FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🍞

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「君が言い出したんだよ、風景を楽しみたいって」駄々っ子をあやす母親のように顔をしかめて腰に両手を添える。
「わたし言ってない。タクシーで行こう」
「タクシーじゃ結構かかるよ。バスにしよう」
 南の発言に異論はないのか、務と杏奈と春樹は答えない。それを表情から確認した彼女が、菜緒へと手を伸ばす。
「荷物持ってあげるよ」
「うん、ありがとう」
 頷いて紺のトートバッグを渡した奈緒はバス停を見つけて、ピンクの晴れ着が飾られたショーウィンドウのある着物屋さんへと華麗にぴょこぴょこ走って行く。
「よ・つ・か・ど」
 大きな声で一人ごちる奈緒の傍らに立った南が、時刻表を見やる。
「板室温泉には……八時四十六分と――十二時四十六分か、八時台のは過ぎちゃってるね」
 杏奈が、先ほど駅前の観光案内書でもらったバスの路線図を見ながら南に告げた。
「あら? 四駅くらいよ、それほど遠くない気がするわね」
「まさか。尋常じゃない遠さだったと思うよ」
「子供だったからじゃない?」
「どうする? このまま行ってみる?」と奈緒。
 その発言をした少女の相貌を、南が訝しげに見やる。
「君がバス乗るって言ったんだよ」
「そうだって、歩いていこうか」
 そう提案して、進むべき道の先に双眸を向けた。
「他人事みたいに」と南がぼやく。
「で も、バス行っちゃって 残念 だったね」
「パン買うから」
「うそだもんね」
 すがるように上目遣いで瞳を向ける奈緒へ、南が流すように答える。
「奈緒がパン買うって言い張って、九時まで並んでいたからでしょ」
「あれぇ? ごめん?」
 悪びれつつもごまかすように笑ってそっぽを向く。
 実は数十分前奈緒は、トレイとトングを持った南を召使のように従えて、自分はパンを「これ」と指さしたり、その名前を言ったりして聞かせるだけで商品を集めさせていた。
 南が、奈緒が受け取らずに捨てたはずのレシートをポケットから取り出し、内容を顔に塗りつけるように聞かせてきた。
「クイニーアマン、レモンパイ、アップルパイ、カネルブッレ、シナモンロール、コーヒーロール、甘夏といよかんクリームチーズ、キャロットケーキ、ブラウンシュガードーナツ、新じゃがとアンチョビバター、新……んービゼッタにキッシュ。占めて四千百六十九円」
「だめよ、ちゃんと止めてくれないと」
「逆ギレですか?」南は、口をいーとしながら、リュックに紺のエコバックをしまう。






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