹は退屈に耐えかねたのか一人立ち上がると、フェンスから茂り出る木の枝に向かってバスケのシュートを繰り返しながら言った。




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